初めての体温計

寝付ける訳なんてなくてこのだるいつらいカラダで夜を迎えてしまった。

仕事を終えたフランスが帰ってくる時間


具合の悪い僕はベットの上から部屋に戻ってきたフランスに「おかえり」を言った


「ただいま、まだかラダつらいの?」


「辛い。ずっと辛い。幸せになりたい。」


ゴホッ ゴホッ


咳が出てその勢いで口を覆っていたマスクが少しずれる


「温度計るか」


フランスはそういって部屋を出ていった


僕はずれたマスクを直して、それから少ししてフランスは右手に体温計を持って帰ってきた


そして僕に渡す


体温計の形も計り方も日本と一緒で

日本と同じくセルシウス度で体温を測っている


それを脇に挟んで数十秒


ピピッ ピピッ


体温計のお知らせブザーが鳴った


体温を見てみると38.6℃


がっつり風邪を引いてる体温

ここまで高いとインフルエンザを疑うが...


「タイオン高い。病院いった方いいよ」


「行ったほうがいいよね。でも...」


行った方がいいのは重々承知だが僕には行けない理由がある


なんてたって僕は保険に入っていないのだ。


保険に入ろうか悩んでいた時期に保険に入らないことが保険

なんて言って結局入らなかったことを思い出す


「まぁ、明日明後日には治ってるでしょ」


フランスにそう伝えた。


それならいいけど...とフランスは心配してくれる


いい奴だな。フランスの親は服を脱がそうとしてきたのに

こやつは心配をしてくれる


心配をしてくれるだけで心が救われる気分だ。


「ゴハン食べた?」


「いや、だるくて作れないから食べれてない...」


僕は素直に言ってしまった


「え、なんで」と言ってフランスは部屋を出て行った

フランスママと話すのだろうか


僕はまた咳が出て、そしてまた少しずれたマスクの位置を直した


正直、僕自身フランスのママにご飯を作ってもらえるかなと思っていたけど

服を脱がないことに怒ってご飯もなんも介護してもらえてなかったのだ


朝、作ってもらってたから夜も作ってというのはわがままになる。


わがままになるけど


カラダが弱っているとどうしても甘えたくなるものじゃない?


風邪を引くなんてイベントは久々で

こんなにカラダがだるくて辛いものだったのだなと他人の布団の中で思う


そいやフランス、まだ部屋に戻ってこないな。

なんて思い出した矢先、部屋の扉が開いた


「ごめんmun(母)がゴハン作らなくて。代わりに俺ツクッタ」


ツクッタ?


「うそやろ。それは惚れる」


フランスはたまに優しい顔を覗かせる。本当になんでこやつに彼女がいないのか


私は不思議でたまらない


作ってくれたのはチャーハンにフランスの好きなチーズが乗ったもの

今の僕のカラダにはちとヘビーだがゴハンをツクッテくれたっていう事実だけで

嬉しすぎる


「ありがとう」と言って「いただきます」をした


やっぱりちと重たいがフランスが作ってくれたってだけで完食できるやんか

そして完食して、後片付けまで全部、フランスがしてくれた。


本当に感謝しかない


治ったら次は僕がご飯を作ろうと思った。決めた。


寝る場所どうしようかなんて思ってたけど

結局ベットはダブルベット1つしかないから僕らは同じベットで寝る


一応マスクしてるしうつす心配はないかな?


それでも少し心配しながら寝付けない夜を過ごした。

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