第256話
*
「この部屋を使ってくれ、部屋の物は何を使っても良いから」
「アンタの家って随分広いのね」
家に帰ってきた僕は倉敷さんに家を案内していた。
僕の家は恐らく他の一般住宅よりも広い。
庭もあるし、家は塀で囲われていてガレージもある。
高校生の僕でもうちが裕福な事くらいは嫌でも分かる。
「この部屋はなんの部屋なの? 使ってない見たいだけど、ベッドにテレビまで……」
「うちは来客が多いから家を作る時に父さんが来客者の宿泊用の部屋を作ったんだ。父さんの職業上朝晩関係無く働く知り合いも多くてね、そういう人達の仮眠スペースも兼ねてるみたいだよ」
「なるほどね……そう言えばさっきのお姉さんはお手伝いさん? 随分慣れ慣れしかったけど」
「いや、母さんだけど?」
「え!? どう見てもまだ30代前半って感じだったけど!?」
「あぁ、母さん若く見られるからな、飯はどうする? 食うなら母さんが用意してくれるっていってるけど?」
「いや、もうファミレスで食べたから大丈夫よ。お風呂だけ借りて良い?」
「あぁ、案内するよ」
風呂場まで案内し、俺はそのまま父さんの部屋に向かった。
「父さん、入るよ」
「あぁ……」
父さんは机に座ってパソコンを見ていた。
家に帰っても仕事をするのはいつもの事だ。
しかし、休む時にきちんと休むのもこの人の良いところだ。
そのため僕が生まれてからの数十年間は病気をしたことがないらしい。
「彼女のお兄さんだが、かなり重症らしい。まだ目も覚ましていないらしくて、集中治療室からも出られないそうだ」
「そっか……調べてくれてありがとう」
「気にするな、ノーネームについては警察も調べを進めていたんだ。彼女の保護と情報を得られることはこちらには得しかない」
「前の総長……倉敷のお兄さんが総長だった時は特に犯罪行為は無かったの?」
「あぁ、それどころか周囲からの評判は良かった。不良でありながら迷惑行為をせず、ひったくりの逮捕協力、通り魔の逮捕協力など警察に協力していた点が多い。まぁ、無免許運転は数件報告されていたが……」
「問題は今の総長になってからってわけだね……」
「あぁ、この例の薬もノーネーム内部で流通しているらしい。警察もノーネームの総長から聞きたいことは山ほどあるから本腰を入れて取り掛かるつもりだ」
「またあの薬絡み……一体誰が何の為に……」
「分からないが、恐らくこの間の柳の家にいたヤクザ達が絡んでるとみて間違いないが、あそこにいた奴らは全員下っ端だった」
「厄介な事件だね」
「あぁ、正直警察だけでは手に終えないことも多い。島並さんと竹内君にもいざとなったら応援を要請しようと思っている」
「あの二人が出るほどの相手なの?」
「あぁ、私はそう思っている。いざとなれば私も久々に剣を振るわねばならん」
「僕と平斗は?」
「お前たちはまだ未成年だ。柳の件はお前たちも深く関わっていたし警察も待機させていたから二人で行かせたが今回はそうは行かない」
「……まぁ、そうですよね」
「今回は大人に任せなさい。まだこの前の傷も癒えていないだろう? それに母さんを悲しませる真似はあまりするな、私が叱られる」
「ははっ。鬼の警察署長も家では奥さんには勝てないもんね」
「うるさいぞ、まったく。平斗君にも釘を挿しておいてくれ、あの子も既にこの件に首を突っ込んでいる」
「え? そうなの?」
「あぁ、夕方にノーネームが彼にちょっかいを出したようだ」
「はぁ……全く平斗は何もしなくても厄介事の方から平斗の方にやって来るみたいだね」
「恐らく既に何かを探り始めているかもしれないからな、頼んだぞ」
「分かったよ」
まさか既に平斗もノーネームに関わっていたなんて。
まぁでもそれは時間の問題だったかもね。
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