第19話 スーパーでオークと人を見た日

「スーパーに着いたんだけど……」


 あれ……なに?


 僕は、スーパーまで肉体強化とか俊足とか色々使っていたら、一分ほどでついた。相変わらずの速さに、ちょっと驚き気味。


 そして、念のためにやばそうなモンスターがいないか確認してみると、少し……いや、結構気持ち悪い、二足歩行で立っている豚がいたのだ。


《あれは……オークですかね? まぁ、かんたんに言うと、立っている二足歩行の豚ですね。》


「へぇー。……ってか、僕のこと口悪いとかなんとか言っていたけど、ナビゲーターも口悪いよね」


《まぁ、君のスキルですからね。それにしても、オークは君、見ていなかったですよね。》


「そうだね。……っていうか、ラノベとかで二足歩行の豚がオークだっていうのは分かるんだけど……。ちよっと、予想と離れすぎていて」


 そう、オークというと、まぁ人間より少し大きめの身長で、牙を持っていてなぜか武装していて……って感じなんだけど……。


 でも、この目の前にいるオークは、スーパーって結構天井が高いのに、その天井につきそうなくらいの背で、なんでスーパーに入れたのか分からないくらいだ。


 それに、なぜか想像のオークは武装しているというのに、ここのオークは武装せずに、なんか原始的。


 それに、普通のオークでも不細工な感じとはいえ、ある程度は整っていると思うのだが……今いるオークは、結構気持ち悪い。


 偏見か。……いや、絶対に偏見じゃないって言い切れる。


「……まぁ、オークって結構強そうなイメージあるし、経験値が結構入ってきそうだよね。……戦うの、なんか嫌だけど」


《……ちなみに言うと、私もです。》


「よしっ、オッケー。とりあえず、いろいろと使ってみるか。《気配遮断》《肉体強化》《潜伏》《無音結界》《無臭結界》《逃げ足》《俊足》《幻術…迷彩》」


《……はぁ。いろいろとおかしいですね。気配遮断と潜伏と無音結界と無臭結界と幻術…迷彩って、全部君の正体がバレないようにするものじゃないですか。こんなにも重ねがけする人なんて初めて見ました……。》


 そして、オークに気付かれずに近づいていく。


「僕も。ゲームとかラノベでも、こんなに同じ目的のためにこんなにスキルを使っている人なんて始めてみたかも。」


《………。》


「《生活魔法…雷》《生活魔法…雷》《生活魔法…雷》《生活魔法…雷》」


バチッ…バチッ…バチッ…バチッ…!!


 生活魔法4発を全部集中して同じところに撃ってみたのだが、倒れない。それどころか、傷付いている様子もない。


「グァァァ………?」


 戸惑っているようだ。まぁ、いろいろとスキルを使ってバレないようにしているから、オークにとっては急に雷が当たったようなものだからな。


「えー……なんで? 4発も当てたのに無傷ってチートですかあなた。それなら《生活魔法…光》」


 ピカッ!!


 すると、オークは突然の光に目をくらませる。目をつぶって何か唸っているところから、視界を完全に閉ざすことに成功したよう。


「それで……《アイテムボックス》でナイフを取り出してっと」


 グサッ……!


「グギャァアア!!!!」


 肉体強化しているおかげだろうか、お腹を刺されてしまったオークは、苦しそうにもがいている。


「……おっと」


 最後の足掻きというやつか、ところ構わずオークはナイフを刺したところ……つまりは僕がいるところ付近を殴っている。


 ただ、見えてはいないよう。反対側に回ると、もう一度刺す。


「グギャァアア!!!!」


《経験値を獲得しました。》

《経験値が一定に達しました。》

《青柳千尋のレベルが12から13に上がりました。》


《経験値が一定に達しました。》

《青柳千尋のレベルが13から14に上がりました。》


 さすが……。一応いろんなモンスターを倒して経験値が溜まっていたとはいえ、レベルが2個も上がるなんてね。


 そんなことを考えているときだった。


「……………か………?」


「………………だ………。」


「………………ろ……!」


「……ん? なにか声が。人か……。スキルを使っているとはいえ、なにか探知系のスキルを持っているかもしれないし、隠れるか……。」


 隠れて、入ってきたその人たちの方を見てみると、その人たちは、前に見た、佐藤先生とその生徒たちだった。


 ……いや、違うな。前に比べて減っている。もしかしてだけど、その人たちは死んでしまったのだろうか……?


 でも、そんな予想を打ち消したくて、僕は首を振りその思考を紛らわす。


「それにしても、久しぶりだな……」


《そうですね、でも、食料は取らないでいいんですか?》


「あ、そうだった……。死角になるところからアイテムボックスで食料をとっていくか。でも、あの人たちの分は遠慮しよ……」


 《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《………


 そして、僕がいる付近の食料を取り終わったときのことだった。


「……あれ? なんか前に来たときに比べて食料がなんか減ってないか?」


「そんなわけ………いや、減っている気がするな」


「誰だ!! 誰かいるのか?」


 やばっ……。少し死角になるとはいえ、いつかはここのコーナーも見に来るんだし、遠慮しておくんだった……!


「すみません……」


 おそらく、僕を知っているなら話は通じるはず。それに、まだ学校のこととかよく知らないし、探ることにした。


 僕は、肉体強化を解除せずに他の隠れるスキルを解除し、そして危機感知と敵意感知を使いながら、僕はその先生と生徒の前に出たのだった。


「………なっ!?」


「千尋、なのか……!?」


「えっ……!?」


「えっ!?」


 みんな、僕の存在を知っているからだろう、目を見開かせて驚いていた。


 その時、僕は心に決めていた。誰かが僕を頼ろうとしても、絶対に今は断ろうと。今、なにもかもを了承してしまったら楓さんに迷惑をかけてしまう、そんな訳にはいかないから。

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