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第455話 F級の僕は、転移門の向こうで意外な人物と再会する
第455話 F級の僕は、転移門の向こうで意外な人物と再会する
6月18日 木曜日6
ターリ・ナハとララノアの『奴隷の首輪』の“処理”を終えたユーリヤさんが声を上げた。
「レヴォーヴィチ! ジアーナ!」
彼女の声に応じるように、駐屯軍から選抜されて同行してくれているあの重戦士と魔導士の二人が、ユーリヤさんの前に進み出て臣礼を取った。
ユーリヤさんが、州都モエシアの城門前に通じているであろう転移門を指差した。
空間の揺らめきの向こうには、西日に照らし出された半壊した城壁が、魚眼レンズを通したように見えている。
「先程と同じく、まずあなた達がこの向こうを調べてきなさい」
「は!」
「お任せ下さい!」
二人は立ち上がると、そのまま転移門の方へと進み……
しかし途中でいきなり立ち止まると、武器を手に身構えた。
「殿下!」
レヴォーヴィチと呼びかけられていた、壮年の重戦士が、緊迫した声を上げた。
「向こう側から、何者かがこちらを
その場の全員が一斉に武器を抜いた。
僕も腰に差していたヴェノムの小剣(風)を抜き、転移門へと視線を向けた。
レヴォーヴィチの言葉通り、確かに何者かがこちらを覗き込んでいる!
覗き込んでいる者の詳細を確認しようと、僕は慎重に転移門へと近付いた。
覗き込んできているのは、黒いローブを
なんだかどこかで会った事があるような……
記憶の中を探ろうとした時、隣に立つユーリヤさんが
「まさか……マトヴェイ殿?」
と、空間の揺らぎの向こう側から老人の姿が消え、代わりに今度は複数の兵士達の姿が現れた。
皆、規格化された感じの銀色の甲冑に身を固めている。
レヴォーヴィチの隣で杖を構える、駐屯軍から選抜された若い女性の魔導士、ジアーナが戸惑ったような声を上げた。
「殿下、どうやら向こう側からこちらを覗き込んできている者達は、
冒険者の一人が口を開いた。
「装備品だけでは判断できないぞ。
どうするべきか判断がつきかねているらしいユーリヤさんは、難しい顔をしてじっと考え込んでいる。
僕はユーリヤさんに
「僕が向こう側、見て来ましょうか?」
「えっ? タカシさんが?」
「さっき、最初にこちらを覗き込んできていたのって、マトヴェイさん、でしたよね?」
「そう見えただけで、見間違いの可能性も……何しろ、私がマトヴェイ殿から魔法の初歩を教わったのは、初等教育の一時期だけでしたから」
「実は僕もあのご老人、マトヴェイさんじゃないかなって思ったんですよ。僕はほら、
「ですがあなたは私達の
「でしたら……」
僕は今思いついた事を話してみた。
「ユーリヤさんに、一筆書いてもらえないですか?」
「一筆? 何をですか?」
「マトヴェイさん宛てに、転移門を
ユーリヤさんの顔が険しくなった。
「それを持って、タカシさんがこの転移門の向こう側に
「違いますよ」
僕は彼女の言葉を優しく
「僕はほら……」
話しながら、【影分身】のスキルを発動した。
僕の影の中から、【影】が一体、出現した。
「こういうのを呼び出せるので……」
突然出現した【影】にぎょっとした雰囲気になっている周囲の人々に、身振りで大丈夫だという事を伝えた後、僕は言葉を続けた。
「ユーリヤさんの書状、この【影】に持って行ってもらおうかと。僕の【影】、言葉は話せないのですが、
「なるほど。分かりました」
ユーリヤさんがにっこり微笑んだ。
「さすがはタカシさんです。やっぱり頼りになりますね」
「別に大した事、提案していないですよ」
数分後、ユーリヤさんが
直後、【影】が攻撃されるのが感知出来た。
向こうからすれば、正体不明の転移門を潜り抜けて出現した“黒い影”。
なので僕は、【影】には相手を無力化するに
果たしてしばらくすると、【影】に対する攻撃が
そして僕の【影】が、誰かに書状を渡すのも感知出来た。
残念ながら僕が【影】を通して感知出来るのは、【影】が取った行動、或いは【影】に対して加えられた行動のみで、【影】の周囲の状況を、例えば感覚を共有して詳細に感知――具体的に相手の容姿を“見たり”、言葉を“聞いたり”――するという事は不可能だ。
ともあれ、【影】にはマトヴェイさんに書状を渡すように指示してある。
つまり、【影】が何らかの手段で
そしてその答えは、程なくして判明するはず。
十数秒後、【影】が転移門を
そして【影】に続くようにして、一人の老人と数人の兵士達が、こちら側にやってきた。
こちら側に降り立った兵士達は、直ちに老人を護るような位置に移動して、武器を身構えた。
僕は【影分身】のスキルを停止してから、その老人に呼びかけた。
「マトヴェイさん!」
僕に気が付いたのであろう、険しかったマトヴェイさんの表情が
「タカシ殿! 随分変わった伝書鳩をお使いのようですな。お陰で少々肝を冷やしましたぞ。ところで……」
きょろきょろ辺りを見回していたマトヴェイさんが、ハッとしたような顔になった。
「で、殿下!?」
ユーリヤさんの表情も
「お久し振りです、マトヴェイ殿」
マトヴェイさんが
「書状には確かに殿下のサインが御座いましたが、まさか本当にいらっしゃるとは……」
「私も色々ありまして……それよりマトヴェイ殿」
ユーリヤさんが、今しがた、マトヴェイさん達が
「あちら側の状況、教えてもらってもいいですか?」
「分かりました。実は……」
ゴルジェイさんはマトヴェイさんと共に、直ちに手持ちの中隊200名と戦闘奴隷達20名を率いて、州都モエシアに向かった。
しかしその途上で、
またその過程で、州都モエシアに相当数の
そのため一旦兵を引き、近隣に駐屯する帝国軍に
属州モエシアの総督、グレーブ=ヴォルコフと、州都モエシアに滞在していたゴルジェイさんの兄であり、総督の次男でもあるメレンチーが共に安否不明な事。
ゴルジェイさんの兄であり、総督の長男でもあるソゾンは
ゴルジェイさん自身は、武人としてそれなりに評価が高かった事。
そうした
数千を超える兵力の確保に目途が付いた一昨日、ついに満を持してゴルジェイさんは州都モエシアに向けて再び進軍を開始した。
そして今日の午後、ついに州都モエシアに到着した。
「我等が到着した時、既に奴らは街の中心部に結界を張り、
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