5話 六律よ!聖霊魔法を歌え!
ココはペルンの一瞬の隙をついて、懐に隠し持っていた消費魔動器ビリビリ君を稼働させた。
電撃がペルンを対象として、彼の体を貫く。その電撃でペルンの腕も瞬間弛緩してしまって、ココの脱出が成功してしまう。ビリビリ君の尊い犠牲は無駄にはしない!とココは受け身をとりながら地面に無事に着地し、霧の中を目指して走り出した。
「ココッーー!!ダメだべッ!」
ペルンが慌てて追いかけてココの手を引っ張ったが、彼女の勢いの方が強く手を繋いだまま二人揃って霧の中に突入してしまう。
「ーーーッ!」
毒による浸食を覚悟して身を強張らせたペルンだったが、ココとペルンの体に何らの異常も生じることはなかった。それどころかココとペルンの周りを薄い光が膜のようなものが包み込み、二人を黒紫色の腐毒瘴から守るかのようだった。
「あり得ねえ……一体何が起こったんだ?」
「さっ、行こう。ペルン」
「こら!ココ、引き返さねえとッ」
ココに手を引かれてペルンは引き摺られていく。こうなってしまったココはもう引き止めることはできない。ペルンは引っ張られるがままに歩いていく。ココとペルンを包む光を改めて仰ぎ見た。
「この光は一体、何なんだべ?」
生じた疑問に対する答えが出ないままにペルンは、ココと自分を繋ぐ手に力を入れた「今が大丈夫でも、何か起こるか分がらねえからな」その岩場の石すらも腐って溶けている空間のなかを歩いていると、冥府のなかに閉じ込められてしまったかのように思える。途中何度かココは岩場につまづき手が離れたがココだけは霧の影響は受けずに無事だった。それに対してペルンは、瘴気によって左腕が失われてしまった。
「ココ……あと一体どのくらい進むんだ?いい加減に正気に戻って欲しいんだべ。蝕も始まっているし、これ以上は危なくて帰れなくなってしまわねえか?」
「あっ!あそこだ。あの岩場に反応があるんだよー」
ペルンの言葉か耳に入らないココは、彼を連れて瘴気の噴き出す深部に進んでいく。そして、辿り着いた。この空間を満たす瘴気を吐く元凶に。ココはその大地の割れ目を覗き込む。
「見つけたっ!!虹色に輝く結晶体だよ、ペルン!」
少女は信じられないといった面持ちで、大地の隙間をさらに覗き込む。その隙間の奥には、虹色に輝く結晶があった。
「綺麗な色だね~」
「おいおい、ココ何言ってんだべ?その石っころからは、どす黒い瘴気しか湧いてねえぞ」
「え?そうなの!私には七色に光る結晶石なんだけどー?」
「まさか、その石っころば持って行く気じゃねえだろうな?俺は断固反対だ!そんな気味が悪りいもんは、さっさと捨ててしまえや」
「えー!!なんでそんなこと言うのかなあ~、ちゃんと間近で見て、解析をしてみればお宝だってことが分かります!!」
ココは隙間に手を目一杯に伸ばして、その結晶を掴もうとする。あと少し、あと少しで結晶に指が届きそうだ。腕を肩口まで押し込み、ぐうっと手を伸ばす。岩場の固い尖った石が少女の柔肌を傷つけるが、ココは気にも留めない。あともう少しで届くから、あとほんの少し、ほんの少しで―――小指が結晶に触れた。すると、その虹色の結晶はココの手のなかに滑り込んできたのだった。
「あっ、良かった。ちゃんと採れたぞ!ふふふ、やったぞーー!!」
高揚感で声が上ずる。その結晶のような物は今はココの手のなかに収まり、虹色に揺らめいている。ココは注意深く手の中のその結晶を覗き込んだ。
おそらくエーテル結晶ではないとココは判断する。そして彼女は注意深く、慎重に鑑定を行う。
「では、いっちょ解析してお宝鑑定しまーす!」
ペルンは「素手で持って大丈夫なのか?」と半ば頬を引きつらせながらも、石を持つココの手を注意深く見やる。彼女の白い手は綺麗なままで、何らの影響も受けていないようだ。ココは「だいじょぶ!」と笑顔を見せて、それからその結晶石に神経を集中させていく。
魔法の制御式を編み始めて、分析対象である結晶石の周囲に立体状の制御式が精緻に組まれていき、解析の魔法の型が組み合わされていく。そして、立体の球状術式が完成して、領域魔法が発動した。
「六律が系譜の祖、原典の
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