魔女と骨 1

 オレたちは薄暗い遺跡の中にいた。

 ユーリは、緊張と恐怖で震えている。

 最近、この遺跡で“死霊”が徘徊しているとのうわさがあった。オレたちはその真相を探るため、遺跡にやってきたわけだが――。


「そんなに怖いなら、この依頼受けなきゃよかったのに」

 とオレは率直に言う。

「だ、だって……何の実績もない僕が受けられる依頼は、これしかなかったんだよー」

 なんたって薬草採取の依頼で躓くくらいだからなぁ。

 まぁ、死霊なんてもんはいるはずがない。うわさはあくまでうわさだ。この遺跡はさほど大きくないし、一通り見て回ったらギルドに戻って『死霊なんていませんでした』と伝えるだけだ。それでおしまいの簡単な――


 きぃぃ、きぃぃぃぃ。


 奇妙な音が、遺跡の奥の方から聞えてきた。

 ユーリの動きが、止まった。

「も、もももももしかして、死霊?」

「そんな馬鹿な。小動物かなんかだろ。コウモリかも」

「そ、そうかな」

 オレたちは奥に進む。

「暗いな。よっと」

「わぁ。明るい」

 オレは『発光』した。オレがいれば松明いらずだ。調合のスキル持ってたり、発光できたり。オレは何スライムなのだろうか、一体。


「ん? なんだありゃ」

「え?」

 オレは薄闇に蠢く“それ”を発見した。

 “それ”は、ゆっくりと――ゆっくりと、振り返った。

「う、うわああぁぁー!!」

「お、おいユーリ!」

 ユーリは猛ダッシュで走り去った。

 オレはひとり取り残されてしまった。


「お。珍しいな、こんなところにスライムなんて。驚かせてすまんね」

 カタカタと音を鳴らしてガイコツが笑う。

 こいつぁ、驚いた。死者を使役する魔術があることは知っていたが、目の当たりにするのは初めてだ。それとも本当に死霊の類か。だが、悪意のようなものは感じられない。

「アンタが最近巷で噂されている死霊か」

「死霊? おれのことか、それは」

 ガイコツが骨の指で自分を指す。

「たぶんな。それを確かめに、オレたちは来たんだ」

「そうか。そりゃあ、皆に怖い想いをさせてすまないことをしたな。こんなナリをしてるが、おれは人間だ」

「ふうん……ワケアリってことか」

「そう、ワケアリなんだよ、おれがガイコツになって生き続けるのも、この遺跡である物を探し続けているのも」

 話しを聞いて欲しそうだなー。

 まぁ、ユーリもどっかいっちまったし、他にやることもねぇから、オレはとりあえずガイコツの話しを聞いてやることにした。

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