73話 南の最果て 大火山
読者様へ:6話と7話のセリフ一部変更しました。キャッチコピーが変更した理由です。読まなくても今後影響はないです。ご安心ください。気になった方は是非。
▽△▽△
「マスター。褒めて褒めー」
「良くやったエレnー」
黒狼から人型狼に戻る。
エレナが嬉しそうに、こちらに近づこうとした瞬間、意識を失い突如地面に倒れた。
全身を闇に包まれたエレナは、グニャグニャと形を変えながら空中に浮かんでいる。
「これが進化する過程か。後は見守る事しか出来ないな。」
俺は、その場で見守る事にしたのだった。
★☆★☆
??分後
「お?変化が起きたな。」
エレナを見守っていると変化が起きた。
グニャグニャと形を変えていた闇が動きを止め、硬化し始めた。
卵のような形となり、巨大化していく。
「俺の時も同じ現象が起きていたのか....」
改めて、自分が進化する時どのような状態であったか理解する。
ピキピキ
卵にヒビが入り始めた。
ピキピキピキ
ヒビが入った個所を起点にドンドン広がっていく。
ピキピキピキピキ
ヒビが全体に広がっていきー
パリィィン
卵が割れた。
中からドロドロした、赤黒い液体が全て流出していく。
「おいエレナ!」
卵の中は空だ。空洞となっている。
「まさか進化に....失敗した.....のか?」
エレナの姿は一切見当たらない。
「おいエレナ。返事をしろ。」
足元の赤黒い液体に話しかけるが反応は一切返ってこない。
「嘘だろ。」
(一人で『朱雀』と戦えって言うのか?これでは予定と大分異なるぞ。)
その場で茫然とするシンジ。
すると後ろで液体が集まりだした。
(マズい。考えろ俺。どうするどうするどうするー)
必死に頭を働かせ、最適解の答えを考える。集中のしすぎで周りの変化に気が付かないシンジ。
液体は人型へと収束していき、人間の姿となる。一糸まとわぬ、18歳くらいの赤黒い髪の美女へと変化した。
「マスター。」
そのまま片足をつき、考え事をしていると誰かに抱き着かれた。後ろを振り向くと全裸の美女が抱き着いていた。
「ッーー!誰だお前。」
後ろから当たる2つの柔らかい物に一瞬気を取られるが、すぐさま離れる。
(誰だこいつ。いつの間に現れた!?)
「酷いなマスター。私エレナだよ。忘れたの?」
自分の事を指さしながらエレナだという赤黒い髪の美女。
警戒しながらも美女の顔を見つめる。するとエレナの面影があることにシンジは気づいた。話し方も一緒だという事に。
「本当にお前エレナなのか。」
もう一度確認するシンジ。
(随分と変わったな。10センチ以上身長が伸びた。それに胸が無かったのに、いつの間にこんな立派な物が。)
「もう酷いな。忘れるなんー」
「無事で良かった。」
(これで何とか『朱雀』を倒すことが出来る。)
エレナに抱き着き、無事で良かったと本気で言うシンジ。
「そ、そんなに心配してくれてたの?」
「当たり前だろ。大事な仲間だからな。お前がいないと駄目なんだ。」
真剣な眼差しでエレナを見つめる。こいつがいないと共闘出来ないからな。
「マ、マスター///」
赤面し、嬉しそうな顔を浮かべるエレナ。
「それとだな。言いずらいんだが服を着てくれないか。正直目のやり場に困る。」
衝動的に抱き着いたが、今更になって気付く、エレナが全裸だという事に。
すぐさま離れ、後ろを向く。
「あ、本当だ。いつの間にこんな物が。」
自分の胸を触り、確かめるエレナ。魔力で服を作りすぐさま着替えていく。
後ろを振り向くと、エレナは鏡で自分の姿を確認していた。
「ちょっと私、色々と変わったね。」
どこか子供っぽかった印象のエレナの姿が、完全に大人となっていた。妖艶な美女と言ったところか。
「それでエレナ。お前は玄武の体内で、結構吸収したから能力の殆どを奪えただろ。」
「奪えたよ。【物理攻撃無効】に【物理攻撃無効貫通】に【魔力攻撃無効】に【魔力攻撃貫通】。それと【状態異常無効】と【状態異常無効貫通】ね。」
「良くやった。じゃあ俺が玄武の残りを喰うからな。」
「分かった。」
少し残念そうな顔をするエレナ。
「あんまり寂しそうな顔をするな。戦いが終わったら飯でも食いに、人間界に連れて行ってやるからよ。」
「え、でも.....」
「大丈夫だ。300年経ってるが、まぁ何とかなるだろ。」
エレナの無事を知り、安心した俺は玄武を喰らう事にした。
「違うの....人間界は...もう.....」
小さく呟いたエレナの声は、その場でかき消されるのだった。
★☆★☆
黒狼になり、玄武の血肉を喰らっていく。
「【物理攻撃無効】の能力を獲得しました。」
「【物理攻撃無効貫通】の能力を獲得しました。」
硬い甲羅を無理やり噛み砕き、飲み込む。
「【霊装】の能力を獲得しました。」
「【龍装】と【霊装】が統合され、最終派生【神装】となりました。」
地力が更に増し、新たな能力を手に入れることが出来た。
(もう300年もの間、この能力を使ってなかったな。きっと鎧を纏う能力なのだろう。)
数百年使っていなかった事を思い出す。この能力を見るたびに、狂歌達を思い出すからだ。
(そろそろ使うべきだな。)
そう決めるシンジであった。
★☆★☆
エレナを背に乗せて移動する。
「そういや、巨獣になって種族どうなったエレナ。」
「えっとねー。
「そうか。そのまま進化したんだな。」
思い出しながら答えるエレナ。
(そう言えば、なんで俺は『黒狼』なんだ?やはり魔人薬でグレイブの血が使われていたからか?それとも本人を喰らったからか?)
冷静に物事を考える。
(まぁいい。もう進化してしまったんだ。考えてもしょうがないだろう。)
その後、7日かけて北の最果てから南の最果てに移動した。
目の前には、火山地帯がある。
中央の大火山から流れ出たマグマが、周囲に広がり、音をたてながらグツグツと煮えたぎっていた。
「最終決戦だ。気を引き締めろよエレナ。」
「分かった。」
俺達は『朱雀』の縄張りに足を踏み入れるのだった。
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