小国の王太子、美人だが有能ゆえ男に嫌われる選帝公ご令嬢と結婚する。

作者 モモ

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★★★ Excellent!!!

 唐突にこんな話をするが、自分の支配する領地を持つ貴族や、国の代表者としてロールプレイするようなシミュレーションゲームをやったことはあるだろうか?
 私は苦手だ。
 だって考えることが多すぎるもの。
 自分の国を治めるのだって、食糧、資金、人材、軍備、経済、外交、などなど。
 ゲームの中では、部下はおおむね自分の言うことに従ってくれる前提だが、それらが生きた人間だとそうはいかない。自分の領地の中で様々な問題が起こり、それに対処する必要もある。
 では、そこにさらに、他国や自国、または国をまたいで活動する宗教や組織からの謀略を仕掛けられ、それに対処する必要もあったら?
 無理。
 頭がパンクする。
 じゃあ、自分の頭の中で、それを数か国分考えてねと言われたら?
 ふて寝する。

 しかし、統治者とその周辺の世界を扱うのならば、本来はそれらの要素は無視したくともできないはず。むしろ、貴族や国の上層部の人物を扱う物語であれば、そこが見せ場でもあるのだから。



 長々と前置きを置いてしまったが、今回紹介するこの作品は、その辺りの話をしっかりを書いているので、非常に好印象だった。

 それぞれの事情は、未だすべてを語られていないだろうが、十分に深く考えられていることが序盤の方でもう窺える。

 読んでいると最初の内はいろいろな国や名前が出ているので理解が大変かもしれないが、逆に言えば、それだけ作者がこの世界の設定をしっかり練り上げていることが感じられる瞬間だ。

 特に作中ではその世界での歴史の転換点とも言えるようなタイミングから始まっている。その分、激動の時代を越えようとする貴族や皇太子の軍事、政治的施策や駆け引きが多く必要な中、それを細かに書き、読者をしっかり理解できるようにしているので、面白さが十分に感じられるところが素晴らしかった。

 レビュー主個人の感想としては、「… 続きを読む

Good!

多分ヨーロッパ大陸に似ているナーロッパを舞台にした架空戦記物である。
主人公は病床の父王に代わって摂政を務める小国リューベックの王太子と、彼に嫁ぐ帝国の選帝公女。

舞台となるナーロッパは、歴史上の大転換点を迎えている。
レコンキスタを完了したスペイン改めアストゥリウ王国が、余勢を駆ってフランス改めフラリンを併合し、なおも拡張を志向している。
アストゥリウ王の軍事的天才と常備軍化された精強な軍隊をどう凌ぐかが見どころだ。

政治的背景はかなり作りこまれている。
例を挙げると、
・ヒロインが祖国で婚約破棄されて小国リューベックへ嫁ぐ事情
・アストゥリウ王が領土拡張を続行する事情
・リューベック王国の軍拡事情
などがきちんと組み立てられており、先の展開を予想するのが楽しい。

第1部のハイライトとなる戦闘の描写は、将が行った戦況判断やその背景事情まで描写されている。
常備軍や有能な将軍が無双したりはしていないので、しっかりした戦闘描写が読みたい人でも満足できるだろう。

ただし、文章としては少々難がある。
それほど長くない1話の中で複数回視点移動がある、視点移動先を明示しないまま地の文で一人称を使うなどがあって、読みづらい。
構成の工夫で乗り切れそうな部分なので、今後に期待しよう。