126話 嫉妬と和解
「それじゃあ、父さんは時雨とデートに行ってくるな!」
「出かけるときは、戸締りを確認してから行ってね」
一階のリビングで暇をつぶしていると、両親がデートに行ってしまった。
父さん、滅茶苦茶テンション高かったな。どれだけ楽しみにしていたのだろうか。
だが、まぁ分からんでもない。好き人をずっと思うという気持ちは。
だから、俺も300年間”不眠不休”で頑張れたんだ。
まぁ何回か気が狂ったのだけれども。
いいなー俺も行きたいなー。デート。
は!? 今は現実逃避してる場合じゃないぞ。
修羅場は始まったばかりだ。きっとこの後、誰かが呼び出しに来るハズ。
「兄さん....ちょっと来てもらっても.....いいですか.....」
案の定、噂をすれば来たぞ。
ん?元気ないなサラ。なんでだろう?さっきまで怒っていたハズなのに。
何か違和感を感じる。そう、例えるのなら!
さっきまでの怒りの感情全てが霧散し、今は知らなかった事実を知って、申し訳ない気分になっているかのようだ。
いや、考え過ぎか。
どうせ、死んでる間に女を作ったと知って呆れているのだろう。
よし。覚悟を決めろオレ。
サラに、皆がいる部屋へと呼び出された俺は、覚悟を決めて中に入った。
するとー
「ごめんなさい、あなた」
「ごめんなさい、シンジ君」
「ごめんなさい、兄さん」
全員に一斉に謝られた。
ん?なんか、思ってたのと違うぞ?
謝るの俺の方では?
「エレナちゃんに全部聞いたわ。私達、勘違いしてたみたい」
代表して、狂歌が喋り始めた。
「生き返った時に、あたかも簡単だったかのように、復活させるまでの過程を簡略して説明をしたから、努力をすればてっきり誰でもできると思っていたの」
言ったな。
死んだ原因は俺が弱かったせいだから、威張るようなことは言いたくなったんだ。
300年かけて生き返らせたぞ。感謝しろ。と生き返らせた直後に言いたくないし、今後も言うつもりも無かった。
だから敢えて、簡略にまとめて言ったんだが・・・
逆効果だったか。
それにしても、言いやがったなエレナ。
「悪い。死んだ原因は、俺のせいだからあまり言いたくなかったんだ。弱かった俺が悪かったから。なんでも出来ると過信していた俺が、『獅子王』なんかにあっさりと負けたから。だから、みんな死んだんだ。その原因である俺が、生き返らせたお前らに、感謝を求める資格なんか無いんだ。だからずっと黙ってたんだ。」
「そんなことはありません!」
「うちらは、死ぬかもしれないと覚悟した上で魔界に行った!」
「言いつけを破った、私達も悪いわ!」
本音を言うと、サラ・美香・狂歌の順に言ってきた。
「それと、エレナちゃんの事を一切紹介してくれなかったから。てっきり、やましい気持ちがあって私たちに隠していたと思ったの。」
「悪い。エレナが戻ってきたの昨日の夜中だったんだ。今日紹介しようと思っていたんだが......色々とタイミングが悪くてな......」
狂歌の問いかけに答えると、その場に沈黙が訪れる。
「とにかく説明不足の俺が悪かった。許してくれ。」
「私達も悪かったわ」
気まずく感じた俺が謝ると、3人も謝ってきた。謝り合う形となる。
その後、お互いに和解し、これからどうするのかと決めている所で、エレナが急に後ろから抱き着いてきた。
「マスター。これからどうするの?」
「いや、特に何もないが?後は平和に暮らせれば、それでいいかなって思ってるけど。」
魔界では、事ある毎に良く抱き着いてきたから、癖になっているのだろう。
人目を気にせずに行動したエレナを、3人は嫉妬した表情で見つめていたのだった。
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