第67話 聖女のことなんて先生は知らないので落ち着いて状況を整理するぞ!
サンジェルマンの襲撃があった日の夕方。特に負傷の激しかったアスギの看病を終えた後、村長として与えられた執務室で
「……と、言うわけで。私の用意した作戦と、私が呼んだ転生者の力でサンジェルマン伯爵は死んだわ。社会的にね。良くて軟禁、悪ければ冷凍刑、下手すると死刑。まあ、裁判で有罪になった貴族なんてどこかで運悪く暗殺されるのが相場だけど。まあもう転生者の聖女様が普通にぶっ殺しちゃってるかもしれないわね。ざまあわよ」
「本当に死ぬ前に助けるよ。勿体ないだろ。いやまあ死んだら嬉しいが」
――アスギさんの部屋に戻りたいな。
不機嫌そうな女神に頬をつつかれて、
「気になってたんだけど……殺されかけた癖にそんなこと言う訳?」
「殺されかけた恨みはあるが、サンジェルマンを殺すのは不味い。あれだけ強い奴が死ぬと何が起きるか予想できないんだよな。俺も王都の情勢なんて知らんし」
「王都の情勢……そこは、そうね。私も分からない。聖女様も100%私の指示を聞いてくれるとは限らないしね。あくまで善意の協力者だから」
それを聞くと、
――女神の計画も大概ガバガバだったみたいだな。
――サンジェルマンに察知されないようにあえて別行動をしたけど、危ない橋だったのは間違いない。
「なんだよ」
「あなたは頑張りました」
「ギャンブルだよ。こんなの。まぐれ当たりだ」
颯太の言葉を否定しようと、女神は首を左右に振った。
「あたしによる逮捕計画とあんたによる暗殺計画、別々に進んでいた計画がほぼ同時に動いたからこそサンジェルマンを落とせたの。それ以前にソウタが辺境伯を殺してなければ聖女様が精髄吸収の魔剣を手にすることもなかった。あんたが選んであんたが積み重ねてきた一手一手が、今回の事件に関わった全員の想定外から、あいつを詰みまで持っていった。あんたはすごい。胸を張りなさい」
――全員の想定外ね。
確かに、サンジェルマンを嵌める為に、
――言いたいことは分かるが、こんな危ない橋、二度と渡りたくないぜ。
「その聖女様が転生者だってことにはビックリしたけどな。転生者と転移者、二種類居るってのは気づかなかったわ」
「転生者は人格や記憶のデータだけしか送れないから安上がりなのよね。あなたの『耐毒』やサンジェルマンの『不老』みたいなトンデモ女神
「おっかねえなあ」
「そのおっかねえ聖女様ね、次の領主として辺境伯領に送り込まれるんですって。あの辺境伯の親戚だし、まあ順当よね」
「俺、恨まれてるよなあ……?」
「……ま、そのことについては話し合ってみなさいよ。少なくともあの子はそんなに恨んでないから」
「お前の恨んでないとか信用できるとかは、あんまり頼りにならねえ。そいつの情報もよこしてくれよ」
「それは駄目って言われてるの。そういう契約だから。直接会って話したいんですって。けどまあ……そうね、私はあなたの味方よ。あなたの味方をしてくれるような子を探して転生させたし」
女神は無邪気に微笑んだ。
「……それは、信じる。お前を疑うようになったら俺も終わりだしな」
――信じるが、聖女への反撃の札としてサンジェルマンの身柄は無力化の上で確実に保護する必要がある。その聖女様は信用できない。
「お前の言うことは信じるから、サンジェルマンの保護だけは頼む。あいつの頭脳だけはなんとしても欲しい」
「考えてみればそれ、ありがたいお願いね」
「ありがたい?」
女神は微笑む。
「一度は一緒に冒険した相手を見殺しにしたら、ソウタが私を信用しなくなるでしょう? けど、あたし個人としては、ここまで生意気な真似してくれやがったサンジェルマンの助命とかしたくないのよね」
女神の持って回った言い回しの意図を、颯太はすぐに察した。
「お前の面子も立つか」
「颯太の前では猫被りたいって乙女ゴコロも満足ね」
――こいつ、なにを?
「……まあ奴には死ぬほど仕事押し付けてチャラにしてやろう。無力化の方法はあるんだろう?」
「ええ、手配済み。私とサンジェルマンの契約は『相互の攻撃は無効』であって、救出や治療の為の行為は制限してないのよねえ。あいつがひどい目に遭った後ならやりたい放題!」
「よし、それはお前に任せた。俺は俺の仕事に戻る」
「頑張ってね、村長サマ」
カジノ、家畜、鉱山、周辺農村との交渉。
やらねばならないことは山積みで、個人の感傷に浸っている暇などない。
そんな
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