156話 雫

「あぁー。暇だ」


 仕事を終えた俺は、机に突っ伏して呟いた。


 時計を見れば午後の4時。特にやるべき事は無い。


 嫁たちは現在、気分転換にと買い物を楽しんでいる。その為、家では1人なのだ。


 娘たちと遊ぼうにも、。時が過ぎるのはあっという間だ。


 俺はもう35歳になった。300歳飛んでだが・・・・


 全員嫁達に似て美人になった。瓜二つと言っても過言では無い。


 全く、俺の遺伝子は何処に行ってしまったのだろうか・・・・


 俺と似ている部分が全くないのだ。せいぜい目元くらいだろうか?思わずそう考えさせられる。


「良し、たまには実家に顔を出すか!」


 暫く実家に帰って無い事を思い出した俺は、実家に帰る事にした。




 ★☆★☆


「~♪」


 鼻歌をしながら道を歩く。


「ねー。いいじゃん。ちょっとだけ」


「遊ぼうぜ。な?」


 暫くすると、前方から男性2人の声が聞こえてきた。


「こ、困ります....」


「しつこい」


 続けて、嫌がる女性2人の声も聞こえてくる。


「ん?あれは....」


 どうやら、女子高生がヤンキーに絡まれている様だった。


「これは助ける必要が無いみたいだな」


 助け船を出そうと声をかけようとしたその時、とある人物を見かけた。


「ねー。どいてくれる?邪魔」


 の女子高生が、ヤンキー相手にハッキリと言い放った。


「し、しずくちゃん.....」


 その後ろでは、不安そうに見る女子高生。


「てめぇ調子に乗るなよ!値打ちこきやがって!」


「お高くとまってんじゃねーぞ!」


 すると拒否されたことに腹を立てたのか、ヤンキーが逆切れを起こした。


 一斉に殴り掛る2人。


 黒髪の女子高生は同時攻撃を軽く受け流すと、足払いして2人を同時に転ばせた。


「へ?」


「ぁ?」


 急な浮遊感に包まれて何が起こったのか理解できないヤンキー達。


「いでっ」


「ぐぇっ」


 数瞬後には受け身が取れず、地面に頭と背中を強打した。


 その時点で2人の負けは確定だったが、それでも黒髪の女子高生の追撃は止まらない。イラついていたのか、それともトドメを刺したかったのかは分からない。


 女子高生は足を大きく振り上げると、男の急所を容赦なく蹴り上げた。


「ぎゃあああああああああ!」


「ぐおおおおおおおおおお!」


 あまりの痛みに急所を押えて悶絶する2人のヤンキー。


「あひっ。も、もう!許してっ!」


「あっ!ぐおっ!わ、悪かっ、た!」


 だが女子高生は止まらない。何度も何度も蹴り上げ、2人が気絶するまで続けた。




 ★☆★☆


「あぅ。あぅ」


「あひゃっ。あひゃっ」


 数分後、ヤンキー達は口から泡を吹き出しながら気絶した。


「ふー。すっきりした。行こう琉野ルノちゃん」


「ひえぇぇぇ」


 スッキリした顔を浮かべる女子高生と、ドン引きするお友達。


 近くで見ていたがあれは惨かった。もう男性として生きていけない無いだろう。


 玉が無事だったらいいな。そんな事を思いながら俺は声をかける。


「ちょっとやり過ぎなんじゃないか?しずく


 黒髪の女子高生が、ぱっと後ろを振り向くとー


「あ、兄貴だ」


「え!お兄さん??」


 そう返事をするのだった。

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