第8話 3時間、瞑想をした日

「それで、まずは一番倒しやすそうなやつから倒していこうかな。ねぇ、あそこらへんのモンスターの強さを鑑定してくれない?」


《はーい。》



ゴブリンA

HP10/10

MP7/7


ゴブリンB

HP9/9

MP6/6


ゴブリンC

HP9/9

MP6/6


コボルトA

HP9/10

MP7/7


コボルトB

HP11/11

MP8/8


コボルトC

HP8/8

MP9/9



「ふむ……。1番低いのは3番目のコボルト……まぁ簡単に言うと、コボルトCだな。そいつから狙っていくかな」


 えーっと、ライターの火よりも少し大きめな感じを想像して、それでコボルトが燃えるような感じをイメージ、っと。


 ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!


《経験値を獲得しました。》


「よしっ、今回はちゃんと倒した瞬間を見ることができ……うん? あの、コボルトが倒したところに残った小さな石はなんなんだ? そういえば、最初に蜂だっけ? それを倒したときにもでてたよね」


 コボルトが消えた様子を見ていると、ふとそこで何かが太陽の光に反射して輝くのが見えた。なんだろう、と頭をこくん、と傾ける。


《あれは、魔石ですね。モンスターの核、のようなものです。君なら、ネットスキルで換金できたりしますよ?》


「ふむ。なら、その時のために取っておこう……と思ったけど、それには、アパートから出ないといけないんだよねぇ……」


《いや、近いから取りに行けば良くないですか?》


「遠くのものを取れるスキルないかな? ドラエ……ナビゲーター?」


《今、あの有名な青色の22世紀の猫型ロボットを思い浮かべたりしませんでした?》


「……いやいや……」


 やけに詳しいな。『あいつ』とか言ってるだけに、いろいろここのこともよく知ってるらしい。


《まぁ、いいです。それで、そういうスキルはありますよ。アイテムボックスとかのレベルを上げることで、遠くのものを収納……つまりは、取ることができたり。》


「それじゃあ、難しいよ。それには、結局引きこもりを10にしないといけないでしょう。だから、その間に取られたら嫌なんだよねぇ」


《まぁ、君のように人は魔石のことを知らないらしいですし、大抵は必要ないものと断定されるでしょうが。》


「そうだけど、さ……。そうだ。転移系のスキルとかないの? そうすれば、パッと取って、パッと帰ったりできるじゃん」


《あー……それなら、引きこもりの上位職、運び屋の上位職である郵便屋が使えますよ。》


「本当に……? 良かったー。でも、負荷がさらにかかるってことじゃん。引きこもりを上げてさらに運び屋まで上げるって大変だなぁ……」


《まぁ、そうですね。》


「でも、それくらいしかないんだろ? 自分がしたいことはきちんとしたいし、頑張ってみるか。それで、今の僕のマジックポイントはどれくらいあるの?」


《えーっと……あっ、4ポイントですね。だから、まだ戦えませんね。》


 うーん、この戦ってマジックポイントが無くなっている間も戦ってみたいんだよなぁ。時間は有限、無駄にしたくない。


「この暇な間に、なにかするべきこととかある? または、なにかできることとかでもいいから」


 この世界は危険に脅かされているけど……ある程度モンスターから離れて安全(?)なところにいると………あまりにも暇すぎる。


 テレビもスマートフォンも……なにもかもが使えない。料理とかしようと思っても、いつか足りなくなるから我慢しないといけないし。


 生きていくには……暇をつぶすものは必要だと思う。こんなときに贅沢だなって思うかも知れないけど、こんな時だからこそ。


《それなら……。あっ、新しくスキルを獲得可能にしたりするのはどうでしょうか?》


「あー、MP自動回復のように、なにかの条件を達成すれば、獲得可能になるようなやつか?」


《はい、それです。》


「それで、どんなスキルを獲得可能にするの?」


《うーん……ここでできそうなスキルですよね。そうです、瞑想とかどうですか? MP自動回復だけでなく、HP自動回復もできるんですよ。……かなり遅いですけど。》


「ふむ……。」


 遅い……ということは、戦闘中とかにはできそうもないけど、僕は別に遠距離攻撃をするから、僕にピッタリじゃないか?


「よしっ、じゃあそれを獲得可能にしよう。で、どうすれば……あぁ、瞑想のようなことをすれば、獲得できるの?」


《はい、その通りです。》


 そして、僕は早速瞑想っぽい格好になってみた。


 まぁ、瞑想っていうのがよく分からないから、とりあえずあぐらをかいて、その足の上に手をのせて、あのー……輪っかみたいなのをつくった。


 ……よく分からないから仕方ないじゃないか。


 その後に目をつぶる。


 ただ、じーっとしていた。こうしていると、気持ちが落ち着く。モンスターのこともあり、大分揺らいでいたものも収まる。


 それに、いろんな情報が混雑していた頭の中が、徐々に整理されていくようだ。こういう時間も、たまには必要なのかも。


 そして、ある程度……まぁ、時間感覚がよく分からなくて、でも長そうな時間が経つと、僕の頭の中で、待ちわびていた声が入ってきた。


《スキル熟練度が一定に達しました。》


《スキル 瞑想が獲得可能になりました。》


《スキル 集中が獲得可能になりました。》


「……ふぅ」


 その音が聞こえると同時に目を開いた。今まで暗闇にいたからか、この停電したアパートの部屋でも明るく感じる。


「よしっ。これで、レベルが上がったら瞑想を獲得するか。それに……なんだ? 集中って」


《……すごいですね。3時間ほど、ずっと何もせずにいられるって……。》


「えっ……!? 僕って、3時間、ずっとこの状態でいたの?」


《はい。そのおかげで、なぜか集中まで獲得可能になりましたよ。それに、もうMPが11までたまりましたからね。》


 えー……。それじゃあ、僕の体内時計はすごい狂っているということになるんだけどなぁ。結構正しいと思っていたのに。


 ………あっ、勝手にそう思っていただけか。


「まぁ、このMPを無駄にするのも嫌だし、早速ゴブリンまたは、コボルト討伐を再開しますか」


《そうですね……。》


 そして、もう一度窓から良さそうな敵を探した。


「よしっ、あれでいいかな?」


《スキル熟練度が一定に達しました。》


《スキル 望遠が獲得可能になりました。》


「おぅ……。そうっすか……。」


 ずっと見ていたら、どうやら何かスキルがまた獲得可能になったらしい。


 まぁ、いいや。それで……あっ、あまりさっき……と言っても3時間前くらいのことだけど、そのときと比べて動きは、あんまりないな。


「じゃあ、あいつを狙うか。」


 いつものように、ライターより少し大きめな火をイメージして、っと。


 ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!


《経験値を獲得しました。》

《経験値が一定に達しました。》

《青柳千尋のレベルが3に上がりました。》


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