第89話 VS魔族

 だから、今回もこの奇襲でいく。まともに戦ってかてる相手でもなさそうだし。


《俊敏》


「……ぉりゃっ!」


《火属性魔法》


 僕は、このスキルを使うと魔族の後ろから火属性魔法で攻撃を仕掛けた。


 魔族は体が強そうだから、物理ではきかなそうだから。だから、魔法を使った。いや……


「……侵入者か?」


 …………ッ……


 使おうとしたんだ。でも、使えなかった。スキルを使おうとしているというのに、なぜかスキルが反応してくれなかったんだ。


 ど、どうして……?


「誰だ、お前? くノ一でも聖女でもその配下でもないとなると……新しくあいつらにできた仲間か?それとも別の……まぁ、いい。殺せばなにも考えないで済む」


「ど、どうしてスキルが……」


「ふんっ。それは魔法障壁を使っているからに決まっているだろう。その中で魔法系スキルなんて使えるわけがないだろ? やはり人間は馬鹿なんだな」


 くっ……。目に見えるものばかりに集中しすぎたせいで目に見えないものを勝手に除外してしまっていた……。どうしてこれが考えられなかったんだ?


 いや、そんなことは今はどうでも……


 いいっ!! 


《鬼化》


 そして、力を何倍にも増幅させる。いつもと違った力に少し困惑するもすぐに安定させる。


「ん……? 今までのやつらとは違うようだな。まぁ、所詮人間だが」


《アイテムボックス》


 そしてナイフを取り出す。その後、この魔族に向かってその取り出したナイフを振り下ろした……


 ……かと思われたのだけど、それは無残にも失敗してしまった。なんの根拠もないが予定では少しくらいならダメージが入ると予想していた。


 しかし、結果はダメージが入るどころか、なんのちからも入れた素振りも見せず僕の攻撃を止められてしまった。


「なっ……」


 僕は、下がることにした。この近くにいたら必ず死ぬ……そう、思ってしまったから。


「………っ!?」


 それは、どうやら予想通りだったらしい。僕が逃げた直後に僕がいたところになにか変な時空の乱れのようなものができた。


 僕も良くわからないんだけど、まるで空間を切ったような。そういうふうに見えてしまった。攻撃が全く見えなかったのだ。


「……ふむ。避けられたのは初めてだな。弱いくせに長生きするとは……小賢しい」


 僕は、ふと違和感を感じた。いや、多分感じてしまったんだ。


 こいつは魔族だ。人間の姿をしているからといって、それでもこいつはモンスターなんだ。モンスターの部類に入るんだ。


 なのに。


 なのになんで?




 なんで………人間のように動いてる?




 人間の形をしているからか? まぁそしたら人間のように動けるかもしれない。


 だが。ちょっとした仕草がどうしても人間らしさを見せている。ちょっとした感情が人間らしさを醸し出している。


 どうしても、この魔族のいろんな動きを人間と結びつけて考えてしまうんだ。離そうとしてもそのたびにくっついていく。


「……なにか、裏にいるってこと?」


 多分、異世界人ではないんだろう。だって動きを見ているときたまに、この世界なら魔法使ったほうがはやいのにと思う部分が多数ある。


 ということは、異世界人の動きではない。むしろ、この世界の人間のように魔法に、地球の法則を無視するような力にまだ慣れていないように感じる。


 だから、多分。


 こいつの裏には……なにかがいるらしい。それも、この世界にもとからいたような。


 もしかして、誰かがモンスターを支配する職業があったりして。例えば……


 例えば……魔王……


 魔王……そういえば、存在しているんだったよな。ユニークジョブだった……よな。



 もしかしたら、敵は異世界人だけじゃないのかもしれない。

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