63話 手負いの獣
絶叫が響き渡る落とし穴に近づく。
そこには全身を、土魔法で作った針で貫かれている白虎がいた。
大量に出血をし、片目と片足をを失っている。
近くには、眷属達が白虎に押しつぶされ死んでいた。
きっと落ちる瞬間に身をていして守ろうとしたのだろう。
仇となったようだが。
「おいおい。駄目だろ?自分の子供を殺すなんてよ?」
「ユル....サナイ」
相手が不快に思う口調で喋ると、白虎に低い声でそう言われた。
自力で落とし穴から抜け出し、身体を再生させる白虎。
もう魔力は感じられなかった。きっと今ので力を使い果たしたのだろう。
「モウ...ドウナッテモ...イイ【覇気-命削】全力解放...」
周囲に濃密な殺気を放つと、白虎は全身から膨大なオーラを纏い始めた。
白かったオーラが少し黒く濁っている。絶望した証だろう。俺と同じだ。
(やっと使ってきたか。)
「【覇気】【傲慢】全力解放。」
青黒いオーラを全身に纏う黒狼。
少し安堵する。最後で絶望し、ようやく最後の奥の手を使ってくれる気になったからだ。
今まで卑怯な手で相手を怒らせ、絶望させた。
判断力を鈍らせ、最後に自分がどうなってもいいと思わせるためだ。
でなければこの技は使わない。生命力を持続消費して使う技だからだ。
覇気を手に入れた時に、この技の使い方が頭の中に流れ込んできた。
(いつか使うことになる力だ。使い方と効果を教えてもらわねば困る。)
そう思っていると、白虎が攻撃を仕掛けて来た。
未来視で数手先を読み、全ての攻撃を回避する。全てを躱していると、白虎の息切れが激しくなってる事に気付いた。
(やはりか。)
このまま使用し続けても、いづれ寿命まで消費して死ぬだろう。
この技は、命を対価に削ってエネルギーに変換する奥の手だからだ。
「もう大体分かったな。【捕食】【強欲】全力解放。」
相手の覇気を全て喰らい、能力を強制解除させる。
力を奪われ、地面に倒れる白虎。息切れをしまくっている。もうギリギリだったのだろう。
「悪かったな。呪爪-
鉤爪に呪詛魔法を纏わせ、
黒狼は一思いに白虎の首を斬り飛ばし、絶命する巨獣。ようやく倒せた。
今回の作戦は危なかった。
地力が上の相手だ。眷属が弱点であったため、上手く抑え込むことに成功して弱らせることが出来た。
弱点を予め知っていたから成功した。
もし冷静な判断を途中でされていたら、俺の作戦は上手く行かなかっただろう。
眷属を無視して攻撃されていたら苦戦していただろう。
奥の手が予想以上の効果であれば俺は死んでいただろう。
こちらが上手く戦えていたのは弱点の情報があったからだ。
だが、次からはそう簡単にはいかない。
黒狼は白虎を捕食すると膨大な力と能力を奪うことが出来た。
「【眷属】を獲得しました。」
「【指揮化】を獲得しました。」
「【覇気-命削】を解禁しました。」
人型黒狼になり、考え事をしていると
「マスター。お疲れ。」
後ろから抱き着いてくるエレナ。
どうやら戦闘が終わったとふんで来たようだ。
「マスター戦闘中凄く悪い顔してたよ?人質取りながら戦ってたし。」
「ああ。外道のフリをする必要があったからな。やる分には楽しいが、はたから見るといい気分じゃないだろ。」
外道戦法は良くないだろうと正直に答えるシンジ。
「え~?そうかな。私はいいと思うけどなー。」
腕を組み、首をかしげるエレナ。
「あっ。あの落とし穴から美味しそうな匂いがするー。マスター食べてもいい?」
目をキラキラさせてシンジを見つめるエレナ。
「好きにしろ。」
その返事で直ぐに落とし穴へと向かった。
白虎の片足と眷属を吸収するエレナ。
あっという間に消化された。
「ふ~。美味しかった。」
お腹をさすりながら落とし穴から出てくるエレナ。
「マスター。次の標的は誰なの?」
「次は『青龍』だ。」
シンジは悪い顔でそう告げるのだった。
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