「じゃあ君のしゃべっている言葉は、

 戦国くらいの言葉なの?」


あらず。(そうではない)


 始終しじゅう(及第点きゅうだいてん)と言ったとこか。

 やも(いや)に(げんに)そうなのじゃが、

 わらわの言葉は平安時代くらいから、

 現代までじっておるからのぅ」


「それって不便ふべんじゃないの?」


な(変わった)ことを。

 も(いかにも)不便じゃが、

 せん(仕方)なかろう。


 そう言う風に育ったのじゃ

 現代語に直すのにも、

 刻限こくげん(時間)がかかるのじゃ」


なんか複雑ふくざつ事情じじょうがあるようだ。


これ以上の質問は、

家庭の事情にみ込んでしまうかもしれないと

躊躇ちゅうちょする。


おもはゆいのう。

 かまわぬ忌憚きたん(遠慮)なくもうせ。

 わらわ寛恕かんじょ(心が広く思いやりがある)じゃ。

 讒言ざんげん(嘘、いつわり)たばかり(はかりごと)を

 もうさぬかぎりは怒ったりせぬ。

 言わまいて(言葉に出して言って)みよ 」


「じゃあさ。さっき言ってた、

 みやごととか、何とかってなに?」


「あっあ閨事みやごと(SEX)か」


彼女がその単語を口走るだけで、

その意味が理解できた。


「それは?」


彼女が説明を始める。


「いやいい!

 もう意味はわかったから」


俺はあせってそれを制止した。


品性ひんせい倒壊とうかいしている。


彼女は外人のせいなのか、

そう言ったごとうとい、

良く言えばおおらかなようだ。


「あのさぁ。

 女の子なんだからそう言う言葉は、

 使わないほうがいいよ」


俺は彼女の将来のために注言ちゅうげんする。


「言葉とは、昔の話言葉か?」


「そもじらは忘れているかめも知れぬが、

 これも立派なもとの言葉じゃぞ」


「いやむしろ 、

 由緒ゆいしょ正しき正式なもと言霊ことだまじゃ」


「そうじゃなくて、閨事みやごととか睦事むつごととか」


「ん? 現代語で言ってくれんとわからんな」


「だ、だから。

 レ○プとか○ッチとか、セッ○ス、S○X。

 ⅩⅩ行為。 ⅩⅩⅩ○○ⅩⅩだよ!」


彼女は頬杖ほおづえをついて、

そんな俺の様子ようすを楽しげにながめていた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

禍神 夜神 颯冶 @vx9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ