第91話 インハイ中の様子前編
次の日からインハイは始まった。初日は予選グループ戦で、1回でも勝てれば次の日へと生き残れる。
陽輝達の初戦の相手は群馬のチームで、何なく陽輝達はストレートで勝利を収め、他のチームの見学にまわっていた。
「あそこのチームなかなかやるね、エースがよく跳ぶし打ち分けが上手い」
「あっちの奈良のチームはコンビバレー極めてる感じだな。身長的に見ても大きい選手いない代わりにボールがひたすらに落ちないな……」
悠真と陽輝は目に止まるチームをお互いに話し、そのチームの強みや弱みを話し合う。そんな中で、小珀から2人へとある情報が伝わる。
「女子バレー部の方、初戦負けて敗者復活の方になったそうです……」
「あー、まぁそれは仕方ないんじゃないか?スコアと内容次第では全然平気だろ。そこまでは流石にわからないよな?」
「えっと、スコアの方はもうネットの方で見れるっぽくて……」
そう言われて陽輝は携帯を取り出して調べる。2.3分で各試合の結果が載っているページにとび、そこに載っていたスコアを見て安心する。
「おぉ、優勝候補相手にフルセットまで持ち込んでるのか。2セット目がデュースで落としてるあたり常に優勢だったんだろうな。これなら敗者復活で勝てるから安心だな」
スコアを見ると、どれも2点差のギリギリの試合だと分かった。相手は前年度優勝校のチームでそこ相手に接戦をしているなら問題はないと陽輝は判断した。
「女バレは今下級生主体だからその辺りも差が出てそうだよね。むしろそこの差が勝敗分けてるだけな気がするから3日目とかにあたれば勝てそうだよね」
「俺らはそろそろ他のチームを見始めないとな。女バレばっか気にして負けたら元も子もないぞ」
「そうですよ悠真くん。他のチーム見るか私に面倒見させてもらうかどっちか選んでください」
「まだ平気だから他のチーム見るよ。小珀は小珀でビデオ撮影お願いね?」
「任せてください!」
3人はそうして各々やることに専念した。
〜〜〜
「もしもし?うちらは無事に生き残ったけどそっちは?」
夜、宿で次当たるチームの試合を見ていた陽輝に電話が鳴った。相手は翠だった。
「余裕の突破だよ。そっちの試合結果は見てたぞ、優勝候補相手によく戦ってたな」
「惜しいところまでいったんだけどね、最後は意地で押し切られちゃった。でも次当たれば負けない自信はあるよ!」
「そうだな、頑張れよ。負けたから応援しにきたよ!ってことにお互いならないようにしようぜ。最終日まで残って、デートするんだろ?」
「うん、そうだね……後残りなしでデートしたいから頑張るよ!」
お互いがお互いを鼓舞し合う関係。そんな関係に少し陽輝は心地よさを感じていた。
「じゃあそろそろ切るわ。明日からは2連戦だから早めに寝ろよ。おやすみ」
「うん、おやすみ陽輝。……好きだぞっ」
トゥルン、と音が鳴って通話が切られる。最近の翠のお気に入りで好きと伝えてから電話を切る癖がある。陽輝は何度も同じことを電話のたびにされるが未だに慣れない。
「はぁ……集中し直すか。悠真と小珀の方には次の次のチーム見てもらってるから俺はこのチームの対策を……」
こうして夜を過ごし、次の日。
「陽輝!ラスト決めろよ!」
ババァン!と心地よい音を奏で陽輝は最後の一点を取り切る。無事に決勝トーナメントの初戦を勝利で飾った。
「はぁ……はぁ……思ったより苦戦したな」
「そうだね……やっぱり1年生入れすぎだよ。主力メンバーの3年生ベンチにするってなかなかだよね……」
点数を見れば接戦だが、内容は全く異なる。相手チームはちゃんと初日と同じスタメンだが陽輝達はまさかの3年生を抜いて挑んでいた。監督曰く、『次の代を見据えて今のうちから経験させる。それにお前ら1年の代は過去一の方作だからまぁ負けないだろう!』とのことだった。
「とにかく勝ったんだからいいじゃないか。まだ午後に試合残っているから、試合に出たメンバーは必ずクールダウンを怠るなよ!」
キャプテンからの指示で試合に出たメンバーはクールダウンを始めるが陽輝だけは1人別の場所に行った。
「—————もしもし?あぁ、こっちは勝ったぞ。そっちは……そうか、無事に勝ったんだな。……あぁ、負けないさ。お前も……え?名前で呼んでほしい?わかったよ、翠……おい、名前呼んだだけで奇声を出すなよ。……楽しみだな、旅行。そのためにも負けられないな」
1人だけ会場の外でダウンをしながら電話をする陽輝。相手はもちろん恋人の翠。翠達女バレの方も1回戦目を無事に勝ち、試合が終わったら電話をかけると言われていた陽輝は翠と話していた。
「そろそろ戻らないと言われそうだから、電話切るわ。次も勝ってまずは明日まで残るぞ……おう、また夜にな。じゃっ」
その後陽輝達は2回戦目も無事に突破し2日目に駒を進め、翠のいる女バレもなんとか2日目に駒を進めたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
次でインハイ編は終わりにします。
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