第三章 魔界突入編

41話 インタビュー

 四天王最強のダルファーを倒し、捕食した。


 手に入れた力はすさまじかった。


 前の比じゃないくらいレベルアップしたと実感する。


 王級に進化し、魔力量が上昇した。


 それと同時に


「ぐっ。」


 いきなり膨大な量の記憶が流れ込んでくる。


 アルフォースの時とは比べ物にならないほどの痛みだ。


 脳がパンクしそうになった。あまりの情報過多に脳が痛みを訴える。


 頭を片手で押さえ、その場で倒れそうになるのを踏ん張って耐えた。


「あなた?どうかしました?」


「シンジ君?」


「兄さん?」


 全員心配そうな顔でこちらを見てくる。


(何で捕食したのに平気そうな顔をしてるんだ?)


 全員何とも無い様子で、涼しい顔をしていた。


「記憶が流れ込んできてないのか?」


 シンジンとする頭を片手で押さえながら、全員に尋ねた。


 言っている意味が分からないのか、全員不思議そうな顔をしている。


「兄さん。一体どういうことですか?」


 代表してサラが答えた。


 その一言で察した。


 


「いや。何でもない。家に帰ったら話すよ」


(脳が膨大な記憶をまだ整理できてなくて、今説明できる状態じゃないからな。)


 俺は、砕け散ってしまった刀の残骸を集めて闇魔法の異空間に収納した。


 そうして俺らは上空で待機していたヘリに乗って、ヒーロー協会東京支部まで向かってもらうことにした。


 行きは急ぎだったため全力で飛ばしていたが、討伐は完了した。


 そのため、帰りはゆっくりと飛行して貰った。


 全員疲れてたのだろう。


 戦闘での緊張感が消え、疲れがどっと来たのかみんな寝てしまった。


 かくいう俺もウトウトしてしまって途中で寝てしまったが。


 ドンッ


 着陸した振動で起きた。


「んあ?俺いつの間に寝てたんだ?」


 目をこすって眠気を覚ます。


 どうやらもう東京支部についてしまったようだ。


 寝ていた全員を起こして、出る準備をする。


 ヘリのプロペラ音が止まったので、扉を開く。ヘリの運転主にお礼をしてから出た。


「1階までエレベーターで降りるの面倒だな。」


 眠くて今すぐに帰りたかった俺は、3人を【触手】で捕まえて、屋上から飛び降りることにした。


「え?あなた!いきなり何を-」


「ちょっ。シンジ君まっt-」


「に、兄さんまさk-」


 突然捕らえられてビックリする3人。


 俺が屋上から飛び降りるのに気づいて、止めようとしたがもう遅い。


 もう既に一歩を踏み出してしまったのだから。


 重力に引かれて屋上から落下する俺たち。


「「「きゃああああああああああああ」」」


 三人の悲鳴が響く。


 悲鳴を聞き上を見る人達。


 指をさして『おい、誰か飛び降りてないか?』と言う大勢の人たち。


 カメラを持ってる人たちが大勢いた。いわゆる報道陣ってやつか。


(ヒーロー協会に誰かお偉いさんでもくるのか?)


 自分には関係ないので、気にしないことにした。


 落下地点はちょうど協会の入り口付近だ。


 地面にたたきつけられる直前に【操糸】の魔力で糸を作り、勢いを殺した。


 空を飛んで帰っても良かったが、魔物に間違われて攻撃されるのも面倒だったため、走って帰ることにしたのだ。


 3人を解放し、いざ帰ろうとすると報道陣大勢に囲まれてしまった。


 カメラをこちらに向け、色んな人達にマイクを向けられた。


「インタビューお願いします。」


「今回の相手に苦戦していたようですが、どうでしたか?」


「スマイルお願いします。」


「後ろの女性3人とはどういう関係ですか?」


「何故魔物を食べているのですか。」


「年齢17歳とのことですが、本当ですか。」


「変身お願いします。」


 などなど一斉に声をかけてきた。


 いきなりのインタビューに全員戸惑ってしまった。


 何かを話すまでここから帰してくれるような雰囲気では無い。


 皆が一斉に何個も質問をしてくる。


(適当に何とか質問に答えてさっさと帰ろう。)


 そう心に決め、適当に何個か質問に答えることにした。


 女性陣は一切答える様子が無いからな。


「なぜ両目の色が違うのですか?髪の色も出撃前とは違うように見えますが。」


「ああ。片目はさっき戦った竜から奪ったもんだ。俺は元々は碧眼だ。そんで髪は分からん。変身解いたらこうなっていた。」


 近くにいた男性の質問に答えた。


 周りは返答したものに急いでメモをしていた。


「何歳ですか?調べによりますと17歳であり、元は高校生であったとか。」


「元高校生であり、元人間だ。年齢もあってる。」


 今度は近くにいた女性に聞かれたので答えた。


 周りはこの回答にざわついた。


(この程度の情報もうどうでもいい。王級に進化したからな。人間はもう俺には勝てない。政府やヒーロー共が捕獲に来ようが、余裕で返り討ちに出来る。)


「では、元人間とおっしゃいましたが、何故魔物となったのですか?」


「魔物に復讐するためだ。何の力も持ってなかったからな。


 底冷えするような低い声が出た。自分でも驚いた。まさかこんな声が出るとは。


 その一言で周りは一気にシーンと静かになってしまう。


(ん?何でいきなり黙るんだ?)


 そう不思議に思っていると、狂歌にトントンと肩を叩かれた。


「怖い顔してるわよあなた。みんな怯えてるわ。」


 知らないうちに周りを怖がらせてしまったようだ。


 誰も一言も発さない。誰もが息を飲みこんでいる。


「悪いもう質問はいいだろ。」


 気まずくなった俺は3人に合図をしてその場から一気に加速した。


 魔力で身体強化して、目に見えぬ速さで街中を走った。


 数分もかからず、家に帰宅することが出来た。


 全員風呂に入り、そのあとはすぐに寝た。


 寝ている間に、流れ込んできた記憶が整理され、なぜ先代の王を裏切ったのかが分かった。


 グレイブは魔王になっただけでは満足せず、


 


 青い鱗をもつ巨大な東洋のような龍『青龍』


 常に羽が燃えている巨大な不死鳥『朱雀』


 黒の縞模様のある巨大な白い虎『白虎』


 巨大な亀に尻尾が蛇の『玄武』


 絶対に手は出してはならない相手に、攻撃を仕掛けようとしていた。


 その内の1体を怒らせただけで、大変なことになる。


 誰にも手は付けられない。


 もし怒らせてしまえば、相手の怒りが収まるまで理不尽な災害に耐えるしかないのだ。


 命の危機を感じた幹部達はグレイブを裏切ったということだ。


(いや、悪いのあんただったのかよ。)


 そう思ってしまうシンジであった。

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