第83話
「言った通りだろ、あのアホはあんな感じでな……俺の事を先輩だなんて思ってないんだ」
「そ、そうですかね……なんかその……すごく仲が良いようにも見えます……」
「あいつが俺を馬鹿にしてるだけだよ」
俺はそう言いながら、ドリンクバーのウーロン茶のボタンを押す。
あのアホにはコーラとアイスコーヒーをミックスして持っていってやろう。
「あ、あの……大丈夫ですか? その飲み物……」
「大丈夫、あのアホは味覚もアホだから」
これで少しは気も晴れる。
なんかいつにも増してあのアホは横暴だし。
何が気にくわないんだか……。
「さて、じゃあこのコーラを持って戻るか」
「ほ、本当に大丈夫ですか?」
「問題ない、大丈夫だ」
俺は内心で初白がこのドリンクを飲んだ時のリアクションを想像しながら、少しウキウキ気分で席に戻った。
「おらよ」
「すいません先ぱ~い、ありがとうございまーす」
初白はそう言って、俺からコップを受け取りそのままコーラ(コーヒー入り)を飲んだ。
「んぶっ!! せ、先輩!! な、なんか入れました!?」
「あはは、どうだ? 俺のオリジナルブレンドは美味かったか?」
「や、やってくれましたね……」
「嫌なら自分で行けよアホ」
「もう!! 先輩の意地悪! 変態!!」
「いや、最後の一言なんでだよ……」
俺と初白がそんな事を言いながら二人でじゃれ合っていると、向いに座っている城崎さんと高弥がジーっとこちらを見ていた。
「な、なんだよ高弥」
「いや、相変わらず仲がいいなぁ~って」
「どこがだよ」
「え? 仲良しじゃないですか先輩」
「お前は黙ってろ」
アホかこいつ、なんで好きな男に別な男と仲がいいなんて言うんだよ。
マイナスポイントにしかならないだろ。
俺がそんな事を思いながらふと城崎さんの方を見ると、城崎さんはなんだかつまらなそうな顔で取って来たドリンクを飲んでいた。
まぁ、こんなアウェイの空気で楽しそうにするのが無理か。
「あ、あの……その……聞いても良いですか?」
「え? どうかした? 城崎さん」
そんな空気の中、城崎さんは俺に向かってそう言ってきた。
「あの……お二人は付き合ってるわけじゃ……無いんですよね?」
「「はっ??」」
思わず初白と声が重なってしまった。
「いやいや、城崎さん勘弁してくれよこんなアホ」
「はぁ? 私だって先輩なんて嫌ですごめんなさい」
「なんで俺に言うんだよ、俺が振られたみたいになるだろうが」
「付き合うなら、城崎さんみたいな子の方が良いよ」
「え!?」
「む……」
俺のその言葉に城崎さんは顔を赤らめ、初白のアホは面白くなさそうな顔で俺を見ていた。
「だってそうだろ? 素直で気遣いの出来る後輩の方が可愛く見えて当たりまえだ」
「私だって可愛い後輩じゃないですか!」
「先輩にドリンクを取りに行かせるようなアホは可愛い後輩と言わない」
「む~」
「痛い痛い、やめろ」
俺の言葉がさらに気にくわなかったのか、初白は頬を膨らませて俺の顔をつねる。
「もう、先輩の馬鹿」
「なんでだよ、はぁ……同い年でこうも違うのかね……」
「むぅ~ぅ~!」
「だから痛いっての!!」
初白は更に俺の頬を強くつねって来た。
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