200話 魔人王

 読者の皆様へ:軽い気持ちで書いた作品が、まさか70万PVまで行くとは思いませんでした。皆様本当に有り難う御座います。あと少しで番外編完結致しますので、最後まで諦めずに読んでくれると嬉しいです。



 ☆★☆★


 全力で索敵した結果――何らかの拍子でこの世界に来てしまった雫の居場所を完璧に突き止めることが出来た。


 索敵結果に映った巨大な魔力を持つ個体と、大勢の魔人達。位置情報を基に熾天使たちに訊ねれば、魔人城で間違いないと言われた。


 恐らく雫は魔人王の手下によって捕らえられているとのこと。肉付きが良く容姿が端麗であれば、まず殺されることは無い。その代わり、性奴隷として精神が壊れるほど滅茶苦茶にされ、地獄に合うことは間違いないだろうとも言われた。


 それを聞いた瞬間――俺は魔人王と手下共は一人残らず殺すことに決めた。


 この世界に来た時、干渉するつもりはあまりなかった。元々観光目的だということもあり、最後の砦ラストフォートが襲撃された時は、観光と滞在の許可をくれた礼に一度だけ助けてやったが、後に魔人達によって人間達が劣勢を強いられていることを聞いた時は、食料や武具の提供による間接的な手助けをするだけに留めていた。


 楽しませてくれる何かが無いのであれば、戦力として宛にされる前に、狂歌達と合流したらとっとと帰還しようと思っていたのだが――もう辞めだ。魔人共は全員皆殺しにしてやる。


「勢いが止まらねぇ…」


「お、おい!不味くねぇか!」


「マズいぞ!このままだと最終防衛ラインを突破され――」


「黒雷龍」


 俺は、魔人共が必死に守ってる城へ魔力攻撃を放った。


「ゴアァァァ!!」


 轟音と黒龍の雄叫びと共に城に確実に直撃する――かと思われたその時。


魔力盾マナ・シールド


 突如現れた巨大な魔力の盾が、俺の黒雷龍の軌道を斜めに逸らした。


「「グギャアアアア!!」」


 弾かれた魔力攻撃が明後日の方向に居る魔人共に襲いかかり絶命させる。


「ふー。危ない危ない。ギリギリ間に合った」


 全力では無かったとはいえ、まさか俺の攻撃を阻止するとは……


 そんじょそこらの魔人とは格が違う。内包する魔力も桁違い。ではコイツが……


「やぁ。初めまして!僕が魔人王だよ。本当は初めましてじゃないけど、どうせ僕の事は覚えてないだろうから、初めましてになるよね」


 目の前に降り立った金髪の青年を観察していると、ニコニコした笑みを浮かべながらゆっくりと近づいて来た――やはりコイツが魔人王だったか。


「あれれ、無視?ひどいなー」


 それにしても予想外だ。まさか金髪の青年が親玉だったとは。


「今の魔法凄いね!僕の魔力が一瞬で三割も削られちゃったよ。アハハ!いやぁー参ったなー」


 もっとゴツイ奴を想像してたんだが、どうやら違ったようだ。


「単刀直入に聞く。雫を何処にやった」


「シズク?シズクって誰だい?知らないなー」


 ニコニコしながら惚けて見せる魔人王に俺は腹が立ったが、殺気を理性でなんとか抑え、引きつった笑みを浮かべながら再度尋ねる。


「優しく聞いてる内に話した方が身の為だぞ。俺大事なの妹なんだ。制服を着てたハズなんだが知らないか?」


「あ、あぁー。あのね。確か、奴隷たちの所に送った気がするなー。こっちとは逆方向だから、お引き取り願えると嬉しいなー?これ以上暴れられると迷惑なんd――」


 適当な事を抜かす魔人王の話を中断させ、俺はイライラしながらもしっかりと根拠を並べていく。


「それは無い。仮に本当に奴隷たちの所に送ったのなら、念のために向かわせたなかま達から救助した念話れんらくが来るハズだ。それが無いという事は、前回索敵した場所からそう遠く無い位置にシズクがまだいる可能性が高いということだ。――それに城中に生命や魔力の感知を遮断するジャミング効果のある高度な結界を張っているようだが、俺が気付かないとでも思ったのか?バレバレだぞ?」


 そう言った瞬間、魔人王の表情が微かに強張った。

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