第271話
「もう危険な事はやめて欲しいです」
「………」
当たり前だけどそう言うよな。
でも、このままノーネームを野放しには出来ない。
警察に任せて置けばいい話しなのかもしれないけど、俺は晴郎がなんであんな事をしているのかが気になっていた。
「もう警察に任せて下さい。お願いします」
「……ごめん、それは無理だよ」
「なんでなんですか? また撃たれる危険だってあるんですよ!?」
「……敵の親玉が昔仲良かった奴なんだ」
「そうだったんですか」
「あぁ、そいつ昔は優しくてな……知りたいんだ、何があったのか……」
「でも! 今度は命を落とすかもしれないんですよ!」
「かもな……あんな物が出てきた以上、もう子供喧嘩じゃすまない」
ノーネームの裏にヤクザが居るのは恐らく間違いない。
あの佐崎とか言う男が実質あのチームをまとめているのかもしれない。
だから拳銃なんて物を所持出来たのかもしれない。
「昔竹内さんに言われた事があったんだよ……」
「え……」
「関係ない、自分は知らないって逃げて良い時とそうでない時がある。その見極めが出来るようになれって……多分今は逃げちゃダメなんだよ」
「で、でも……」
「心配してくれてありがとう。でも俺行くよ」
城埼さんは今にも泣き出しそうな顔で俯いてしまった。
そんなの当たり前だ。
俺だって逆の立場だったら悲しくなる。
「……返事」
「え?」
「なら行く前に返事を下さい! 島並さんは私の事どう思ってるんですか!!」
「………」
ずっと保留にしていた城埼さんへの告白の返事。
俺は城埼さんをずっと道場の後輩として見てきた。
素直で明るくて、礼儀正しくて、でも俺が何かすると叱ってくれる。
こんないい子に好かれて俺は幸せ者なのかもしれない。
でも……俺は城埼さんの事を妹のようにしか思えなかった。
「……城埼さんのことは良い子だと思ってるよ。でも……ごめん。やっぱり付き合うとかはまだ考えられない」
「……そうですか」
気まずい空気が俺と城崎さんの間に流れる。
「じゃぁ、退院の手続きがあるから」
「……」
俺は城埼さんにそう言って談話室を後にした。
恐らく俺のやっていることは最低なのかもしれない。
こんな良い子の気持ちに応えようともせず、再び危険に飛びこもうとしているのだから。
*
「昔?」
「うん、僕が他人に微塵も興味が無い時だよ」
病室で俺は倉敷さんと話しをしていた。
倉敷さんが来た理由は恐らく俺が怪我をしたことについてだろう。
そんな倉敷さんになんでこんな事をしたのかと俺は問い詰められていた。
「そんな話今はどうでも良いのよ! とにかくこれに懲りたらもうチームには関わらないように……」
「それは無理かな」
「なっ……なんでよ! また痛い目に合いたいの!?」
「合わないよ、今度は本気で行くから」
「そんな強がりでどうこうなる問題じゃ……」
「するよ」
「え……」
「しないと君が苦しむんだろ? それに僕の親友がまだやる気でいるしね」
僕はそう言いながら荷物をまとめる。
恐らく倉敷さんの意見が正しい。
もうこんな事に首を突っ込まない方が良いのはよくわかってる。
それでもあのまま終わりっていうのは嫌だった。
ただの負けず嫌いなのは分かっている。
それでも僕は心の中でなんとなく、この件は僕が片付けないといけないのだと思ってしまった。
「心配してくれてありがとう。終わるまではまだ時間が掛かるけど、もう少し待ってね」
「待ってよ! また痛い目に合うかもしれないのよ! アンタ馬鹿なの!? なんで他人の為にそんなに頑張れるのよ!」
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