第14話 これから
凛が目を覚ますと、紗綾が見つめていた。
「
「紗綾さん、おはようございます」
「……違うでしょ?」
まだ意識が完全に覚醒したわけではないのか、凛はぼぉーっとしている。
「
凛の両頬に手を添えて、紗綾が唇を重ねた。
唇のやわらかい感触……そして紗綾の匂いが凛の意識を刺激する。
「起きた?」
「起きました」
「思い出した?」
「思い、出しました、……さ、
名前を呼ばれた紗綾は、また凛にキスをした。
昨日の夜から何度目のキスになるのか、もう凛にはわからない。
昨日だけで何時間としており、気づいたら紗綾は唇を重ねて寝落ちしていたのだ。
凛も何度か意識が落ちていた状態で、紗綾が寝てしまったことを確認したところまでしか記憶がなかった。
少なく見積もっても、二~三時間はイチャイチャしてキスをしていた。
それを考えれば、もう何回目のキスだとかを考えるのは無駄だろう。
「着替えたんですか?」
今紗綾が着ているのは、モコモコのタオル生地のような優しい肌触りのルームウェア。
昨日のベビードールではなくなっていた。
「うん……あれは、ちょっと恥ずかしいから…………」
凛にも紗綾が恥ずかしがる気持ちは理解できるものだった。
生地は薄く、肌も透けているところが多いデザイン。
夜の暗い部屋なら見えなくても、朝であれば話は変わる。
今なら間違いなく肌がすけすけだったことだろう。
「ん? もしかして、お姉さんのエッチな姿が忘れられない?」
「いえ、大丈夫です」
昨日の官能的な格好を思い出してしまい、慌てて返答をする凛。
「大丈夫ってなに?」
「…………」
「また見る機会はあるかもよ?」
「え?」
「昨日話したじゃない? これから毎日一緒に寝られるよ?」
昨日長い時間唇を合わせている間に、凛は紗綾の提案を承諾していた。
それは殆ど同棲を意味するような提案。
紗綾の家がなくなるわけではないのだが、実質同棲のようなものだった。
普通ならまずあり得ないこと。凛にもそれはわかっている。
だが紗綾が悪い人には凛には思えなかったし、紗綾と一緒にいる時間がもう少しほしいと思ってしまった。
紗綾が凛の首に腕を回して身体を寄せる。
そのまま抱き合うようにキスをした。
結局この日の朝はベッドでイチャイチャしてしまい、二人が起きたのは一〇時過ぎだった。
遅い朝食を二人で取りながら、紗綾がこの後のことを話してくる。
「このあと二人でお買い物に行こ?」
確かに冷蔵庫の中身は少なってきていて、食材の買い出しは必要だった。
食事を終えて出かける準備をしていると、紗綾がリビングと寝室の間の間仕切りをスライドさせた。
いつもは開けっ放しにしている間仕切りが閉められる。
「ちゅーした仲でも、覗いちゃダメだからね?」
紗綾が凛の家に来てからというもの、この間仕切りは度々使われるようになった。
だがこの間仕切り、強化ガラス製のすりガラスでぼんやりと透けてしまう。
紗綾はガラスの間近で着替えているわけではないが、それでも身体のラインなどは透けて見えてしまう。
凛にはそれが余計に想像を掻き立てられてしまうことだった。
「ん? どうしたの?」
「なんでもありません」
また面白いものを見つけたかのような顔をして、紗綾が凛のそばに寄ってくる。
「どうしても我慢できなくなったら、ちょっとなら見せてあげるよ?」
胸元を人差し指で少し引っ張り、凛に見せつけてくる。
細い首、鎖骨のライン、その向こうに見える二つの果実。
「水色は好き?」
「…………」
「わからないなら、見てもいいんだよ?」
紗綾の目を見る限り、凛の反応を楽しんでいるのは間違いない。
それがわかっているので、凛もわざと顔を背けて対抗する。
凛が横を向いていると、視界の端の方で紗綾がモゾモゾとしていた。
「ねぇ、凛?」
不安そうな声で、紗綾が凛の名前を呼んでくる。
その声色は、怒らせてしまっただろうか? という不安を含んでいるような声。
凛にはそんなつもりはなかったので、紗綾に向き直る。
紗綾は上目遣いで、さっきとは違って不安そうな瞳をしていた。
「凛、ブラのフロントホックが外れちゃった」
凛を見上げてくる紗綾の視線の先に、ホックが外れて胸の膨らみが見える。
半分くらい胸は見えていて、かろうじて先端辺りはゆるゆるになったブラが隠していた。
「あれ? 顔が赤いよ?」
ハッとした凛が視線を戻すと、さっきの不安そうな瞳はどこにもなく、いたずらを成功させた確信犯の瞳がそこにあった。
さっきモゾモゾと動いていたのは、自分でフロントホックを外す動きだった。
「こんな……エッチないたずらは止めてください。
俺だって男なんですから、こういうことされると困ります」
「ふふっ、ごめんね? でもなんでだろぉ。
なんかね、凛にはこういうこともできちゃうの」
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