第94話 旅行前日(インハイ後の夜)
「……ちょっと離れてくれるか、目のやりところに困る」
バスローブを着た翠が目の前にいるのを確認し、目を逸らす陽輝。というのも翠は意図的にバスローブを緩めに着ており、見えそうだったりしていた。
「離れないよ〜なんで目を逸らすのかな?何かやましいことでもあるのかな〜?ほらほら!こっち向きなよ〜?」
もちろん翠はなぜ目を逸らしているのかわかっているのでグイグイといく。顔を逸らす方に顔を近づけ少しずつ距離を詰めていく。
「そうか、そうくるなら俺もやりようはあるんだよ」
翠の両脇に手を差し込み、持ち上げて胸のところに持ってくる陽輝。そしてそのまま両腕を背中に回し、動けないようにした。
「ひゃっ?……そんなにハグしたかったの?」
「さぁ?どうだろうな。少なくとも翠よりはしたかったのかもな」
「ふーん、仕方ないね陽輝は。ほら、ちょっと背中浮かして?本当に仕方ないからうちもうで回してあげるから」
翠からも腕を回してぎゅっとする。バスローブ越しに翠の心臓の音が陽輝は聞こえていた。
「心臓の音、すごい聞こえるけどどうした?まさか緊張してるのか?そんな格好していて?」
「やっぱり好きな人とくっつくとドキドキしちゃうんだよね……はい!もうおしまい!この格好はまた明日見せてあげるから着替えてくるね!」
そういって翠は着替えを持ってバスルームへと逃げるように行った。だんだんと腕の中の温もりが消えていくのを実感しながら陽輝は自分の胸から聞こえる心臓の音を聞いていた。
「……ああ言っておいて、緊張してたのは俺の方なのかもな……」
付き合ってから期間はそれほど経ってはいないが、陽輝には人相応の欲求はあった。翠には見せていないだけで独占欲もあるし進展も少しずつしていきたいと思っている。
悠真達はもちろん先へと進んでいるが、それに憧れて、というわけではない。純粋に翠の全てが恋しく、欲しいという思いだった。
ただし少しでも翠にその気持ちが露呈してしまうと翠からからかわれると分かっているため、隠しているだけだった。
だが、隠さない方がいいのでは?とも考えいたりする陽輝は、一人で部屋の天井を見つめながら悩んでいた。
「お待たせ〜、陽輝、そのままベットの上でいいからうつ伏せになって。しっかり揉みほぐしてあげるからね!」
悩んでいた陽輝の思考を断ち切るように翠の声がした。見れば先ほどとは違いハーフパンツにTシャツ一枚の姿で、手にはタオルを持っていた。
「じゃあ、頼んでもいいか?」
「いいよ!うちの実力見せてあげるからね」
鼻歌を歌いながら陽輝の身体をマッサージしていく翠。腕から開始していき、心地いいと陽輝は感じるほどに翠は手慣れており、足に移った頃に翠が話始めた。
「陽輝はどう思うかわからないんだけど、うちは将来の選択肢に整体師もありかなって思ってるんだよね。もちろんプロの道も考えてるんだけど、将来陽輝がプロで活躍していくのならそのケアをするのもありだなって最近は思うんだ……うわ、ふくらはぎすごい張ってるじゃん、痛いかもしれないけど我慢してね〜!」
「整体師でもプロでも俺はどっちでも翠なら輝けると……痛ぇ!加減しろ!力入れてんだろ!」
「そんなに入れてないのに痛がるのが張ってる証拠!我慢してっていったでしょ!」
途中まではしんみりとした雰囲気だったかぶち壊し。数分後にはぐったりした陽輝と満足そうにしている翠だった。
「はぁ……すげぇ楽になった。ありがとな」
「気にしないでね、これで明日からの旅行に影響は無いと思うから、エスコートしてもらうよ!」
「仰せのままに、ある程度考えたから」
この後二人は夕食のビュッフェを楽しみ、同じベットで寝た。最初は少し話していたが、陽輝が途中で返事をしなくなりそれを確認した翠が寝ている陽輝をみて翠は陽輝の腕を抱きながら寝た。
一方……
「あの二人今頃何してると思う?」
「そうですね……多分翠ちゃんが誘惑しているころだと思いますよ?」
「旅行をきっかけにどこまで進むかな……楽しみだね、小珀」
「そうですね!もっとラブラブになってほしいですよね!」
帰りのバスの中で二人はそんな話をしていた。それを聞いていた一部チームメイト達は口か目から血を流していたとかなんとか…………。
読んでいただきありがとうございます。
ある程度イチャイチャ度はこの旅行であげます。
サブタイトルどうにかしたいのですが思いつかなかったのでこれでいきます、すいません笑
想い続けてた女の子は隣の席の子だった ゆうま @kamecyan
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