第21話 家で普通に生活した日
僕が同級生と出会ってから、約一ヶ月ほどの時が過ぎ、このモンスターが存在している世界にもなれ始めていた。
……なんか、慣れ始めている自分が怖い。いつか、油断してしまって、なんてことにならないといいけど。
「あっ、昼ごはんできたよ」
「じゃあ、すぐ行くー!」
「はーい」
僕たちは、寝るとき以外はもうほとんどふたりで過ごすことにしている。
生活魔法を使えるのはここでは僕だけなんだし、それにそっちのほうがいろいろと都合がいいし。
「「いただきまーす」」
楓さんは手を合わせながらそう言うと、一気にご飯を食べ始める。僕の料理は、楓さんにとってすごい味が好きな味と言ってくれていて、よく食べてくれる。
……なんか、うれしい。
「……ん? どうしたの? 私の顔になにか付いていたりする?」
「いや、なんでもないよ! なんでもない……」
ふぅ……。あぶねー……。食べっぷりがいつ見ても気持ちいいもんだから、つい見ちゃうんだよね……。なんか、小動物がガツガツと食べている姿いいよね。
それにしても、楓さんがその犬みたいなしっぽと耳がついたパジャマを着ながら、ご飯を食べてほっぺをもぐもぐと膨らませている姿って、かわいい。
うん。すごい、かわいい。
《……はぁ。》
ん? なに? ナビゲーター、大きくため息なんてついちゃって。どした? なにか悩み事でもあるの? 相談乗ろうか?
《いやいや、何でもありません……。だって、私が今なんで悩んでいるのかというと、あなたが原因なんですから。》
えー……? 僕、なにかした?
《……いや、まぁいいです。》
そう……?
「……あっ。ご飯をまだ一口も食べてなかった。少し冷めてしまっているな。……あむ。……あむ」
「そうだ、千尋くん」
「ん……もぐもぐ……なに?」
「そろそろ私も外に出て食料集めをしてもいいかなと思っているんだけど。もう私のレベルは10に到達する事ができたんだし」
「……うーん。まぁ、状態異常…毒はもうすごい操れていて、楓さんだけでもウルフは倒せるようになったんだけど…………まぁ、いっか」
「やったぁー!」
「じゃあ、明日にショッピングモールでも行く? 最近、近くの……っていってもこの町全体なんだけど、そこの食料がつきかけているんだよね」
そう、僕がこの町にある食料をアイテムボックスで集めまくっていると、……あと、学校の人たちも数という力ですごい集めていると、いつの間にかここらへんのスーパーやコンビニの食料はつきかけていたのだった。
「でも……危機感知がショッピングモールの近くにいるとすごい反応するんだよね……。それが少し心配で」
「いやいや、それでも千尋くんの実力はもう神様レベルくらいまで成長しているから大丈夫だと思うよ!」
「……うーん……」
いやいや、絶対に神様レベルくらいまで成長しているっていうのはおかしい。この世界は多分神様が作ったんだろうから。
作った本人に勝つことなんてほとんど不可能な気がするけど……。
それより、ショッピングモールへ行くべきか。それとも行くべきじゃないのか。どっちの方が、これからのことを考えると適切か。
……よしっ。
「まぁ、楓さんが言うならいっか。でも、危険だと思ったら僕を置いてでも逃げてよ」
「……うん、分かった」
「……まぁ、明日のことはまぁ後回しにしておいて、いつものモンスター討伐始めよ」
「うん! 今日は明日に死なないようにするために、より気合を入れるよ。」
死なないために、か……。絶対に死なせないよ。
楓さんに嫌な思いを少しもしてほしくない。悲しくて泣いている楓さんを、絶対に見たくない。
そのためには、強くなるくらいしか方法がない。強くなって、楓さんをかんたんに守れるくらいになる方法くらいしか。
「よしっ、僕も気合を入れようかな!」
「えー……。それなら全然千尋くんに追いつくことができなくなるじゃん……」
「でも、楓さんを傷つけずに守っていくには強くなるしかないんじゃない?」
「……私を守る……か。ずるぃなぁ……」
「ごめん、なんて言った? ちょっと小さくて聞き取れなかったんだけど……」
「えっ!? いやいや、なんでもないよ!?」
「そう……?」
「うんうん!!」
やけに押しが強いなぁ。
その後、僕らは窓から僕は生活魔法を使い、楓さんは状態異常…毒を使ってモンスターを討伐し続けたのだった。
そんなモンスターを討伐する。それは、オブラートに包んでいるのだけど、きちんと言うことになると、それは……
モンスターを殺すということ。
なのに、それでも楓さんと一緒にしていると、なぜかこの時間も悪くはないなと思えた。
おそらく、直接手を下している訳ではないからだと思うけど。だから、実感が沸かないんだ。
モンスターという未知のモンスターは、どんな力を持っているかも未知。平穏に生活を送れているこの今も、いつ変わってしまうか分からない。
分かっているけど、でも、こんな楓さんと一緒の時間がずっと続けばいいのにって思えた。
いや、だからこそだ。この時間を、そして楓さんを、楓さんの笑顔や幸せを守りたいと思えた。楓さんは、絶対に死なせない。
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