127話 パワーレベリング
「「「むう。」」」
さっきから、みんなの嫉妬した目線を感じる。
多分だが片腕にエレナが抱き着き、幸せそうな顔をしているからだろう。ついでに頬でスリスリしてくる。
みんなが見てるだろ。やめんか。
独占欲と嫉妬の強いみんなだ。目の前でそういう事をされて、平常心でいられるハズが無い。まぁ、俺は何もしていないがな。エレナが勝手に抱き着いているだけだ。
だが、目の前にいるのが”命の恩人”である以上、強くは言えない。そのため、もどかしい思いをしているのだろう。ベタベタしすぎ!と言いたくても言えない。そんな気配を感じる。
なにか、なにか機嫌を直させる方法は無いだろうか。
脳を思考加速させ、じっくり考える。
指輪?いやいやまだ結婚出来る年齢じゃない。論外だ。
ネックレス?いやいやそんな物、用意してないぞ。
チョコ?いやいや、ホワイトデーのお返しか!そもそも作って無いぞ。
なにか。なにかないのか。
0.2秒の間に考えるが、まったくいい案が浮かばない。
いや、あった!多少引かれるだろうが、今渡すべき物が。
「おい、エレナ。『強欲』と『傲慢』を出せ」
異空間から2つの首を出すように促すと、狂歌達の目の前に置くエレナ。
「な、なんですかこれ?」
まさかの贈り物に驚く3人。代表してサラが質問をすることにした。
「エレナが魔界に行ってる間、『捕食王』と『七幹部』を”ついで”に倒しておいてくれたんだ。これはその首だ。」
「本当はマスターのお土産に持ってきたんだけど、その2つは余ったからあげるね。」
『自分達が苦戦した相手を、倒せなかった相手を、たった1人で』
『それも、全幹部と魔王を同時に相手して生き残れる強さを持っている』
俺とエレナの答えに、実力と格の差を感じたのか
3人は唖然とした表情を浮かべていたのだった。
★☆★☆
赤く曇っている空。ゴロゴロと常時鳴る雷。ヒビ割れた大地。中央にそびえ立つ黒い城。
そう、俺達は今魔界に来ていた。
え?何故かって?
それは2つの首を渡した後、3人が『私達はあなたの隣にいる資格が無い』と急に言い出したからだ。
『実力も格の差もあって、私達は弱い。悔しいのよ。あなたと同じ階級までいってない事が』
狂歌が、心の中で思っている事をいった。
『”死んでいたからしょうがない”。なんて言えばそれまでだけど、やっぱり悔しいよシンジ君』
そして便乗するかのように、美香が悔しそうに言う。
『だから私達。”巨獣”になるまで、兄さんの隣には居られません!進化するまで、魔界に居る事にしました!』
最後には、覚悟を決めたサラが宣言をしたのだ。
『何年掛かると思っている。俺が”不眠不休”で活動しても300年は掛ったんだぞ。【強欲】による経験値ブーストも無い。あんな過酷な環境の中で、お前らは何百年、何千年も過ごす覚悟があるのか?』
『あるわ!』
『ある!』
『あります!』
必死で止めようとしたが、嫉妬と劣等感による一時の感情でマトモな判断が出来ていないのか、3人はムキになって言い返してきた。
せっかく生き返らせたのに、離れ離れは嫌だな・・・
だから俺は、ある提案をする事にした。
『とりあえず、全員【強欲】と【傲慢】を手に入れろ。巨獣になるんだろ?
だったら必要になる能力だ。【強欲】による経験値ブーストと、奥の手の”無力化”。【傲慢】によるタフネスさと、奥の手の”格上殺し”は必須だ。』
俺の命令通り。2つの首を捕食し、能力を手に入れる3人。
『手に入れたわ。これで魔界に行くことを認めt-』
『同じ階級になりたいんだろ?』
『え、ええ。』
”出鼻をくじく”ようにして声を被せて言うと、戸惑いながらも頷く狂歌。
『だったら、パワーレベリングだ』
という事で、3人を魔界に連れてきたのだ。ついでにエレナもいる。
「全員俺の身体に掴まれ『転移』するぞ。絶対に離れるな」
そう言って、全員に掴まるよう促す。
3人は未だに、何故俺が付いてくるのか分かっていないようだった。
パワーレベリングって単語知らないのだろうか?
「とりあえず『白虎』から殺すか。【魔力攻撃無効】持ってないからダメージが通るだろ」
そうして俺達は、西の最果てにある乾燥林。白虎の住処まで転移するのだった。
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