93話 時雨

 読者様へ:92話と93話は元々1つの話だったのですが、3000文字を超えていたので、読者様が読む気が失せると思い、はじめて分断してみました。


 ★☆★☆


 秋山時雨あきやましぐれ視点


「ふぁああ。」


 寝ていると急に眼が覚めてしまった。何故かしら?


 スピースピー(ZZZ)


 隣には、寝息を立ててぐっすり眠っている夫のグレンがいる。


 仕事が忙しいみたいで、ここ最近碌に眠れていない。爆睡だわ。


「しぐれー」


 寝言で私のことを呼んでいる。あらやだ。子供みたいで可愛いわ。


 しばらく夫の頭を撫でていると、時計が視界に入った。


「まだ夜中の2時じゃない。」


 そこで気が付いた。まだ夜中の2時だということに。


 6時に起きて朝食の準備をするまでに、まだ時間がある。


「二度寝しましょう。」


 再び眠りにつこうとしたけれど、何故か眠れない。


 何か胸がざわつく。第六感?いえ本能と言えば良いのかしら。


 何かは分からないけれど・・・


 



 ・・・



 なんちゃって。気のせいよね気のせい。



「何を考えてるんだろ私。第六感だなんてあるわけー」



 ギチ



 ギチギチ



 階段の軋む音が聞こる。その瞬間ー


「やっぱりいる!」


 私は急いでベッドから飛び降りた。


 階段は、ゆっくりと上った時に体重がかかり、軋んで音が鳴るように細工してある。


 つまり、誰かがゆっくりと二階に駆け上がって来てるということ。


 。だってあの子が夜中に起きるだなんて、一度も無かったから。


「夜中にコソコソ階段を駆け上がるだなんて。怪しいわね。」


 私は確認することにした。眠そうな演技をしてから寝室から出る。


「誰かいるの?」


 階段の方に声を呼びかける。


 すると乱れる気配が2つ。それで私は確信したわ。不審者が2人もいるという事実に。


 片方はと、もう片方はがする。


(おかしいわね。片方の気配がシンジに似ているわ。違う所と言えば、目的の為ならば殺すことさえ躊躇しない。そんな所かしら。)


 と言っても所詮、気配は気配。殆ど私の勘のようなもの。


 だからもう一度確認してみることにした。


「シンジ。返事をしなさい。一体そこで何をしているの。」


 すると片方がピクリと反応した。


 そして一瞬だけだったけれど、赤い長髪が階段から覗くのが見えた。


 その事実から


(夜中に女性の侵入者?)


 なんで?夜中にコソコソ移動する理由はなに?


(シンジの寝室からは気配を感じない。つまり寝ているか、もしくはいないかのどちらか。そして、目的の為ならば躊躇しないその気配は一体.....)


 まさか!


(。確定ね。もう片方は女性ということ!)


 確信したわ。これは


「やっぱりシンジなのね!それともう一人誰かいるのね!」


 声が聞こえるわ。シンジと女性の声。


 さっきから階段のほうで、何かコソコソ喋っているのが聞こえる。


(何を言っているのか全く聞こえないわね!)


 私は移動して聞こえる距離まで、少しずつ移動することにした。


 するとー


「もう正直に言おうよ。マスターの部屋でこれからすることを。」


「しょうがないだろ。こうでもしないとー」


 シンジと女性の会話が聞こえる。


(やっぱり!これから部屋で性行為する満々なのね!私の予想は当たってたわ!そして女性にマスター、つまりご主人様と呼ばせていることから、SMプレイをするに違いないわ!)



 私は戦慄した。


 いきなりハードなSMプレイからするだなんて!


 シンジってSだったのね。意外だわ。肉食系だったなんて。


 彼女いないって言ってたのに・・・


 まさか!あの娘はセフレということなの!?


 それなら辻褄が合うわ。だってあのこ結構モテるんだもの。彼女いないはずがない。


 それにグレンも昔女遊びが酷かった。やっぱりあの人の血を継いでいるだけのことはあるわ。


 これから自分の部屋であんな事やこんな事をするのね・・・


 って駄目よ駄目。絶対にダメ。声が響くじゃない!絶対近所の人に声を聞かれるわ!


 その声で仕事で疲れているグレンも起きるかもしれない。


 それだけは駄目よ!


 だから私は少し怒ってしまった。何で言ってくれなかったの?


 言ってくれれば手配したのに!上手くが出来たのに!


 なかなか出てこない2人にイラついて


「もう!一体さっきから何をコソコソしているの!」


 私は痺れを切らし、すぐそこまで近づくことにした。


 すると


「分かったよ。言えばいいんだろ言えば!ちゃんと事情を説明するよ。」


 シンジの声が聞こえた。女性に話しているみたいね。


「もういい加減にー」


 なかなか返事をしないシンジにイラついて歩く速度を速めると


「久しぶり母さん。」


「え?....」


 私の目の前に知らない大人の男性が出てきた。


 シンジにそっくりな顔・・・


 あと数年成長したらこうなる、とでも言えば納得するくらいにそっくりな。


 無駄な筋肉がない、筋骨隆々の色気が凄い男性だった。


「あなたは.....一体.....」


 私はシンジだと思っていた。


 だから驚き、その場で硬直してしまったのだった。

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