【コミカライズ版】最底辺であがく僕は、異世界で希望に出会う~自分だけゲームのような異世界に行けるようになったので、レベルを上げて、みんなを見返します【発売中】
第270話 F級の僕は、深夜に関谷さんと長電話
第270話 F級の僕は、深夜に関谷さんと長電話
6月7日 日曜日5
燐光に照らし出された広間の奥に、身長5mを超える巨人が弓を片手に
鎧も肌の色も緑色のその巨人は、僕等に気付くと、いつもの“名乗り”を上げた。
「我が名はレラジェ。ニンゲン、我に挑むか? その傲慢、
と、ティーナさんが口を開いた。
「Lerajeに問う。汝の
「ほう……」
レラジェが驚いたような口調になった。
「異世界の女よ。汝、
ティーナさんが僕の方を見た。
「まだ理解できない単語がいくつか混ざっているわ。” SOU-SEI-SHIN“って、何?」
「“そうせいしん”は、創世神の事だよ。本来だったら、イシュタルを指すはずだけど、エレシュキガルは、自分こそがイスディフイの創造者で、イシュタルに
話していると、レラジェがいきなり手にした弓に矢を
「我が問いに答えぬか。よかろう。いずれにしても、汝らはここで朽ち果てる
レラジェが僕等目掛けて、黒いオーラを
しかしその矢は、僕等に届く少し手前で、ティーナさんの
ティーナさんが嘆息した。
「今日の
僕は右手にヴェノムの小剣を構えながらティーナさんに囁いた。
「何分縛れそう?」
ティーナさんは少し目を細めてレラジェを見つめた後、口を開いた。
「3時間弱ってとこかな」
「了解」
僕は、ヴェノムの小剣を構えたまま、レラジェに肉薄した。
そしてそのままレラジェを斬り裂こうとして……空を切った。
レラジェが……消えた?
慌てて周囲を見渡すと、いつの間に移動したのであろうか?
10m程離れた場所に、黒いオーラを
ティーナさんの能力で縛られていない?
少し戸惑ったものの、僕はそのまま再度レラジェ目掛けて突撃した。
レラジェが放った矢は、僕が右腕に装着している『エレンの腕輪』が自動発動する
そのまま突き出した剣先に、今度はしっかりとした手ごたえがあった。
―――ドシュッ!
緑の鎧を貫き、青い血が
右耳に装着した『ティーナの無線機』を介して、ティーナさんの声が届いた。
『縛るのにちょっと手間取ったけれど、もう大丈夫よ。後は宜しく』
その後は、呼び出した【影】達と一緒に、いつものように動かない目標を切り刻む事十数分後……
―――ピロン♪
レラジェを倒しました。
経験値7,138,522,733,128,610,000を獲得しました。
Sランクの魔石が1個ドロップしました。
アルクスの指輪が1個ドロップしました。
魔石と指輪を拾い上げた僕が、広間の奥に視線を向けると、いつものようにティーナさんが、
そして僕が彼女の方に歩み寄って行く間に、次の階層へ繋がっていると思われる銀色に揺らめく空間の歪み、ゲートが生成した。
「ティーナ!」
僕に気付いたティーナさんが、笑顔を向けてきた。
「お疲れ様」
「今日もティーナのお陰で楽に斃せたよ」
「ごめんね。ちょっと手間取っちゃって」
「レラジェって、魔法耐性高かったとか?」
ティーナさんが首を振った。
「私の使用する能力は少し特殊だから、魔法耐性が高くても抵抗出来ないはずなの。ただちょっと欠点があってね……Lerajeの持つ能力との相性が悪かったみたい」
「そうなんだ……」
ティーナさんの能力と相性の悪いレラジェの能力について、もう少し聞いてみたい気もしたけれど、そろそろ時間のはず。
「ところで今、何時かな?」
ティーナさんが、右手首に巻いているアナログ時計に視線を向けた。
「日本時間だと、そろそろ9時ってトコね」
「じゃあ、仮眠室に送ってもらえるかな?」
「分かったわ。私はもう少しここで調べたい事があるから、先に帰って」
そう口にすると、彼女は、何も無い空間に向けて右手を翳した。
途端にその空間が渦を巻きながら歪んでいき、ワームホールが生成された。
向こうに、仮眠室が魚眼レンズを通すように見えている。
「それじゃあ、また明日」
手を振るティーナさんに見送られながら、僕はワームホールを潜り抜けた。
…………
……
結局、僕が自分のボロアパートに帰り着いたのは、日付の変わる少し前の時間帯であった。
手早くシャワーを浴び直した僕は、電気を消して布団に横たわると、充電器に繋いだままのスマホに手を伸ばした。
スマホの画面に、チャットアプリに新着メッセージあり、のお知らせが表示されている。
画面をタップすると、関谷さんからだった。
『お疲れ様。斎原さんの記者会見、テレビで見たよ。それと今週はダンジョン、どうする?』
今週のダンジョン……
地球で僕等がダンジョンに潜るのは、ノルマ――1週間に7個の魔石獲得――達成のためだ。
だけど僕の場合、魔石ならインベントリに大量のストックを収納してある。
おまけに均衡調整課の“嘱託職員”は、本来ならば、ノルマは免除される事になっている。
つまり個人的には、地球のダンジョンにこのまま潜り続ける意味はすっかり無くなっているのだ。
しかし……
関谷さんの方は、僕と一緒にダンジョンに潜る事でノルマを達成しよう、と当てにしているかもしれない。
そもそも、こうした形でのダンジョン攻略、
僕の都合で始めといて、僕の都合で、はい、お仕舞いって言うのは、何か違う気がする。
僕は、関谷さんに返信メッセージを送った。
―――『無事帰ってきたよ。今週のダンジョン、関谷さんお勧めの場所が有ったら教えて。ではでは、おやすみなさい』
僕の送信したメッセージは、意外な事に、すぐ既読になった。
そして、関谷さんからのメッセージが返ってきた。
『お帰りなさい。遅かったね』
―――『色々あって、結局帰り着いたのは、真夜中だったよ』
『記者会見でゲートキーパーが消滅していたって言ってたけど』
―――『そうなんだよ。おかげで、僕の方は、一日、のんびり過ごせたけどね』
『今から電話したらダメかな?』
こうしてチャットで文字を打ち込むより、電話の方が話は早い。
―――『いいよ』
チャットアプリを終了するとすぐに、関谷さんから着信が入った。
『こんばんは』
「関谷さん、まだ起きてたんだ」
『うん。って言っても、もうベッドの上だけどね』
「同じく」
『あの……昨日はごめんね。いきなり夕食作って持って行っちゃって。迷惑……だったよね?』
ん?
関谷さん、夜中に電話してきたのって、もしかしてこのため?
「迷惑なわけ無いよ。あんなに美味しい料理食べたのって久し振りだったし」
『中村君ってお世辞上手いね』
「お世辞じゃ無いよ。でも僕の方こそごめん。食事中、ちょっと緊張しちゃって上手く話せなくて」
上手く話せなかったのは、本当は、
『私の方こそ緊張しちゃって。家族以外の男の人に料理作ってあげたの、中村君が初めてだから』
「そうなんだ。関谷さん位魅力的だったら、いくらでも機会有りそうだけどね~」
『私なんて全然。そんな事言ってくれるの、中村君だけだよ?』
「御冗談を」
関谷さん、あの佐藤にも口説かれていたし。
彼女位可愛ければ、絶対僕より恋愛経験値は高いはず。
『あのさ……また作り過ぎちゃったら、持って行ってもいいかな?』
持って来てもらう……
「う~ん……持って来てもらうのはちょっと……」
『そ、そうだよね。ごめんね。ヘンな事言っちゃって』
「あ、でもまた作り過ぎて余っちゃうようだったら、僕が関谷さんの家に取りに行くよ」
『え?』
「汁物は持って帰りにくいかもだけど、タッパー持って行くから、適当に詰めてもらえれば」
これなら、
『……持って帰るのって大変だと思うし……だったら、今度一緒にダンジョン潜る日……ウチで夕ご飯、食べて帰らない?』
「でもそれって、迷惑じゃない?」
『そんな事無いよ! ダンジョンでは、中村君ばっかり頑張っているし、私、護ってもらってばっかりだし、お礼代わりと言うか、やっぱり一人で食べるより、誰かとお喋りしながら食べる方が楽しいし、それが中村君だったら、もっと楽しいと思うし、あ、別に特別な意味があってそういう事言っているわけじゃ無くて……』
関谷さんがなぜか早口になって、最後はしどろもどろになっている。
それはともかく、時間帯にもよるだろうけれど、関谷さんちで御馳走になった方が、使用したタッパー洗ったりって手間が省けて助かるかな?
問題は、一人暮らしの女の子の家で手作り料理御馳走してもらうって事だけど……意識し過ぎるのも関谷さんに失礼かもしれない。
「じゃあ、お願いしようかな?」
『ホント?』
「うん。それととりあえず、潜るダンジョン、希望が有ったら教えてね」
『分かったわ。調べてみる』
「それじゃあ、おやすみ」
『おやすみなさい』
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