第16話 小悪魔でエッチなお姉さん

 部屋の照明が落とされ、紗綾が先にベッドに入っていく。

 凛は少しだけ緊張と、そして期待を持ってしまっていた。


 紗綾は凛に対するスキンシップが多い。

 これは今まで凛が過ごしてきた人生の中で、他の女子がどうだったかという比較からわかること。

 だが、実は紗綾のスキンシップは学校などでは抑えられている。


 この数日でわかったこと。

 寝起きや、寝る前の紗綾はスキンシップが格段に多くなる。

 凛がベッドに横になると、もはやそれが当たり前のように紗綾がくっついてきた。


 ソフトな生地で作られたルームウェアを着た紗綾が、凛の腕を取る。

 花のような香りが凛に届き、嗅覚と触覚を刺激してきた。



「凛、男の子なんだよね……」


「はい、そうですよ?」


「うん……お姉さんにこうされてうれしい?」



 可愛い女の子に抱きつかれて、うれしくない男子はいないだろう。

 それは凛も同じで、すでに紗綾に何度もされていることだがそれでもうれしかった。



「紗綾さんに抱きつかれて……うれしく思わない男子はいませんよ」


「そうよね……私、凛のタイプみたいだし?」


「…………」



 紗綾の言葉に、凛は違和感を覚えた。

 ここ数日で凛と紗綾は、かなりお互いのことがわかってきている。

 だがそれは、今まで接点がまったくなかった頃からと比べてということ。

 いくらプライベートでの時間を一緒に過ごしたからといって、この短期間で相手が理解できるなんてことはまずない。


 だが紗綾は、凛の好みのタイプを言ってきた。

 この数日の間、凛はそんな話をしてはいない。

 紗綾は凛から見て、自身の容姿にそれなりの自信を持っているのは感じた。

 だが今の言葉は、そういう類のものではない。


 お互い向き合って横になっていたが、紗綾が凛を押し倒して覆い被さってくる。

 少し下目遣いで紗綾が凛を覗き込んだ。



「さっき私、荷物の片付けをしたでしょ?」


「はい」


「荷物の整理をしていたときにね?」


「…………」


「机の足元に積まれた本、見ちゃったの」


「――!」



 絶対的な優位を確信しているような微笑みを、紗綾は凛に向けていた。



「小悪魔でエッチなお姉さん」



 紗綾が言ったのは、少しだけエッチな本のタイトル。

 凛は一人暮らしだったため、そういった類の物を隠す必要がない。

 そういう本を持っていたとしても、男子ということを考えればおかしいことではなかった。


 だが紗綾が来たのだから、置き場所に配慮すべき物であったのも確か。

 一人暮らしに慣れ過ぎ、凛は本の存在を失念していたのだ。

 もともとエッチな本としてというより、その漫画の作者の絵がお気に入りという感じで買った本でもあったので、そういう意識が希薄であったのも確かだった。

 年齢指定もR一五だが、タイトルと表紙の絵では区別がつかないかもしれない。



「凛、あーいう女の子がタイプってことだよね?」



 否定はできないことだった。好みの絵だったから買ったのだから。

 とはいえ、さすがに恥ずかしい部分でもあるのか、凛は紗綾から視線を外した。



「そう……かもしれません」



 紗綾はうれしそうにして、ルームウェアのチャックを下げる。

 白い素肌が少しずつ露出していき、きれいな膨らみがピンクベージュのブラに収まっているのが見えた。

 紗綾が前屈みの態勢であるため、毬のような胸がブラで支えられて余計に強調することになっている。



「どうかな? あの漫画と同じくらい、私も負けてないと思うよ?」


「綺麗……だと、思います」


「ありがとう。ねぇ? 私のほうが凛よりお姉さんだし、私って凛のタイプ?」


「――~~」


「ねぇ? お姉さんに、教えて?」


「タ、タイプ……です…………」


「ふふっ……正直でよろしい。じゃぁ……正直な凛に、ご褒美あげる」



 紗綾の身体が凛に触れ、唇が重なる。

 紗綾が侵入してきて、凛はされるがままという状態。

 凛は紗綾の動きに応えるので精一杯という感じだ。


 ルームウェア越しに感じるやわらかい感触が、キスで動く度に何度も押し付けられる。

 それはまるで、お互いが相手のことを感じているようだった。



「キス、止められないね?」


「はい」


「どうしてキスってこんなに気持ちいいのかな? ずっとしていられそう……。

 こんなふうに抱き合ってると、キスしたくなっちゃうっ」



 唇を離してお互いを見つめ、また唇を重ねてしまう。



「私にキスを教えたのは凛なんだからね?

 ちゃんと責任とって、いっぱい私にキスして?」



 二人は何度も何度も唇を重ねて夜を過ごした。

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