158話 ブラコン

 久しぶりに会う妹は元気だった。


 しつこく絡んでくるヤンキーを容赦なく戦闘不能に追い込むほど、それはもう元気だった。


 琉野ルノちゃんと呼ばれるお友達と別れた後、2人で実家に帰った。


「えへへ。おにぃと一緒!おにぃと一緒!」


 その際、恋人のように腕を組んできたのは何故だろうか?


 嬉しそうだったから良いが、胸を押し付けるように抱き着くのは辞めて欲しいものだ。


時雨しぐれ愛してる」


「もう、あなたったら。2人が見てるわよ///」


 久しぶりに会う両親は相変わらずで、人目を気にせずにイチャつくほど仲が良かった。


 それにしても、50代後半だと言うのにあまり老けていないな。老化が遅いのだろうか?


「シンジ。夕飯作るから食べていきなさい」


「え?あぁ。分かった」


「やったー!おにぃとご飯~♪」


 母にそう言われ、俺は帰りが遅くなると嫁達にメールで伝える。横には、抱き着いて喜ぶ妹がいた。




 ★☆★☆


 テーブルに沢山のおかずが並び、全員が席につくと手を合わせて言う。


「「「「いただきます」」」」


 久しぶりの母の手料理だ。まずは何から行こうか。


 悩みながらおかずを取ろうとすると、横から妹の声が聞こえてきた。


「はい、おにぃ。あーん」


 振り向けば、箸で唐揚げを掴み口を開ける様に催促してくる。


「いや、自分で食べr-」


「あーん」


 突然の行動に驚き、断ろうとすると言葉を遮ってきた。


「いや、だかr-」


「あーん!」


 青い瞳で見つめ、有無を言わさせないぞといった笑顔で見つめてくる。


 これは抵抗しても無駄なようだ。


 俺は諦めると、黙って口を開けて妹にあーんをされた。


「おにぃにあーんした。えへへ///」


 両手を顔に当てて嬉しそうにニマニマする妹。すごく嬉しそうだった。


 普段会わない分、こういう時に甘えたいのだろうか?


 こっちに、たまに遊びに来る事があるが、こんな姿は一度も見せた事が無い。


 その後も、俺は妹にあーんをさせられ、最終的には俺もする事になった。


「な、仲が良いわね」


「いつの間に....」


 そこには終始、目をパチクリしている両親が居た。


「おにぃに、あーんされた。あーんされた。えへへ///」


 そんなに幸せそうな姿を見せると、たまには良いかな?思ってしまう自分がいたのだった。

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