第11.5話 揺らぐ黒い影
この世に光があるならば、必然的に闇も存在する。
もし、その闇を知ってしまったら。
その闇に足を踏み入れてしまったら。
そこから先の景色は地獄かもしれない。
しかし。
その闇の中だからこそ生きれる人間もいるとすれば。
また話は変わる。
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「それではこれより、緊急会議を開始する」
野太い中年男性の声を金切りに、緊急会議は始まった。
「全く、こんなどうでもいいタイミングでの緊急会議、議題は何なんです? それなりの用があって私たちを呼んだわけですよね? 瞬水さん」
「うむ...。いくらかな」
瞬水は動じることなく頷いた。
「へぇ...? どんな内容ですか? あれですかね、
「鍵師の話については担当の能力者が全力で捜索に当たってる。あと一息といったところだろう」
「それは前回の会議でも似たことを聞きました。進展なし、と見ても?」
「...複数人いたところから候補を二人ほどまで絞った、といったのが進展に値するかどうかだな。能力者の負担が激しい分、あまり活発に行動できないのが難点だ」
「お言葉ですが」
柄木の隣に座っていた
「瞬水さん、能力者は消耗品となんら変わりないんです。時間もあまりないこと、十傑のリーダーであるあなたなら知ってるでしょう。この機を逃せば次がいつ来るか分からない。急がなければいけない状況でそんなことは甘えと思わないのですか?」
「...それは、確かにそうだが」
「でもそれは、戦闘に積極的に参加しているあなただから言える話でしょう。戌亥」
戌亥の発言に引っ掛かりがあるのか、湧いて出た女性の声が戌亥を軽く糾弾した。
「野沢さん、女性のあなたには分からないでしょう。...日常だのなんだの知らないが、私たちはそうすることしかできないんです。お預けを食らわせられるほど、寛大な心は持ってないんですよ」
「...分かった。両者とも落ち着いてほしい。...鍵師捜索については、引き続き全力で当たってもらうことにする。...それで構わないかね? 柄木君、戌亥君」
その場を取りまとめるように瞬水は声を響かせた。
「私はなんとも? ただ、早急に済むのであれば、それにこしたことはないとだけ」
「柄木さんと同意見です」
柄木がイスに深く腰かけ、頷いたところのを確認して、戌亥もしぶしぶ了承した。
場がいったん落ち着いたのを確認して、瞬水は本題に入ることにした。
「うむ。...その上で、今日本来話したかった議題のほうに移ろうと思う。...野沢君、説明お願いできるかな?」
「承知しました」
瞬水の呼びかけに応じ、聖はテーブル中央のモニターに電源を入れた。
少々荒っぽい粒子で、必要事項のデータが表示される。
「...これは?」
予想外の内容に戸惑ったのか、真は声を上げた。
「最近になって能力者が増えてきている、という案件です。特に高校生までの年齢層にでしょうか」
聖が説明を始めると同時に、一通り資料を読み終わった十傑のいくらかのメンバーがざわめきだした。
「おいおい、このデータ、大体が白学じゃねーか?」
「そうです。この能力者急増の案件、その人数の数割を白学の生徒が占めています。私が持っているクラスでも、数名ノラの能力者を確認しております」
「...つまり、何が言いたいんです?」
真の尋ねに対し、聖は真のほうを向きなおして明確に答えた。
「...そもそも、能力というのは、白飾においてコアが人間にもたらす影響の一つ。コアが活発に動けば動くほど、白飾も発展し、能力者も増える。...つまり、能力者がだんだんと増えるということは、コアの活動状況がだんだんと強くなっているということです」
「...ということは、つまり」
真は何かを確信したように微笑み、問いかける。
それに動じることなく聖は答えた。
「ええ、そろそろ全面戦争の時が近づいてきてます。...それについて、瞬水さんの判断を仰ごうかと」
聖は説明を終えて自席に着席した。
周りが一度静かになったのを確認して、今度は瞬水が話し出す。
「犠牲が出る、出ないは一旦置いておくとして、全面戦争が避けれない状態となってきた。これまでのようなつばぜり合いとは格が違うだろう」
「で、どう動くんです?」
「先ほど話したように、鍵師の行動をつかみ、人物を特定できたところから勝負になるだろうと考える」
「それで、コアを発見し、例の手順での破壊を狙うと?」
「...そうなるだろうな。各自、念頭に入れておいてほしい」
そう言い切って瞬水は立ち上がった。
「これで会議のほうは解散とする。質問があるなら後で直接私の元に来てほしい」
瞬水が会議終了の合図を行うと、席についていた他の九人も立ち上がった。
それを待ち、瞬水は最後に号令のように言い放った。
「我らの正義に栄光あれ」
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