「幼稚園決定」 2015年11月9日
横浜市にある幼稚園はほとんどが私立で、おそらく全ての幼稚園で、毎年10月15日が募集要項の配布開始、11月1日が面接と入園可否の決定がなされる日になっている。
ハルも無事、入園許可をもらった。
半年くらいの道のりだったが、結構な紆余曲折だった。
今年の3月頃、プレ幼稚園というものがあるから行った方がいいんじゃないか?と妻に促され、幼稚園探しを始める。
保育園に入るときには妻が一生懸命見学に行って探していたので、手を抜くわけにはいかない。
手始めにWebで調べてみると、4月の下旬頃からプレ幼稚園がいくつかの園で始まる。
住んでいる区内には13個の園がある(区役所のHP上)が、それぞれどんな幼稚園か知るために、まずは幼稚園のHPを探す。意外にもこのご時世でHPが無い幼稚園も多い。HPやネットでの口コミを見て、園の遊び場が充実していそうなところをピックアップすると、5園に絞られた。
そもそもプレ幼稚園は、およそ一月に1、2回くらいお遊戯をしたり、リズム体操をしたり、粘土で遊んだりというお遊び会を開いてくれて、親子でそれに参加する。
園によって参加費がかなり異なり、一回ごとに500円くらいのところもあれば、初期費用で10000円かかるところもある。
実は前科のあるハル。
4月中旬から参加した区のスポーツセンターでの体操教室(5000円也)では全10回のうち4回でリタイア。
行くたびに大泣きして、無理やり体育館に連れて行ってもすぐに帰ろうという始末。
自由遊びの時間は楽しそうに遊ぶけど、みんなで体操(音楽に合わせて踊ったりする)となると、壁際族になっていた。
さすがに可哀想だから、5回目からは行かなかった。
プレの参加費は入園した場合、返ってきたり、入園金に含まれていたりして、実質戻ってくる形になっている場合もある。
できるだけ多くの幼稚園の様子を見てみたいけれど、入る幼稚園は1つだけだし、経済事情的にも、前科者ハル的にも、あまりに高いところにはいけない。
ということで、プレに参加したのは2つ。
そのうち一つは、園バスが近くまで来ているが隣の区の幼稚園。
5月になり、1つ目のプレ幼稚園が始まる。
例年よりも参加者が多いらしく(予定の倍くらい来ていたらしい)、教室はパンパン。
その園は教員がクラスの数と同じ程度しかいないようで、園長先生と副園長先生、その日に手の空いている先生2、3人で行われていた。
9月まで全部で5回くらい参加したが、内容によってかなりハルの様子が違った。
体操教室でもそうだったのだけど、ダンスとかお遊戯系がとにかく苦手。
体を動かすことが嫌いなわけじゃなくて、プールの時はすごく楽しそうだった。紙芝居の時間は誰よりも真剣に聞いていた。スライムで遊ぼう、の回の時は、感触に尻込みする他の子をよそに、積極的に遊んでいた。
でも、音楽に合わせてみんなで同じ動きをするのが耐えられない様子だった。なんでこんな意味のないことをするの!?的な。
以前のエントリで妻が書いていたけど、「みんなこんなことやっちゃダメだよ!」という雰囲気すらあった。
以前にも書いたが、妻が一緒にプレに行った日、帰りがけに園長と話をしたところ、教員の数も少なく、全体からはみ出る子どもに十分に付き合ってあげることはできないと言われた。
家からも比較的近く、最近の幼稚園で流行っている、お勉強注力系ではない園だったのだけど、ここはやめることになった。
一方、もう一つ参加したプレ、隣の区の園。
ひと山越えたところにあり、自転車で行くのは結構大変だったのだけど(通園バスあり)、園庭にある遊具が楽しそうで、もしかしたらハルが気に入るかもしれないな〜と思って行ってみた。
ここのプレは一つ目の園と対照的で、かなり多くの先生がプレに出動していた。
参加する子どもは一つ目の2/3くらいだったのに、先生は10人くらい。
人手がたくさんだからか、何をやるにも先生が手を出し、みんなで同じことをやりましょう!やったね1できたね!という強い意志を感じる。
幼稚園に対する我が家の考え方はこれとは違うな〜、ハルには合っていなそうだな〜と感じ、ここもやめた。時系列的には、こっちを先にやめることにした。
ということで、プレ幼稚園に何度か行ったのだけど、9月にして希望の園がなくなってしまった。募集要項配布まで、あと1ヶ月くらい。
困ったのだけど、困っていても仕方がないので、もう一度幼稚園を調べ直した。HPがない園についても、ネット上の口コミなどを頼りに、幼稚園の雰囲気を調べた。
いろいろ調べ直したり、プレでのことやハルのことを夫婦で話しているうちに、我が家が幼稚園に求める事がいくつか明らかになってきた。
遅いような気もするが、そこまではっきりと意向や希望(おこだわり)が決まっている家庭はあまりないのかもしれない。
給食があるかどうか、家から通いやすいかどうか、これはまぁ一般的に多くの家庭でも求めている気がする。
それに加えて我が家は、子どもに対する強制力がどれほど弱いか、マジョリティから外れている子どもに対してどれくらい寛容か。
これらのポイントから、新たに候補の幼稚園が2つ上がった。
1つは自転車で10分くらい、園バスもありそうなところ。
しかも月から金まで毎日給食!給食センターから配給の園もあるが、ここは給食室があってあったかいご飯が食べられるらしい。口コミでは、かなり自由な園とのこと。
後でわかるが、口コミ上の『自由』っていうのは、カリキュラムがあまりなく、自由遊び時間が豊富である、ということのようだった。我が家が求めている自由とは少し違う。
我が家は、集団行動の時でさえ自由が守られているかが重要。
ハルと遊びに出掛けたついでにパンフレットをもらいに行き、たまたま直後に行われた運動会に参加してみた。
この時点では、希望が持てた。園によっては、すごく行事に力を入れていて、先生が張り切りすぎて子どもを統制しているようなところもあると思う。
それに対して、全体的なグダグダ感というか、子どもの統制がイマイチだったのが好印象だった(笑)
運動会の次の週に公開保育があり、風邪をひいた父ちゃんの代わりに母ちゃんが行ってくれた。
その結果、残念ながら期待していたよりも全員前倣え的だったようだ。
絵が印刷されている紙を切って、糊で貼り付けるという工作の時間だったようだが、作品においても、作業においても、あまり自由さがない様子だったようだ。
全員が同じ材料で、先生が言った通りの順番で、同じ作品を完成させる。
作業の早い子は、次の指示まで手はお膝。
そう、我が家が求めているのはこういうところの自由度なんだ。
言う事を聞ける、指示に従える子どもになっていくことは、全く悪いことではないと思う。
むしろ、親にとっても、幼稚園や学校の先生にとっても良い子どもなんだと思う。
そうすればきっと仲間から外れることもなく、楽しく少年期を過ごしていけるのかもしれない。
だけど、親の偏見かもしれないけれど、それはハルの特性を押さえつけてしまう、自由で面白い彼の芽を摘んでしまうような気がしてならない。
こういうこと(幼稚園を選んだり、遊び道具を与えたり、習い事をさせたり…)は、答えがあることじゃないし、やり直しも効かないし、結局は親のエゴだったという可能性もある。
だけど僕は、仕事を辞めて1年間、ずっと一緒に過ごしてきた。すごくハルにとって苦手だった公園や遊び場での他の子との交流も、だいぶできるようになってきた。
大人のいうことはなかなか聞けないけど、子ども同士なら何とか遊べるようになってきた。
大人が笛を吹いて何かをさせるんじゃなくて、子ども同士の軋轢の中から社会性を身につけていくことならできるんじゃないか。
僕は彼の良さを1番か2番に知っている。
幼稚園が人生においてどれくらい影響を与えるのかわからないけど、ハルに合ったところに通わせてあげたいなとあらためて思った。
最後に残った幼稚園は、隣の区(プレで行ったところとはまた違う区)にある園。
二人乗りだと自転車で25分くらい。
給食はない。
もう募集要項配布まで時間がなく、慌てて園庭開放と説明会に参加したのだけど、ハルは、この園だけは不思議と嫌がらなかった。
園長先生や園の動物に会いたがっていて、その後も連れて行くのが楽だった。
広い園庭。
教員の数は、一つ目のプレの園の倍近い。
特に年少クラスは手厚いようだ。
行事にも無駄な力を入れておらず、普段の生活と結びつけて行事を行う方針のようだ。
みんなでやっていたことから外れて面白いものを発見した子どもに耳を傾け、注目してくれるゆっくりな雰囲気。
お勉強をやることはなく、自然の中から身を持って学ぶ。
子ども同士で役割、立場、ルールが作られ、それを守ったり破ったりして、成長していく。
そんな幼稚園。
父ちゃんは覚悟を決めました。
説明会の時にもらった入園のための提出書類に、ハルの特徴をいろいろ書いた。
せっかくだからここに残しておく。
「お子さんの良いところ」
場所見知り、人見知りをしない。考えがはっきりしており、自分の気持ちを表現し、伝えることができる。色々なことに興味を持ち、自分の知っていることを結びつけて考えられる。想像力があり、自分で工夫して遊べる。
「日頃の遊びの様子」
外では動植物を見つけ拾ったりし、家では粘土、ブロック、ミニカーなどで遊ぶが、どの遊びも物語をつけて「ごっこ遊び」にしている。時々、一人で自由気ままに遊ぶ時間が必要な様子。子ども同士の遊びも少しずつ上手になってきた。
「発育上、気になるところ」
・食物アレルギー(鶏卵、魚(鮭など)。加熱した卵は1/2個程度まで摂食可。)
・動物アレルギー(犬、モルモットで発疹・蕁麻疹が出たことがある。)
・オムツが取れていない。着替えや靴の着脱もまだ部分的にしかできない。
「家庭での教育方針」
自然や道具などを体験させ、驚き、興味を持つ機会を多く与える。自分で考え表現する力を身につけて欲しいので、本人の意思を尊重している。強制する時も、理解できるような説明を心がけ、本人の主張もなるべく説明させている。
「本園に対する希望」
子ども同士の自然な関わりの中で、社会性を身につけて欲しい。その関わりの中で、他人を真似ることで人から学び取ることも覚えて欲しい。プライドが高く、失敗を避ける傾向があるので、困難に挑戦して乗り越える喜びを知って欲しい。
あらためて、ハルがどんな人なのかわかったし、子どもを通して親である自分がどういう人間なのかもわかった気がする。子は鏡だ。
書類を書き、11月1日、面接に臨んだ。朝、7:50に園庭に並び面接の登録をする(15分前に着いたが、真ん中くらい。順番は合否には関係ない)。
帰り際に、「面接にはお母さんも来られるのですか?」と副園長に声をかけられる。
顔を合わすのは2回目だけど、覚えてくれていたようだ。
面接時間が決まり、一度家に帰り妻と3人で再び幼稚園へ。
朝はジーパンにパーカーだった親たちも、面接ではチノパンにジャケットくらいになっていた。このラフさ気軽さもこの幼稚園の特色なのだろうな。
待っている間も、他の子と遊んだり、本を読んでもらったり、いたって順調。
この園に来た時は、いつもお利口。波長が合うのだろうかね。
最初は親子と先生とで簡単な知能テスト。
積み木を並べたり、絵を見て質問に答えたり。全部ちゃんと答えられたが、終わる頃には飽きてしまい、「違う遊びがしたい」と席を立ってしまうハル。
その後、面接で集まった子ども達と先生だけで遊ばせている間、親と先生の面接。
上に書いた書類を見ながら、いろいろお話。
親が喋りすぎなのか、ハルが特徴の多い子なのか、同時に始まった5組くらいの面接だが、我々だけだいぶ遅れて終了。
子ども達で遊んでいた様子を見ていた先生には、早速ハルの特徴を言い当てられる。
園に入る上での誓約書に、医療機関や施設などにかかったほうが良いと判断した場合…という項目で強く念を押されたような気がする(3年後、ナツのときにも同じやりとりをしたので、ハルだから特別だったわけではないことが後でわかった)。
何はともあれ、発達に問題はないとのことで、入園が許可される。
まだ入園したわけではないけど、ほっと一安心。
今住んでいるところから通うのは大変なので、賃貸契約の切れ目で近くに引っ越すことになりそうだし、課題は残っているけれども。
僕的には半年間も悩みの種だったし(他に心配することないんだけどね)、何よりも、たぶん横浜で一番(今となっては日本で一番って思ってる)ハルに合った幼稚園を選ぶことができたことが良かった。
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