第254話
どうやらこの二人と倉敷は面識があるようだ。
一体どんな繋がりが?
まさかこいつら……。
「お前らまさか……ノーネームの……」
「はい、一員でした」
「でも、今は違います、あんなの……もうノーネームじゃない」
「なるほど」
何となく分かった。
恐らくこいつらは倉敷の兄貴が総長だった頃の構成員なんだ。
倉敷を姉さんと呼んだのもそう言うわけだろう。
「あ、そうだ姉さん! マンション前にあいつらがいます! 今日はあそこに帰らない方が良いです」
「あいつら……とうとう私の家にまで……」
「このままじゃ姉さんが捕まるのも時間の問題です! 何処かに身を隠した方が……」
「……でも、そんな場所」
「じゃぁ、僕の家くる?」
「え?」
僕がそう言うと倉敷さんはポカンとした顔で僕を見ていた。
「なんでアンタの家なのよ! 嫌に決まってるでしょ」
「でも、知り合いの家じゃ見つかっちゃうんじゃない? どうやらかなり本気で君を探しているみたいだし」
「……そうだけど……」
「良いですか? 貴方はこの件には全く関係ない! 貴方に危害が及ぶ可能性だって……」
「そうです! 貴方がいくら強くても今のノーネームにはとても……」
後から来た二人は僕にそんな心配をする。
しかし、うち以上に安全な家は他にはないと思う。
なんたって警察署長の家だ。
手を出したくても後が怖くて誰も手を出さない。
それに万が一そんな輩が来たとしても恐らく父さんが片手で片付けてしまう。
「心配ないよ、僕の父さんは警察署長だし、それに一応家にもかなり厳重なセキュリティー対策がされてる。多分事情を話せば父さんも母さんも倉敷を受け入れてくれるよ」
「それはありがたい!」
「そこなら安心ですね!」
「ちょっと待ちなさいよ! 私はまだ行くなんて一言も……」
「姉さん! 状況をよく考えて下さい!」
「今姉さんに何かあったら、兄貴が目を覚ました時に俺達は兄貴になんて言えば良いんですか!?」
「今は我慢して下さい! 姉さんのためなんです!」
「……わ、わかったわよ」
お?
意外にすんなりだな。
もしかしてメンバーの声には弱いのか?
ノーネームか……これは少し面倒なこになりそうだけど……。
「平斗にはいう訳にはいかないな……また首を突っ込みたがるから」
まさかと思うけど、もう既に巻き込まれてたりして?
そんな分けないか……平斗には少し休息が必要だ。
それにまた何かあったら彼女達が心配する。
「とりあえず行こうか」
「……変な事しないでよ」
「するわけないだろ? そんな事をしたら母さんに殺されるよ」
「よろしくお願いしますっす!」
「俺達はまた何か動きがあったら連絡します!」
「うん、お願い」
僕は二人と連絡先の交換を行い、倉敷さんを連れて自宅に帰った。
ちなみに二人の名前は左山(さやま)と右川(うかわ)というらしく、倉敷とはもう5年の付き合いらしい。
家に連れ帰る前に僕は父さんに電話して簡単に事情を説明した。
『なるほど……』
「うん、それで泊めてあげたいんだけど」
『構わん。市民を守るのが警察官というものだ、準備をしておくから早く帰って来なさい』
事情を話すと父さんは直ぐに了承してくれた。
流石は父さんだ。
しかし、倉敷さんは終始警戒していた。
「アンタのお父さん警察署の署長なの?」
「まぁね、だから僕の家は安全だよ」
「良いわね……いいお父さんで」
「……少し気になってたんだけど倉敷の両親は?」
「もうかなり前にお金だけ残して死んじゃったわ」
「……ごめん」
「謝ること無いわよ、事実だし」
聞いてはいけないことを聞いてしまったと僕は反省した。
何となく察しはついていたけど、まさか本当に死んでいるなんて。
これ以上は深く聞かないようにしよう。
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