第77話
「私も違うと思ってるわよ……そうじゃなかったら、私達なんて助けてくれないだろうし……私だって島並先輩に感謝してるから」
「きっとあの人にも何か理由があるんだと思うけど……自分から何も言わないって事は、言わないんじゃなくて言えないんじゃないか?」
「なんだよ、言えないって」
「お前は相変わらず馬鹿だなぁ、本当のことを話したら何か別に問題が起こるからだろうが! 少しは考えろ!」
「あぁん!? なんだとコラァ!」
「はぁ……この二人は……」
香奈はため息を吐きながら、悟と大島の様子を見ていた。
*
「ごめん……私のせいで……」
私は同じクラスの初白蓮華に向かってそう言った。
あの事件の翌日の朝の事だった、私はあの事件に巻き込んでしまった彼女に謝ろうと、彼女を校舎の裏に呼んだ。
何を言われても仕方が無いと私はそう思っていた。
でも、彼女は笑顔で私にこう言った。
「無事で良かったよ」
その瞬間、私は思わず顔を上げ彼女に尋ねた。
「な、なんでそんな事を言うの!? わ、私は貴方を!!」
「まぁ……島並先輩から色々聞いたけど……終わった事だし、終わった事をあれこれ言うのもなんか面倒だし……もうそう言うことしないんだったら、私はもうそれでいいよ」
自分を守る為に他人を犠牲にしようとした。 そして……結果的に私は危険な目に会った。 私はきっと罰が当たったんだと思った。
人を見下し、陰口を言って、噂を鵜呑みにして……そんなダメな私に神様が罰を与えたのだと……。
でも、そんな私を助けてくれたのは見下していた先輩で……私を許してくれたその子は私が陰口を言っていた子だった……。
そんな二人に私は救われたのだ。
私は今までの自分の行動が恥ずかしくなった。
私は自分が酷く醜く思えた。
「これからは仲良くしようよ」
そう言って、彼女は手を差し出した。
その瞬間、私は肩の上に乗っていた重たい重しが取れたような気分だった。
私は涙を浮かべながら、彼女の手を握った。
*
「えっと……ここは……」
「ねぇ、蓮華」
「何? 香奈ちゃん」
「テスト勉強に必死なのは分かるけど……なんでそんなに頑張ってるの? 最初は赤点さえ回避出来ればそれで良いって言ってたじゃない」
私が自分の机で勉強をしていると、同じクラスの篠崎香奈ちゃんが尋ねてきた。
「あぁ……実はちょっと……全教科60点以上取らなきゃいけなくなって……」
「え!? 蓮華が!? 絶対無理でしょ!!」
「いや、そこまで驚かなくても……」
「な、何があったの? 親? 親から何か言われたの?」
「いや、うちの親は別に点数については何も……」
「そ、それもそれで問題だけど……じゃあ、なんで急に?」
「うーん……60点以上取ったら、島並先輩が噂の事を教えてくれるって言ったから……ちょっと頑張ってみようかなって……」
「え!? 島並先輩の!?」
私がそう言うと香奈ちゃんは勢いよく、私にそう言ってきた。
「そ、それ本当なの!?」
「ま、まぁそうだけど……やっぱり香奈ちゃんも気になる?」
「まぁ……正直もうあの人が噂通りの人とは思えないから……真実を知りたいとは思うけど……一番知りたいのは多分悟や大島君辺りだと思うわ」
「そうだろうね、でも……これは私と島並先輩の約束だから、教えて貰っても香奈ちゃんたちには言えないかな?」
「まぁ、そこは仕方ないわよ……あんな噂を流されてるのに訂正しないって事は、よっぽどの理由があるんだろうし……」
「そうだよね……」
島並先輩の過去……それが分かるかもしれないと思うと、私は嫌いな勉強を頑張る事が出来た。
いままでずっと知りたかった島並先輩の秘密を知る事が出来るチャンスなのだ。
これは、なんとしても全教科60点以上を取るしかない。
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