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第277話 F級の僕は、ティーナさんに大いに責められる
第277話 F級の僕は、ティーナさんに大いに責められる
6月8日 月曜日7
「ティーナ……」
呼びかけるとすぐに返事があった。
『Takashi、今夜もgatekeeperのlesson受けに行く?』
「その事も含めてちょっと相談したい事が有るんだ。今からこっちに来られないかな?」
『OK』
すぐに僕の部屋の一角の空間が渦を巻くように歪みだした。
そして出現したワームホールを潜り抜けて、ティーナさんが僕の部屋にやって来た。
今から富士第一97層のゲートキーパーと戦うつもりだったのだろう。
彼女は既に銀色の戦闘服に身を固めている。
「それで相談したい事って?」
ティーナさんに今の状況を説明しようとして、僕は少し考えた。
今の状況を言葉で説明すれば10分、いや20分はかかるかもしれない。
確かティーナさんって、数日分の記憶も僅か数秒で読み取る能力を持っていたはず。
ならば、今日一日の僕の記憶を彼女に見せれば、時間も話も早く済むのでは?
「ティーナって、僕の記憶覗けるんだよね?」
ティーナさんの目が細くなった。
「正確には“覗けた”、よ」
「なんで過去形?」
「ふふふ、今のTakashiはstatus値が高過ぎて、能動的に記憶を覗く事が出来なくなっているの」
「そうなんだ……」
「ま、あなたが協力してくれるなら、つまり、“大切なgirlfriendに僕の全てを見せてあげたい”って願ってくれるなら、多分覗く事出来ると思うけど?」
おどけた感じのティーナさんの言葉に、僕は思わず苦笑した。
「つまり、僕が進んで見せようと心を開けば、覗けるって事?」
「ま、そんな感じかな」
「じゃあ今日一日分の記憶見せるよ。その方が話早いと思うし」
「今日何か変わった事でもあったの?」
「だからそれを見せてあげるよ」
ティーナさんが、僕の右手を取ってきた。
彼女の温もりが、右手を通して伝わってくる。
「目を閉じて心をrelaxさせて」
言葉通り、目を閉じて、心を落ち着けてみた。
と、ふいにティーナさんが僕の手を離した。
もう記憶見終わったって事かな?
僕が目を開けると、なぜかティーナさんの表情が冷たくなっていた。
少し引っ掛かりを感じたものの、僕はとりあえず聞いていた。
「記憶、覗けた?」
ティーナさんは頷いた。
「Yeah……でもこれはどういう事?」
ん?
なんかティーナさんの機嫌が急に悪くなっているぞ?
もしかして、正体不明の魔道具に、不用意に魔力込めて南半球に転移しちゃった事を、
「どういう事って言われれば、言い
「せめて言い訳位はするべきじゃない?」
「これからは気を付けるようにするよ。それで状況、分かってもらえたと思うんだけど、色々準備しなきゃいけないんだ。だからそれを……」
「準備って……何の?」
「だから色々買ったりとか……」
……って、え?
なんだろ?
ティーナさんの表情の冷たさがどんどん増していく。
今や彼女は表情だけ見れば、完全に氷の女王と化していた。
「……どうしたの?」
「どうしたの? じゃないでしょ? つまりTakashiは明日に備えて、彼女に何か色々買ってあげて、それをpresentしたい。その事について、自分のgirlfriendに相談しようとしているってわけね?」
明日からの移動に備えて、今日中に色々買い揃えたいって言うのはその通りだけど。
別に、ターリ・ナハへのプレゼントってわけじゃ……
「確かに彼女の為に買い揃えたいっていうのはあるけれど、別にプレゼントってわけじゃ無いよ。強いて言えば、生活必需品だし」
「生活必需品!?」
ティーナさんが
「Just a minute、生活必需品を買うって事は……つまり……一緒に暮らすって事!?」
「一緒に暮らすって言うか……夜は一緒にいてあげないと」
ターリ・ナハを【異世界転移】で僕の部屋に呼べない以上、彼女を見知らぬ土地で一人寝かせるわけにはいかない。
加えて、ネルガルでは獣人は軒並み奴隷階級だと言うし、ターリ・ナハが一人で寝ている間に奴隷狩りに拉致されました、ではそれこそシャレにならない。
ティーナさんが額に手を当てて何かぶつぶつ呟き出した。
「Calm down, calm down, Tina……relax, relax……」
「……大丈夫?」
ティーナさんが珍しく怒ったような顔になった。
「大丈夫なわけないでしょ!? 確かにもう少し物分かりの良い女になるとは言ったけれど、そこまで物分かり良くはなれないんだけど?」
「え~と、なんで怒っているのかよく分からないけれど、とにかくごめん。だけど僕と彼女にとってはどうしても必要な事なんだ」
「酷い……ねえ、私って、もうあなたにとって大事な存在じゃなくなった?」
なんだなんだ?
なんだか、話が随分
それはともかく、僕にとってティーナさんの重要性が低下しているって事は、微塵も無いわけで……
「もちろん君は僕にとって大事な存在だよ。それに信頼もしている。だからこそ、君に相談しているんだ」
ティーナさんがジト目になった。
「じゃあどうして、Sekiya-sanとの同棲生活始める相談、私に持ち掛けて来るの?」
「……はい?」
ティーナさんの言葉の意味を理解するのに、たっぷり数秒の時間を要した僕は、思わず間抜けな声を出してしまった。
「はい? じゃないわよ。私には説明を要求する権利があると思うんだけど?」
「え~と、ティーナは、今日一日の僕の記憶を覗いたんだよね?」
「そうよ。あなたが見せてくれたじゃない」
「その……僕自身、今日の記憶を
「いいわ。論点を一つ一つ整理していきましょ。まずあなたは今日、日付が変わってすぐ、Sekiya-sanと電話で話をした。合っているわね?」
確かに昨夜、というより既に日付が変わっていたから、今日になるのかな?
深夜に関谷さんと電話で話をしたけれど。
「関谷さんとの電話は、明日の夕方、一緒にダンジョンに潜ろうって話だよ?」
「dungeon攻略した後、夕ご飯、彼女の家で御馳走してもらうのよね?」
……言われてみれば、そんな話も出てたっけ?
「それは、作り過ぎちゃったらって話で」
「百歩、いや1億5千万歩譲って、Sekiya-sanの家で手作り料理を御馳走になるところまでは我慢するとして……」
ティーナさんの目が怖い。
これは完全に“
「次! 生活必需品買い込んで一緒に暮らす。少なくとも、夜一緒に過ごそうとしているのよね? そう言うの、日本語で同棲って言うんじゃないの?」
?
確かに夕食を作ってくれるかもしれないのは関谷さんだけど……
「関谷さんと夜一緒に過ごす予定なんか無いよ?」
「自分で言ったじゃない。“夜は一緒にいてあげないと”って」
「それは、ターリ・ナハの話だ」
ティーナさんが一瞬、きょとんとした表情になった。
「TARY NAHA? 誰それ?」
「だから、僕のイスディフイでの仲間の一人だよ。ほら、この前
ティーナさんは、少しの間考える素振りを見せた後、口を開いた。
「思い出したわ。確か、獣人種の女の子よね? で、どうしていきなりここで彼女の名前が出てくるの?」
「それはもちろん、僕と彼女が今、イスディフイで少々厄介な事態に陥っているからだよ。って、僕の記憶、見たよね?」
ティーナさんが怪訝そうな顔になった。
「もしかして今日、isdifuiでも過ごしていた?」
「だからその記憶を見せたつもりなんだけど」
ティーナさんが再び額に手を当てて、今度は天を仰いだ。
「そうか、だからあなたの記憶の所々が欠落していた……」
「欠落?」
「isdifuiに行って帰ってきたのって、日本時間の夕方?」
「そうなるかな。夕方5時位に向こうに行ったし」
「なるほど……どうやらあなたがisdifuiで過ごしたはずの記憶を覗く事は出来なかったみたいね」
記憶を覗けなかった?
僕は以前、エレンが僕に
『多分……手の平を合わせる事で記憶を覗いていた……だけど、パスには干渉しただけ……障壁に阻まれてイスディフイの事までは覗けなかった……』
つまり、今回も僕とエレンを繋ぐパスが、ティーナさんによってイスディフイでの記憶を覗かれるのを“自動防御”したって事なのだろう。
それはともかく、時間短縮のつもりで記憶を見せたのが、ティーナさんの“勘違い”も相まって、とんだ藪蛇になってしまったようだ。
結局僕は、それから15分程かけて、今、僕とターリ・ナハがイスディフイで陥っている事態について、一から説明する羽目になってしまった。
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