第5話 もしも願いが叶うなら

興味ありげに神様は顔を寄せてきた。

ニンニク臭いのでもう少し離れて欲しい…。

近寄るたびに軽くボディタッチしてくるのもやめて欲しい…。


「~~~~です。」


俺は真顔でそう答えた。

こればっかりはヘラヘラ冗談混じりに話すようなことではないからだ。

正直この願いが叶うのなら100年だろうが1000年だろうが耐えてやんよ!


「う~ん、熱かった割には意外と普通というかそれって別に私に願わなくても自然とそうなるもんじゃないの?」


神様は『こいつ何普通のこと言ってんだ?』と眉毛を八の字に曲げて尋ねてきた。


「人には色々と理由がありまして。

~~~~だから~~~~なんです。

人にとっては普通のことかもしれませんが私達のように普通でないものからすれば大事なことなんですよ。」


あまりこういったプライベートなことは人に話したくはないのだが背に腹はかえられない。

神様は俺の理由を聞いて納得したのかしていないのか微妙な顔をしていた。

一転、夏の向日葵のような笑顔になると真っ白な歯をニッコリと見せつけた。


「そっか、分かった、深くは聞かないわ!

それくらいのことなら朝イチア○ニー、チ○ニーでメ○イキくらいな労力だからちょろすけちょろべーよ!

せいぜい頑張って私達を楽しませる人間ドラマを繰り広げてきてちょーだい!」


神様がメ○イキしている場面を想像して吐き気がした。

Tシャツからはみ出している乳首もやけにデカくてチラチラ主張しすぎなんだよ、ちくしょー!


「ちなみに何故私が選ばれたんですか?」


ずっと気になっていたことを聞いてみた。

何で俺なんだ?

コンビニでたむろしてた高校生とかでも良かったんじゃ。

むしろ若いやつの方が元気もあるし怖いもの知らずでおもしろいことしてくれそうだが。


「あー、そのことね。これよ、これこれ。」


神様はショートパンツのポケットから小さなものを取り出した。

よく見るとダーツサイズのディルドの先に尖った針がついている。

ちゃんと玉袋までついてるリアル志向だ!

ほんとブレねぇな!


「でね、テレビ番組で○さんのダーツの旅ってコーナーあるでしょ。

あの番組私好きなのよねー。

だから真似したくなっちゃったってわけ。

誰かに当ーたれって冗談半分で投げたらあんたのうなじに当たったのよ。」


虫刺され程度に思っていたがとんでもねーもん投げてやがったのか。


「いやいや、当たりどころ悪かったら下手したら大怪我するかもしれませんよそれ。」


「怪我したって私は神様なんだから元通りキレイにするに決まってんじゃん!?

あんたも事故ってぐちゃぐちゃになったけどキレイに生き返ってるでしょ。

もろちん、事故った車と運転手も後で元通りにしといたげるわよ。

事故なんて起きなかったってことにね。」


まぁ演出用に使われた運転手も車もそのまんまじゃ可哀想すぎるわな。

神様の道楽に付き合わされたあげく車は大破、自分は病院行き、自損事故で何の補償もなかったら可哀想すぎて目も当てられない。


ちょっと待て、異世界転生の演出でそこまでする必要あったんか?

神様出てきてこんにちわ、ぼっちゃん一緒に遊びましょ、で良くないか?

ってか普通にこえーよ、俺そんなぐちゃぐちゃなことになってたんだ。


「WEB小説の異世界転生ってトラックに轢かれて死亡、転生ってパターンが多いんだけどいつもトラックの運転手さんのその後の人生が語られないのよね。

主人公は異世界転生してチーレムなんかして楽しんじゃってるのに事故を起こした運転手さんは交通刑務所に行ってその後は遺族への償いの人生が待ってるわけよ。

何か納得いかないのよねそーいうのって。」


世俗に詳しすぎる神様ってのも何だかなーとは思ったが意外とまともな考え方の神様で少し安心した。

こりゃ異世界に転生しても変な扱いはされなさそうだな。

なんなら身内の世界らしいからもしかして最初からVIP待遇とかかもしれんね。ムフフ


それよりも今のうちに色々と聞いておかないと。


「他にも色々と聞いておきたいことがあるんですけど…。」


「ごめーん、そろそろ転生時刻だからおいおい神様通信で聞くわ。

ささ、気持ち切り替えて異世界転生GOGO!!」


「え、いや、まだ心の準備が… 神様通信ってな…… ちょ…… 待っ………」


目の前が貧血になった時のようにチカチカとし始めたと思ったらそのままブラックアウトした。

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