第64話 不思議な能力
「な……楓さん?」
どうしてこんなところに? 僕が転移させたはずじゃ……
「千尋くーん!! 頑張れー!!」
楓さんは、僕に向かってそう叫んでいた。なんでそんなことを言っているのかは分からなかったけど、応援は力になっている気がした。
「……もう、あとで楓さんをしからないと。せっかく安全なところまで転移させたのに……。でも、そうなったら……」
ここで死ぬなんて、やっぱり無し。なおさら生きないといけなくなった! もうちょっと頑張ってみるよ! ナビゲーター!
《はい、マジックポーションですね。どうぞ。》
ごくっ……ごくっ……ふぅ。
これで……もう一回! ここで生きて帰るために……!
「《鬼化》!!」
痛……い……。
とはいえ、前回ほどじゃない。身体が麻痺しているような感覚も同時にあるため、本来の傷もさほど気にならない。
多分、痛みは後でぶり返してくるんだろうけど、それまでに決着をつけてやる。
じゃあ……ドラゴン! 僕は……
「《アイテムボックス》!!」
僕は、ドラゴンが出した火を取り出した。そして……僕に付与した。僕の技にするわけじゃなく、僕自身に。
が……ぐぅ…………ぅ……ぅ
痛い……痛い……。麻痺していると言っても、やはり痛いものは痛い。大分痛みは抑えられているのだろうが、それでもいっそ死んでしまいたいくらいに激しい痛みが襲ってくる。
さすがドラゴンの火というべきなんだろうか……生活魔法、火のときと比べてもダメージの減りが比べ物にならない。
だけど……その分だけ僕は強くなれる! ヒットポイントは削れてしまうけど、0になって死ぬよりはマシだ! こうでもしないと……勝てるはずがない!
「おりゃああああああああああ!!」
そして、僕は名いっぱい拳をドラゴンに向けて振り下ろした。
ドンッ……!!!
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
これはさすがに……………って、え? ドラゴン自身の力だぞ? ドラゴン自身の力だから相当強いはずなのに……
「頑張れー! 千尋くーん!!!」
再び楓さんの声。と、同時に、再び力が沸き起こる感覚が僕を襲う。
どういうことなのか分からなかったけど、楓さんの応援でさっきの理不尽なんてどうでもよくなった。そして……
不思議なことになぜかどんなものでも倒せそうな気がした。本当に意味が分からなかったけど。ドラゴンでさえ。
意味不明な……力が、僕の中で湧いてきているのだ。
「……………なに、これ?」
どういうこと? これも、僕のスキルには存在しないはずなのに?
「《す、ステータス》」
〜〜〜
力 92→9200
耐久 100→10000
敏捷 127→12700
器用 83→8300
〜〜〜
「いや、え…………は?」
すべての能力が100倍くらいしている……。それに速さが12700とかもうおかしい……。鬼化はマジックポイントを結構消費したけどここまでは消費していないはずだし……
どういうことだ……? まぁ、このチャンスは利用するとしますかっ!これならドラゴンを討伐できそうだ……!
「おりゃああああああああああ!!」
《アイテムボックス》
そして、悪魔の使っていたやばい黒い球体をアイテムボックスから取り出した。悪魔からとったのは両手の2つともだから、さっき使ったのとは別にもうひとつあったんだ。
「これでも………くらえー!!」
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
僕は、体術スキルと併用してなんどもドラゴンを殴った。いつもの僕ならドラゴン相手じゃダメージ入らないだろうし怖いからということでしなかっただろう。でも、なぜか今ならなんでもできる気がした。
なにであっても、どんなものでも。
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
そして……倒した。驚いてしまった。どんなものであっても倒せると……そんな感じにはなっていたけど本当に倒すことができるとは……
うぐっ…………
《経験値を獲得しました。》
《経験値が一定に達しました。》
《青柳千尋のレベルが1から2に上がりました。》
《経験値が一定に達しました。》
《青柳千尋のレベルが2から3に上がりました。》
《経験値が一定に達しました。》
《青柳千尋のレベルが3から4に上がりました。》
《経験値が一定に達しました。》
《青柳千尋のレベルが4から5に上がりました。》
《経験値が一定に達しました。》
《青柳千尋のレベルが5から6に上がりました。》
《この世界で初めてのドラゴン討伐とステータスの1万超えを確認しました。》
《ボーナスとして、ユニークスキル 限界を知らぬ者を獲得しました。》
「はぁー……終わったー……!」
生きて帰れたー…! いろんな疑問はあるところだけど、………って、安心すると急に目眩が……
「うっ……」
そして、僕は安心からか行き来が朦朧としていくのを感じ、それに促されるようにして目を閉じた。
《……推しのための必勝祈願の使用を確認しました。……》
《……ボーナスとして、青柳千尋と高木楓に裏スキル 両片想いを確認しました。……》
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