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第389話 F級の僕は、98層のシトリーと戦う
第389話 F級の僕は、98層のシトリーと戦う
6月17日 水曜日3
僕とティーナさんが富士第一98層のゲートキーパーの間に足を踏み入れると、大広間の奥の薄暗がりの中から、何者かが滑るようにこちらに近付いて来た。
その何者かは、僕等から20m程の距離で立ち止まり、すっかり耳慣れた名乗りを上げた。
「我が名はシトリー。ニンゲン、我に挑むか? その傲慢、
シトリーと名乗ったゲートキーパーは、豹頭獣身、二本足で立ち、背中には鷲のような翼を生やしていた。
関谷さんがこの場に居ないからであろう。
昨日と違って、ティーナさんがゲートキーパーにイスディフイ語?で呼びかけた。
「我が名はティーナ。シトリーに問う。汝らゲートキーパーの存在理由を我に示せ」
シトリーが少し驚いたような声音になった。
「ほう……汝はこの世界の者ではないな? いずこから、いかなる手段にて我等の世界に至ったのだ?」
「シトリーよ、まず我が問いに答えよ。さすれば汝の問いに答えん」
ティーナさんの持つ【言語習得】のスキルが優秀なのか、元々彼女自身に語学の才能が有るのか、とにかく二人の間にちゃんと会話が成立している事に、僕は心の中で舌を巻いていた。
ティーナさんの口調がちょっと芝居がかっているのは、“
シトリーが笑い声を上げた。
「面白い。特別に汝の問いに答えてやろう。
ティーナさんが、僕にそっと囁いてきた。
「今Sitriは、私達に試練を与えるために存在するって言った?」
「僕にはそう聞こえたけれど」
「gatekeeperだからgateを護る事こそ存在意義だと思っていたけれど、Sitriの言葉通りなら彼等はある種の試験官……」
ティーナさんが言い終わる前に、シトリーが重ねて問いかけて来た。
「いかがいたした? 我が問いに答えぬのか?」
ティーナさんは少し考える素振りを見せた後、言葉を返した。
「異世界人たる我も、汝を討ち斃せば汝らの創世神Ereshkigalの御許に至る資格を得るや?」
シトリーがやや苛立った様子で答えた。
「問いに対し問いで答えるとは、さては時間稼ぎが目的か?」
シトリーが腰に差していた長剣を抜いた。
「汝は創世神様の御許には至れぬ」
そして凄まじい速度で僕等との距離を詰めて来た。
「しかし安心せよ。汝の恐怖と絶望を汝に代わって、我が創世神様の御許に届けてやろう」
言葉と同時に凄まじい
―――ガキキキン!
しかしその攻撃は、ティーナさんが僕も含めてあらかじめ展開していたらしい
シトリーが飛び退いた。
「フェイルノート召喚……」
僕の左手の人差し指に
僕はフェイルノートの弦を引き絞った。
「死の矢……」
MP100を代償に、黒く禍々しいオーラを
僕はシトリーの胸元目掛けて死の矢を放った。
しかし……
―――バキ!
死の矢はシトリーに届く寸前で、何かには阻まれ砕け散ってしまった。
ティーナさんが囁いた。
「どうやらSitriも魔法結界では無いtypeのshieldを展開しているわ」
「そのシールド、破壊出来ない?」
ティーナさんが珍しく困った顔になった。
「Takashiを護るshieldを展開維持しないといけないから、現状、あいつのshield破壊に回せる余力が無いわ。物理攻撃で破壊出来る可能性も有るから、まずは攻撃してみて」
「了解」
僕は腰に差していたヴェノムの小剣(風)を抜いた。
そしてティーナさんのもとを離れると、【隠密】状態になって、シトリーに迫った。
そのままシトリーの首筋を横薙ぎに斬り払おうとした瞬間、シトリーは背中の翼を広げると、信じられない速度で上空へと舞い上がった。
当然、僕の攻撃は空を切った。
どうやら【隠密】状態の僕の姿が見えている?
諦めた僕は、MP消費を強いる【隠密】を解除した。
そして右耳の『ティーナの無線機』を通して、後方に陣取るティーナさんに囁いた。
「オロバス召喚しようと思うんだけど、オロバスごと
『It's a piece of cake!』
僕はインベントリから『オロバスのメダル』を取り出し、右手で握り締めた。
―――ヒヒヒーン!
六本脚の凶馬、オロバスが出現した。
オロバスは、短時間なら地上50m程まで舞い上がる事が出来る。
急いでオロバスに跨った僕は、上空に浮かぶシトリー目掛けて舞い上がった。
しかしシトリーに肉薄しようとしたタイミングで、僕を包み込む
シトリーの攻撃?
だとしても、ティーナさんの
僕は物体の存在を無視して、強引にシトリーに迫ろうとした。
しかしそれを阻むかのように、突然
雷撃の嵐に視界を奪われた僕は、シトリーの姿を見失ってしまった。
どうやら先程のプラズマ状の物体がこの攻撃に使用されている?
ならば、まずは周囲に配置されているプラズマ状の物体を排除しないと……
僕はヴェノムの小剣でプラズマ状の物体に斬りつけた。
しかし、物体は、実体を伴っていないのか、剣は何の手ごたえも無くすり抜けてしまった。
ならば……
僕はヴェノムの小剣(風)を振り回した。
小剣から1回あたり、僕の今の知恵のステータス――エレンの祝福の補正を受けて
その攻撃はすり抜ける事無く、プラズマ状の物体に命中したけれど、まるでダメージを与えた感じがしない。
ティーナさんの囁きが届いた。
『Takashiの周囲のplasmaは風属性よ。同じ風属性の攻撃を加えても効かないわ』
魔法の知識に乏しいから知らなかったけれど、とにかく僕の行為が無意味だという事だけは判明した。
僕は小剣を振り回すのを停止した。
「このプラズマ、排除出来ないかな」
『ごめんなさい。今、自分自身とTakashiとを護るshieldを個別に操作しているから、あんまり余力無いの。風の
水属性の攻撃手段……
僕はインベントリを呼び出してみた。
しかし、水属性云々以前に、魔法攻撃出来そうなアイテム自体を持っていない事を、再確認出来ただけだった。
「ごめん。持っていないよ。ところでティーナの方の状況は?」
『私の方もTakashiと同じ。plasmaに
「もしかして、水属性の魔法使用出来るの?」
『残念ながらその答えはNoよ。自分のshield周囲の時空を歪めて排除しているんだけど、排除する端から補充されているわ』
う~ん、困った。
このままでは切りがない。
本当ならいつもみたいに【影】を呼び出して攻撃させたいんだけど、
そして当然ながら僕の【影】は空を飛べない。
と、急に一ヵ所だけ視界が開けた。
視界の向こう、トンネル状にプラズマが排除された先に、ティーナさんの姿が見えた。
どうやら彼女が“時空を歪めて”僕との間に回廊を作ってくれたようだ。
彼女が僕に向かってこっちに来るよう合図をするのが見えたのと同時に、彼女の囁きが届いた。
『一度撤退しましょ。私の所まで戻って来て』
仕方ない。
なんだかグダグダになってしまった感もあるけれど、シトリーがどんな攻撃手段を持っているか判明しただけでも良しとするべきだろう。
ティーナさんと無事合流出来た僕等は、ティーナさんが開いたワームホールを潜り抜けて、僕のアパートの部屋へと撤退した。
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