第102話 競馬! 競鴉《ヴァ》! 競バーン!
ビコン。
と音が鳴って、VIPルームの巨大モニターに大量の
「さあ始まりましたマイタステークス。実況はこのマイタ村で役人をやっておりますわたくしフィル。解説は
「
競馬である。
競
「おおっ!?
「競馬のようなものか!」
「化け物共を
「食われるんじゃねえぞ、レースが台無しだからなあ!」
VIPルームでワイン片手にソファーでくつろいでいた客たちがにわかに興奮を始める。彼らは王侯貴族に大商人、
無論、一部の犯罪組織の権力者たちは、普段自分が使役しているような
いずれにせよ、面白い出し物になりそうだという雰囲気は変わらない。
VIPルームで供される
※
「競馬……競ヴァ……? どう思う女神よ」
「
ふたりの女は
「ワイバーンを使えば競バーンなのか?」
「そういうことになるわね」
「赤いの、洒落が分かるな」
「殺し合いは笑ってするものでしょう?」
「相手にとって不足無しだ。遊戯でなく剣を交えたかったぞ」
女神と白竜も温まっていた。
――帰りてえ~。
仕方がないので二人に挟まれてエッチなことをされる妄想をしながら、限界に近い精神を立て直すことにした。
――よし。
好息一転。尻と体格のデケえ女二人にいじめられてから逆転する妄想で元気を取り戻した
「さて、皆さん。これより従業員が皆様の席を回って
オーナーとしてVIPルームの上客たちに通り一遍の説明を行った後、
「さて、これより第一レース。お二人はどの娘に賭けますか?」
マイタ牝
*
女神と竜王である。
マリエルの解説を聞かずとも、
「あんたの強さの秘密、知ってるわよ」
だが女神は
「カードはカウンティング、ルーレットは動体視力によるリアルタイムの軌道計算、パチスロは中に入っている
「分かったからなんだ? つまりお前は勝てないということではないか。言っておくが、俺の知識と視力ならば中継映像でも」
「それはどうかしら? あなた、ここから騎手の良し悪しはわからないんじゃない? 人の子なんて、あなたにはどれも同じに見えるでしょう」
女神は勝ち誇ったように微笑む。
だが
――お前も人間の見分けそんなつかねえだろうがぁ~~~~~!
――この口だけ女神がよぉ~~~~~~~~!
「成程な。まあ確かにアリの見分けは難しい。お前の言うことも一理ある」
――乗るな~~~~~~~~!
――その
代わりに葉巻をふかしてニヤニヤと笑う。
エッチなことを考えて現実逃避をしているのだ。
「それを踏まえた上で、私はあのバンザイレッドクイーンを買うわ」
「二番人気の馬か。確かに良い
「ええ、騎手の
――名前で決めたろぉ!?
言いかけたところを、ウォッカで飲み込む。
「では私はあのリュウグウボウケンオーにしよう。なにやら気概に満ちた瞳をしている」
「一番人気ィ? 手堅くいったわね。倍率がしょっぱいわよ?」
「おいおい遊びだぞ? あまりマジになるものじゃないぞ、赤いの」
「ふんっ、つまらないわね。そうやってセコくソウタの店からムシった訳?」
「心外だな。だったら派手に賭けてやろうか。支払いができるかは知らんがな」
「金が足りなかったらこいつの身体で払ってやるわよ」
女神はそう言って
――俺?
白竜は
「モノは悪くないなぁ? よし、良いだろう。まずは手持ちのチップ、全部出してやる。これで文句はあるまい?」
「……ふ、ふーん! 良いじゃない! 面白くなってきたわ! まあこれであんたがスッテンテンになるのが決まったわけだけど!」
――まあ、こいつら相手に基本的人権の尊重とか期待しちゃ駄目だよな。
――俺たちだって、馬や鴉にできるのは優しくすることくらいだし。
要するに種が違う。どうしようもないと彼は諦めていた。
そんな彼のことなど知らぬ顔で、ふたりの女は好き勝手言い合っていた。
「まあ競馬中継では貴様が好きそうなイカサマもできんからな」
「あんたの基礎スペックごり押しも大概なのよ、自覚したら?」
「自覚しているとも……俺こそが最強だとな。故に、貴様の如き
「その口から飛び出す負け惜しみが今から楽しみねぇ~!」
そうこうしている間に
もう一度ファンファーレが鳴り響く。
マリエルの解説が終わり、フィルの実況が再び始まる。
「各
モニターの向こう側から、空砲の音が部屋に響いた。
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