第75話 【???視点】勇者

モンスターが存在し始めたころに溯ります。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ん………ぅ……。」


 あれ……?


 ???は、疑問を感じていた。いつもは、弟ふたりが騒いでいて、うるさいはずなのに。それに、それを止めるために大声を出しているお母さんの声も聞こえない。


 まだ…眠っているのかな……。


「……………っと。」


 ???は、起き上がると自分の部屋にあるクローゼットからお気に入りの服を取り出して、それに着替えた。


 ただ……それでもなにも聞こえない。


 ピーポーピーポーピーポーピーポー


 ……ん?サイレンがなっている……。もしかして、どこか火事とかなったのかな?


 ???は、カーテンを開いて窓から景色を眺めていると、あまりにも残酷な景色が僕の視界を覆い尽くしていた。


「…………は?」


 どうなっているんだ?なんでこんなに家が崩れたりしている?建っている家はここを含めて半数くらいまで減っていた。


 おかしい……


 意味が分からない……


 例え、地震がおきたとしても、???は絶対に気付くだろうし、なによりそれなら津波とかないとおかしい。これだけの被害を出す地震ってことは、おかしいのだ。


「…………そうだ、家族は。お父さんは?お母さんは?弟たちは?」


 僕は、一階に向かって階段を駆け下りた。そして、見つけた。お父さんを。お母さんを。弟たちを。


 ……………無残な姿で。


「そ…そんな…………」


 お父さんとお母さんは、最後まで子どもたちを守ろうとしたのだろう。弟二人をかばって死んでしまっていた。でも、お父さんとお母さんの願いは届くことなく、弟二人もお父さんとお母さんの胸の中で死んでしまっていた。


 ただ……おかしいことがあった。


 全員に切り傷があったのだ。ナイフで刺されてしまった………そんなふうな跡が。死んだ原因は、こちらのほうなのかもしれない。


「どういうことだ……?家族を殺したやつは、地震とかそんな現象じゃなくて……人間ってこと?」


 でも、それなら相当強いやつなのかもしれない。お父さんは、確か警察の刑事だったはずだからだ。それほどの強者を殺す力がある人なんて……


 カタッ……


 どこからか、なにかを落とした音が聞こえた。家族はここに集まっているから、多分………


 今の音をたてたやつが家族を殺したやつか……


「…………………よしっ。」


 僕は、殺したやつと戦って勝てる自信があった。柔道を習っているから。いつもは、敵があまりにも理不尽だと怯えて身体が動かなくなってしまっていた。


 でも、家族を殺されてしまった直後だ。敵を打つべき相手だ。恐怖という感情なんて、???の中には存在していなかった。存在出来なかったのだ。


 恐怖という存在を忘れてしまっていたから。


「グギャア……??」


「……………え?」


 ???は、犯人がどこにいるかを見つけた。そこにいたのは、ゲームの世界であるような、そんなゴブリンだった。


 どういうことだ……?


 緊張がどんどん薄れていく……。


 でも、そのゴブリンが持っていた血まみれのナイフを見つけてしまうと、なんでゴブリンがこんなところになんて思わない。犯人であれば、誰であろうとやなやつだ。悪いやつだ。


 どんな状況であろうと……


 遠慮なんて存在しない。


 そう、お父さんは言っていたから。???は、遠慮なんてしない。


「うりゃあ!」


「グギャア!!」


 ???は、ゴブリンに向かって走り出した。すると、ゴブリンも僕に向かって走り出した。


 ふと、ゴブリンはナイフを僕に向かって刺した。いや、どちらかというと、刺そうとしてきた……の方が正しい。


 ???は、ナイフを避けると、ゴブリンの腕を掴んだ。そして、ゴブリンに背を向けると、一本背負いをした。


「グギャア!?」


 急に身体が反転して、ゴブリンは驚いていた。また、背中を打ち付けたことで痛みもあったんだろう。その2つによって、ゴブリンはナイフを落としてしまった。


「……………っし。お父さんを!お母さんを!弟たちを!殺したかたきだー!!!」


 僕は、ゴブリンが落としてしまったナイフを持つと、ゴブリンに向かって、かたきという意味を込めて、名いっぱい叫びながら刺した。


「……はぁ………はぁ………はぁ……。」


《経験値を獲得しました。》


 ……………え?なんて?


「………きのせい?……いや、あれは気のせいじゃない……。」


 こんなリアルに聞こえて、まだ記憶に残っているアナウンスなんて、気のせいなはずがない。


 徹底的にこの世界はおかしくなってしまったのかよ。ゴブリンなんて現れて、それでアナウンスまで存在するってさ……。


 それなら……もしかして……


「《ステータス》」


名前 月城悠 

人間 LV1

HP 30/30

MP 20/20

力  8

耐久 5

敏捷 3

器用 3

魔力 0

SP 2

JP 1


職業

無し


スキル

無し

 


「………………え?」


 ???は、びっくりしてしまった。だって、???の目の前には、ガラスのように透明な画面が出てきたのだ。


 もう、こんなものまで出てしまったら、いけないだろ。不可能な技術だろ……。


 はぁ……。でも、認めないといけないらしい。認めないと、先に進めないというのなら、無理矢理にでも理解しよう。


「…………はぁ。それで、……ん?職業ってなんだろう?スキルとかは分かるんだけど、職業?」


 オタク系のコミカライズとかライトノベルとか読んだことないから分かんないけど、職業まで選べたりするんだろうか?スキルとかならたまにCMで出るから分かるけど……。


 ???は、気になってそのステータスのところの職業の部分をポチッと押した。すると、いろんな職業が現れた。


・役者

・市民

・学生

・柔道家

・勇者

・復讐者


 へぇ……。もうなんか驚けなくなった気がする。……で、この中から選べばいいのかな?


 市民とか学生って、職業なの?それに、復讐者って何?………これって、もしかして???の人生を表しているのか?さっき、家族を殺されたから……


 で、一番気になるのはこの勇者っていうやつだな。勇者って、それはおかしいでしょ。よく分からないけど、結構強い職業なのは分かる。


「………勇者って、確か人を守る力を得ることができる職業だったよね。」


 よしっ。これにするか。


《職業 勇者を選択します。その時に、ジョブポイントが1ポイント減りますが、よろしいですか?》


「え、えーっと、はい……でいいのか?」



《職業が勇者になりました。》


《ユニークスキル 聖剣召喚を獲得しました。》

《ユニークスキル 聖域創造を獲得しました。》

《スキル 昇華を獲得しました。》

《スキル 限界突破を獲得しました。》

《スキル 成長補正を獲得しました。》

《スキル レベルアップ補正を獲得しました。》


 …………なんか、あまりにもイージーな世界だな。みんなこんな感じなんだろうか?


 まぁ、今はそんなことどうでもいいか。


 ???は、モンスターを殺すために旅に出ることにした。


 そして、???は、???と同じ状況に陥ってしまった人を助けるために、もしくは陥ってしまうまえに助けることができるように、そう考えて。


 せっかく勇者という人を守る職業を誰かはくれたんだ。


 絶対に……みんなを……!!




名前 月城悠 

人間 LV1

HP 50/50

MP 40/40

力  18

耐久 10

敏捷 6

器用 6

魔力 0

SP 2

JP 0


職業

勇者Lv1


ユニークスキル

聖剣召喚、聖域創造


スキル

昇華Lv1限界突破Lv1成長補正Lv1レベルアップ補正Lv1

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