第253話

 彼女がなぜ狙われているかが分かった。

 これを聞いて彼女を放っておくなんて真似は出来ない。

 それに平斗だったら何も聞かなくてもこの子を助けるだろう。

 だけどこの子も頑固そうだからなぁ……なにか協力する理由が無いと協力すると言っても断られるのがオチだろう。

 うーん……どうしたら……。


「何じーっと見てるのよ。悪いけど私アンタみたいな自分の顔に自信持ってるタイプのイケメンって嫌いだから」


「別に自信は持ってないんだけどな……」


 しかもどうやらあまり俺の事を良く思ってないらしい。

 でも、この子の事は放っておけない。

 自分一人で何とかしようとしている所が平斗そっくりだからだろうか?

 僕たちはとりあえず運ばれてきた料理を食べて店を出た。

 一人で返すのは心配だが、送って行くよと言っても気持ち悪がられるだけだろうなぁ……。

 だからって背後をストーキングしていく訳には行かないし……あ、そうだ。


「じゃぁ私コッチだから、もう私に関わらない方が良いわよ」


「あ、ちょっとまって」


 僕はそう言ってその場を去ろうとする彼女の腕を掴んだ。

 何?

 と聞いてくる彼女に僕はすかさず笑顔でこういう。


「もう少し君と話したいから、送って行くよ」


「え……」


 メチャクチャ嫌そうな顔された。

 やっぱりだか、言い方に癖がありすぎたかな?


「キモイ、言ったでしょ? 私に関わらない方が良いって」


「いやそうだけど、話しを聞いてはい終わりなんて出来ないよ」


「アンタまであいつらに何されるか分からないわよ? それに助けてくれなんて言ってないわ」


「でも……心配なんだよ」


「……何? 私の身体でも狙ってるの? 残念だけど助けて貰ったくらいで身体差し出すほど安い女じゃないから」


「だから別に見返りとかどうでも良くて……」


「そんな分けないでしょ、昨日今日会ったばっかりなんだから」


 ごもっともな意見だ。

 まぁ普通考えたら疑うよなぁ……でもこの子を一人にするのは危ない気がした。

 不良から狙われているというだけでも心配だが、それよりも自分一人で何とかしようとしている所が更に心配だ。

 助けを求めないで自分で何とかしようとする方が危ない気もする。

 

「そうだけど、また襲われたら大変だろ?」


「別に大丈夫よ、自分でなんとかするから……」


「一人で抱え込んだら大変だよ、少しは誰かに頼らないと」


「それでなんでアンタに頼るのよ、もう行くから、あんまりしつこいと警察呼ぶわよ」


「そ、それは困る……」


 この町の警察官なんて皆知り合いみたいなものだし、それは困る。

 仕方ない、今日のところは引くか……なんて事を思った矢先だった。


「おい! てめぇ何してやがる!!」


「姉さんから離れやがれ!!」


「あ、アンタたち……」


 どうやらまた不良がやって来たらしい。

 仕方ない、軽くあしらって帰るか……なんて思いながら声のした方を振り向くと……。


「ん? お前どっかで……あぁぁぁ!!」


「あ、貴方は!!」


「え? あぁ……えっと誰?」


 何やらやって来た二人組の不良は僕を知っている様子だった。

 僕を見るなり声を上げ、そして頭を下げてこう言った。


「いつぞやは助けていただきありがとうございます!」


「こうしてまた会うことが出来て嬉しいです!!」


「え? え? ごめんマジで誰?」


「俺ですよ! 金で雇われて、アンタを襲おうとした!」


「僕を襲おうとした……あぁ……もしかしてフードの……」


「そうっす! あの時は本当にありがとうございましたっす!」


 ようやく思い出した。

 そうだ、こいつらは高柳家と柳家の事を調べていた時に柳家が雇っていたヤクザが使っていた二人組の不良だ。

 しかし一体どうしてここに?


「まさか姉貴と知り合いだったなんて」


「姉貴、この方です! 俺達を助けてくれたべらぼうに強い人は!」


「え? あ、アンタが……」

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