82話 潰えた希望

 その場で闇魔法を発動させる。


 収納していた3人の死体を出した。


 胴体に風穴のあいた狂歌。


 頭部が切断された美香。


 上半身と下半身が切断されたサラ。


「ようやくだな.....」


 3人のむごい姿を数百年ぶりに見て、殺された瞬間を思い出す。


 獅子王に無残に殺されていった光景を。あれから既に300年経っていることを。


 だが、もう大丈夫だ。今すぐに復活させてやる。


「300年間待たせて悪かったな。」


 3人を魔力で包み込み


「蘇生魔法『復活リザレクション』」


 魔法を発動させた。暖かな光が3人を包み込む。


 3人の傷口が塞がり、離れていた身体が戻っていく。


「よし。」


 後は目が覚めるのを待つだけだ。




 ★☆★☆


 魔法は成功した。


 暫く待つが何も起こらない。まだ寝ているのだろうか。


 はやく起きてくれないだろうか。今すぐにでも抱きしめたいんだ。



「おーい狂歌。起きろ。」


 狂歌の身体を揺さぶるが起きない。



「おーい美香。まだ寝ているのか?」


 美香の身体を揺さぶるが起きない。



「おーいサラ。起きてくれ。」


 サラの身体を揺さぶるが起きない。



「どうなっている。何で誰も起きないんだ。」


 3人を揺さぶっても目覚める気配が無いのだ。


 それどころか、まるで動かない。


 異変を感じて【解析】をすると



『3人の損傷した身体を修復させることに成功しました。しかし、為、蘇生は中断となります。』



「嘘.....だろ.....」



 その解析結果に驚愕する。既に消滅している?中断?



 怒りがわいた。


「ふざけるなぁぁぁぁぁ!いったい今まで何のために頑張ってきたと思っている!」


 その現実を、到底受け入れられるモノではなかった。


「300年。300年だぞ。その結果がこれか!」


 だから


「今までの俺の努力何だったんだ!」


 その場で


「ふざけるな。ふざけるなよ。あの時から既に詰んでいたとでも言うのか!」


 怒鳴り散らした


「俺が『獅子王』に負けたからか!」


 じゃないと心が


「俺が弱かったからか!」


 壊れそうだったから。




 ★☆★☆


 3人に抱き着き別れを言った後、闇魔法で収納した。


 両膝をつき、絶望する。


「俺....俺.....頑張ったのによ.....」


 今までの努力が無駄だった事に気付き、目から涙がとめどなくあふれ出る。


「無駄だったのかよ......寿命まで削ったのに......」



 目からハイライト消える



 僅かな望みが



 僅かな希望が潰えた



 その瞬間



「【捕食】暴走解放」



 モウドウデモヨクナッタ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る