第4話 神様の道楽
「は?」
何だこれ?現実なのか?目の前にさっきまであったもの全てなくなった。地平線が見えている。確か地平線が見える距離ってのは約5kmだったはず。急に恐ろしくなった。映画や漫画に出てくる神様ってやつなのか?こんなことが現実に起こっていいはずがない。
「な、な、何じゃこりゃ…」
震える体で精一杯絞り出した声がこれだ。
情けない。
「大丈夫だってば、あんたがさっきから全然
私のことを信用してくれないからちょっと街をキレイにしただけ。それにすぐに元に戻せるわよ。そんなにビビらないでよ。傷つくわ~。」
そういうと神様はまた手を横に振った。
映画の巻き戻しのような光景でした。
俺は目の前の光景がまるで現実とは思えずただただ茫然と見ているだけだった。
「だから言ったでしょ。『全知全能』の神様だって。最初からこうすれば話が早かったわね。ディルドだしてる場合じゃなかったわ、反省。というわけでこの世界を生かすも殺すも私の自由なのよ。オーケー?」
俺は恐ろしくてガチガチと歯を鳴らしながら頷いた。
「か、か、神様が私に何の御用でございますか?」
「だからビビらないでって。あんたに危害を加えるつもりもないし、もう街も元通り、何ともないでしょ。普通にしてよ、普通に。ね。」
神様は人差し指を立ててウィンクした。
目の前であんな恐ろしいことされたら誰だってビビって声もでねーよ。
まぁ危害を加えるつもりがないという言葉を信用していいものかとだいぶ迷ったがここは従うしかない。とりあえず落ち着くために深呼吸した。
「それで神様が私に話とは何でしょうか?」
俺は精一杯の虚勢を張って尋ねた。
「そうそう、忘れるところだったわ。あなたに異世界に転生してもらいたいの?」
神様は軽く答えた。
「なぜ私が異世界に転生しなくてはいけないのですか?」
異世界?転生?映画や漫画、昔に呼んだラノベなんかでそんな単語は見たことがあるが実際に自分が、となると疑問だらけだ。
「私の従兄弟がこことは別の次元の世界で、まぁこの世界の物語に出てくるような異世界ってとこね、そこで神様をやってるのよ。
それでね、こないだ二人で銀河二丁目に飲みに行った時に冗談で私の管理してる世界の生物を一体そっちに転生させてみたらどんな物語が生まれるのかしらって話になったってわけ。
異なる世界、環境で生きてきた生物がこれまでの知識と経験を頼りに転生先で繰り広げるドタバタストーリーを楽しみたいってわけ。あぁ考えただけでゾクゾクしちゃう。
まぁ神様の道楽ってやつだから選ばれた時点で観念しちゃってちょうだい。」
要するにわしゃモルモットやないかい!
ふざけんじゃねーよ!
なんで俺が神様の道楽に付き合わなきゃいけねーんだよ!アホなんかこいつらは!
もうね、奥さんとこに帰らせてくださいよ。
「まぁまぁ、いきなりのことだからなかなか受け入れられないと思うけど少しだけ私に付き合って欲しいの。ダメ?お・ね・が・い!」
だ、か、ら、ぁ、さっきから神様のウィンク全然可愛くないんてすってばぁ、俺ノンケですからぁ、ちくしょー!
あんなワケわからん力を見せられたら誰だって首を縦に振るしかないじゃないですかーヤダー!
「本当はそんなことに付き合うのは絶対イヤなんですけど出張だと思って諦めて付き合いますよ。
断る方が怖いですからね。
それで一週間ほどですか?
それとも1ヶ月ほどですか?」
諦め軽く答えた俺に衝撃的な答えが返ってきた。
「100年ほどかしら」
しれっと何言ってやがんだこいつ?
「いや、普通に考えてそんなに長い間家を空けるのは無理ですよ。
100年って私向こうで死ねってことですか?
奥さんはどうなるんですか?」
あまりの身勝手な提案に怒り心頭の俺は早口で捲し立てた。
「あなたがあっちに行ってる間はこの世界の時間は私が止めておくわ。
この世界丸ごとコールドスリープみたいな感じにしておくわね。
だからあなたが私達を楽しませてくれた後にこちらに帰ってきたらまた元通りってわけよ。
でも100年経って帰ってきてもこっちの世界のことをすっかり忘れてる可能性もあるから転生する際にあなたの生まれてから今日までの記憶を私の中に記録しておくわ。
あなたに分かりやすく言うなら私を絶対に壊れないハードディスクだと考えてちょうだい。
こっちに帰ってきた時に記憶をダウンロードして上書きすればあらびっくり元通りの生活ってわけよ。
いきなり大容量のデータを脳にぶちこんだら廃人になるかもしれないけどそこは私が上手くやってあげるから心配しなくても大丈夫よ。
言ったでしょ、全知全能だって。」
しれっと、とんでもないことを軽々しく口にする神様もいるもんなんだなぁとなぜかしみじみと思ってしまった。
「それに私達を楽しませてくれたらご褒美もあげちゃう!」
神様からのご褒美ってやつに少しだけ食いついてしまった。
「ご褒美って何もらえるんですか?
この世界ではお金が絶対ですからね。
お金以外の地位とか名誉とかは正直どうでもいいです。
凄い額のお金が貰えるなら気持ち的には新天地で100年バイトしてくるくらいの気持ちで行ってきますよ。」
まぁこの世界の時間が止まったままでまた帰ってこれるならバイト感覚で100年ほど行くのも経験としておもしろいかもしれないなどと思い始めていた。
100年もの間俺の精神が持てばの話だが。
それに神様なんだから俺のもうひとつの願いも聞いてくれるはずだと考えた。
「欲がないのねーあなた。
お金なら私の宇宙クレジットカードで家族カード作ってあげるからそれで奥さんと好きなだけ使えばいいわよ。
神様特別措置法が適用されるから全世界で使用できる金額に制限なんてないわよ。
皆が憧れる特殊能力とかいらないの?
空飛んだり不老不死とか。」
んほぉー!とんでもねーことさらっと言いやがるぅ!
たった100年異世界で過ごせば世界一の金持ちになれるんやー!
こんなおいしい話はないかもしれん!
覚悟を決めてやるっきゃナイト!
「特殊能力はこの世界ではあまりに異物すぎるので軍事用の実験台とかに使われるのがオチだと思われますのでやめておきます。
不老不死になっても火○鳥みたいなオチになるでしょうからこちらもやめておきます。
できればお金ともうひとつだけ叶えて欲しい願いがあるんです。
私の力ではもうどうしようもないことでして神様にお願いするしかないことなんです。
それを叶えると約束してくれるなら異世界でも何でも転生します。」
ついつい熱く言っちゃったなー。
年甲斐もなく少し恥ずかしい///
「ヤダッ!なにこの可愛すぎるBABYちゃんってばどんだけ私を熱ぅさせるん!?」
モジモジしながら目を潤ませて股間をまさぐる神様はとてもとても気持ちが悪うございますよ。
ついでに親指の爪噛んでんじゃないよ。
「任せて!
あなたがこっちに帰ってきた時は絶対そのお願いを聞いてあげる!
だって私はこの世界の理をねじ曲げることすらできる神様ですもの!」
興奮しすぎてショートパンツに何かシミが出来ててもう見てらんないよ。
「で、そのお願いってのは?」
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