第131話 良い魔王
カミラが居る砦の壁の上へと移動すると、騎士や兵士が大騒ぎをしていました。
「拙い! ストームキャットだ!」
「くそっ、やっとオークが片付いたと思ったのに」
「頼む、オークを食って満足して帰ってくれ……」
中には手を組んで祈りを捧げている者すら居ます。
「カミラ、怪我人は何処? 治療するから案内して」
「魔王様、ですが、またストームキャットが……」
「あれは先日のストームキャットを死霊術で眷族にしたものだから心配いらないよ。それよりも怪我人の所へ案内して」
「眷族……ストームキャットまで……」
「そっちはいいから、救護所はどこ?」
「あっ、申し訳ございません、御案内いたします」
カミラはレビッチに指揮を預けると、自ら先に立って僕を案内し始めました。
「魔王様、先程のオーク達を殲滅した魔術は、やはり魔王様がなさったのですか?」
「うん、影の空間に置いた石を上から落としただけで、やってる事は単純なんだけど、効果はエグイよね」
「あのような強力な魔術をお一人でとは……さすが魔王様です」
「でも準備には眷族の手を借りてるし、狙いとかが適当だし、動きの速い人だと避けられちゃうだろうから、用途は限定的だね。あぁ、でも城攻めとかには良いかも……」
「魔王様、何処かの城を攻められるのですか?」
「いいや、そんな予定は全然無いから、この魔術は暫く使う事も無いかな……」
救護所として割り当てられた兵舎は、酷い有様でした。
避難民が押しかけていた所へオークの投石が襲ってきたらしく、直撃を受けて命を落とした人も少なくないようです。
頭に巻いた包帯が血に染まり、横たわったまま意識の無い人も居ます。
「怪我の酷い子供と女性を優先する。命に別状の無い者は後回し、それと申し訳無いけどお年寄りも後にしてもらう」
「救護兵、魔王様を御案内いたせ」
本当はお年寄も助けたいのですが、怪我人の数を見ると、僕の魔力が枯渇する前に全員の治療を終えるのは無理そうです。
救護兵に案内された最初の怪我人は、頭に怪我を負った七歳ぐらいの男の子でした。
母親らしき女性が手を握り、祈りを捧げていて、妹なのでしょうか小さな女の子が涙を浮かべて立ち尽くしています。
「こちらからお願いできますか」
「あの……この方は……」
母親の質問に答えるより先に、傷口に手を当てて治癒魔術を流します。
頭蓋骨が陥没し、脳内出血も起こしているように感じます。
ぶっちゃけ、ベアトリーチェの時もそうでしたが、どうして治療出来るのか、理論的なことは全く分かりません。
それでも、治療が出来るならば、命が救えるのならば、躊躇する理由はありませんよね。
骨折も外傷も癒え、脳内出血も治まったと感じて治療を止めると、男の子の目が薄っすらと開きました。
「カイル……カイル!」
「お兄ぃちゃぁぁぁん……」
三人が抱き合って喜びを交わしたのを確認して、次の患者へと向かいます。
「次の人は?」
「はっ……はい、こちらです、お願いします!」
カミラから案内を命じられた救護兵は、先程までは疑惑の視線を向けていましたが、今は驚きと尊敬の念が籠もった眼差しをしています。
「治癒魔術なのか? 詠唱してなかったよな?」
「嘘だろう……悪いがあの子は助からないと思っていたのに」
「以前いらした聖女様よりも凄くないか?」
「誰なんだ、あの少年は」
「魔王だ、この前、ストームキャットを倒したのは、あの少年だったぞ」
二人目、三人目と治療する内に、ざわめきが救護所全体に広がっていって、何だか不穏さも感じるので、王女様パワーを発動してもらいますかね。
「カミラ、怪我人が休めないから、みんなを静かにさせてくれるかな」
「はっ、畏まりました。皆の者、静まれ! こちらにおわすは、魔王ケント・コクブ様だ。先程、押し寄せるオークの群れを強大な魔術によって殲滅して下さった。ラストックの危機は去った。今は怪我に苦しむ者を治療なさっている最中だ、静まれ! 喜びたい者は、外に行くが良い」
「おぉ……」
周りを取り囲んだ者達が、喜びの歓声を爆発させようとするのを、カミラは両手を掲げただけで押さえてみせました。
さすが王族という感じですが、その魔王様の紹介は要らないんじゃないかな?
救護所に居た軽症な者や付き添いの者達は、静かに退室して行くと、表に出て思う存分歓声を上げました。
「うぉぉぉ! 助かったぞ、危機は去ったんだ!」
「カミラ様、万歳! リーゼンブルグ王国、万歳!」
「魔王ケント様、万歳!」
ふぁ! ちょ、僕まで?
視線を向けたカミラは、当然とばかりに頷いていますし、周囲の人が僕を見る目線がさっきとは全然違うんですけど。
いやいや、今は治療に専念しないと駄目ですよね。
『ぶははは、ケント様の功績からすれば、至極当然ですぞ』
『もはや次期国王は決まり……リーゼンブルグはケント様のもの……』
『ちょっと、二人とも……まぁ今はいいか、それで、オークの残党狩りは終わった?』
『完了……ただ、内地へ結構逃げたみたい……』
フレッドの見立てでは、オークの群れの規模に対して、ラストックの砦が小さかったために、素通りして更に内地へと進んだ一団がいたようです。
ゼファロス・グライスナー侯爵には警告を出していますが、折角味方に引き込んだ第二王子派の重鎮に、何かあっては困ります。
『バステン、コボルト隊を連れて、バマタがどうなっているか見て来てくれる? 危なそうだったら影から援護して来て』
『了解です、すぐに行って来ます』
命の危険に晒されていた三十人ほどを治療し終えたところで、僕の魔力が底を尽きました。
「ごめん、ちょっと限界、休ませて……」
「は、はい、こちらへ……」
救護所の端に置かれた簡易ベッドに横になると、気絶するような眠りが訪れました。
属性奪取で木沢さんの魔力に酔って倒れたばかりなのに、また以前のように倒れるサイクルに入ったのかもしれませんね。
どれぐらい時間が経ったのか、空腹を覚えて目を覚ますと、何やら周囲が騒がしいです。
簡易ベッドの周囲が人に取り囲まれているのですが、取り囲んでいる人達は、僕に背中を向けていました。
「頼む、そこをどいてくれ。眠り込んでいるうちに、この腕輪で拘束してしまわないと、大変な事になるんだ」
「駄目! この人はお兄ちゃんを治してくれたの!」
「そうだ、うちの息子も命を救ってもらった」
「騎士の中にだって助けてもらった人がいるじゃないの、奴隷にするなんてとんでもないわよ!」
「だから、そいつは魔王なんだ、カミラ様を騙しているんだよ」
起きたばかりで頭が上手く回らないのですが、どうやら治療した人の家族が守ってくれているようです。
『ケント様、どうやら騎士の一部が暴走して、ケント様に隷属の腕輪を嵌めようとしているようです』
『それを住民の皆さんが邪魔しているって訳だね。カミラは?』
『騎士に呼び出されて、この場所を離れております』
『分かった……』
いつまでも寝た振りしていても仕方無いですし、何よりお腹が空いたので、そろそろ起きるとしましょう。
「んーっ……ん? 何の騒ぎかな?」
「くそっ! どけっ……うっ、何だ、う、動けない……」
騎士が女の子を押し退けようとしたので、いつぞやの雑魚っぽい冒険者のように、首から下を闇の盾で囲ってやりました。
「騎士が住民に暴力振るっちゃ駄目でしょう。ミノタウロスの群れに、ストームキャット、そして今回のオークの大群、撃退したのは僕と眷族なんだけど、こんな扱いをするのがリーゼンブルグの礼儀なの?」
「うるさい、貴様がカミラ様を騙しているのは分かってるんだぞ!」
「はぁ……僕は、そのカミラによって異世界から召喚されて、思いっきり迷惑掛けられてるんだけど、そこんとこはどうなのよ?」
「うるさい、貴様らサルは、リーゼンブルグに従っていれば良いのだ」
うーん……何と言うか、たぶんカミラに心酔しすぎて、カミラが僕に跪いたりしたのが許せないのかもしれませんね。
まぁ、どっちにしても迷惑なのは間違いないです。
て言うか、隷属の腕輪は全部処分したはずですが、どこかに隠し持っていたんでしょうかね。
『ラインハルト、眠らせちゃって』
『その程度で宜しいので?』
『あんまり手荒なのはイメージ悪いでしょう』
『ぶははは、民のイメージを気にする魔王様ですか、ケント様らしいですな』
簡易ベッドから立ち上がって歩み寄ると、さすが騎士とあってガッシリとした体格で、思い切り上から見下ろされます。
「貴様のようなサルは、絶対に……認め……ん……」
「別に認めてくれって頼むつもりも無いけどね……」
眠り込んだ騎士を闇の盾から出して、簡易ベッドへと転がすと、シャツの端がチョイチョイと引かれました。
振り向くと、最初に治療した男の子に付き添っていた妹と思われる女の子でした。
山吹色の髪に、先っちょが白い三角の耳、木の葉型の尻尾、狐っ娘ですね。
「お兄ちゃんは、魔王なの?」
「お兄ちゃんはねぇ……良い魔王だよ」
「ふぇ、良い魔王……?」
「怪我をした人を治す人は、悪い人かな?」
「違う! カイルお兄ちゃん、あんなに痛がってたのに良くなったもん!」
「じゃあ、僕は悪い魔王? それとも良い魔王?」
「良い魔王だ!」
「でしょ、でしょ!」
ぐっぐぅぅぅ……きゅるるるぅぅぅぅ……
はぁ、せっかく格好付けたのに、何てタイミングで鳴くんだよ、マイ・ストマック。
おかげで周りに居た人達にクスクス笑われちゃってるじゃん。
「お兄ちゃんは、腹ペコ魔王だ! 腹ペコな良い魔王だ!」
「そうだね……腹ペコ魔王だね」
救護室は笑いに包まれて、もう全然格好付かないですよね。
「あの……配給のパンで申し訳ないのですが……」
「おう兄ちゃん、俺の分も食っていいぜ」
「あっ、どうも……ありがとうございます」
魔王らしい威厳なんて欠片もなくて、そこらの兄ちゃん扱いです。
分けてもらったパン腹ごしらえして、骨折とか大きな怪我をした人を治療しました。
治療している間、さっきの女の子が、ちょこまかと後を付いて来て、じーっと治療の様子を見ていました。
「良い魔王は凄い! 良い魔王ありがとう」
「良い魔王とか呼びにくいでしょ。ケントでいいよ」
「良い魔王はケントって言うの? あたしはリーラだよ」
「リーラちゃんか、良い名前だね」
「リーラ、大きくなったらケントのお嫁さんになってあげる」
「へっ? お嫁さん……?」
「うん、魔王には、沢山お嫁さんが要るんでしょ? だからリーラがお嫁さんになってあげる」
お母さんは美人だしスタイルも良いから、リーラちゃんも将来有望そうだけど、さすがに四つか五つの女の子にデレデレしちゃうような変態さんではありませんよ。
でも、その尻尾はちょっとモフりたいかも……てか、周りの人の生暖かい視線は何なんでしょう。
「えっと……お嫁さんが沢山必要なのは、悪い魔王だから、僕にはそんなにお嫁さんは要らないかなぁ……」
「ふぇぇ……ケント、リーラが嫌いなの? リーラ……嫌い……」
あぁ、拙い拙い、みるみるうちにリーラちゃんの目に涙が溜まってきています。
「いやいや、嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど、まだ今日会ったばっかりだし、そう、リーラちゃんがもう少し大きくなってから考えようか?」
「もう少しっていつ? 明日?」
「いやぁ、明日じゃ早すぎるかなぁ……」
「じゃあ、いつ? 明日の明日?」
「うーん……リーラちゃんが、学校を卒業したら……かなぁ……」
「学校行ったら、お嫁さんになれる?」
「お母さんや先生の言う事を聞いて、ちゃんと良い子にしていたら……」
「良い子にしてる! リーラ、良い子にしてお嫁さんになる!」
「ごふぅ……ちゃんと良い子にしていたらね」
メイサちゃん並みのロケット頭突きで抱きつかれ、結局治療が終わるまで、おぶさられたり、抱き付かれたり、目茶目茶懐かれてしまいました。
てか、お母さん、ニコニコ見てないで引き取って下さいよ。
『さすがケント様……先物買いにも余念無し……』
『いやいや、買ってないからね。方便ってやつだからね』
『でも、魔王には沢山の嫁が必要……まだまだ足りないぐらい……』
『はぁ……とにかくカミラの状況を確認してから、ヴォルザードに帰ろう』
患者さんや家族の皆さんに、何だか生暖かい視線で見送られながら、カミラを探して救護室を後にしました。
オークの極大発生でガタガタしていましたが、第二王子と第三王子、そして取巻きを誅殺したんですよね。
その後、どういう始末になったのか気になっていたのです。
カミラは訓練場の端に並べられたベルンスト達の棺の前で、ウォルター・グライスナーや近衛騎士の主だったメンバー、そして駐屯地の主だったメンバーを集めて、簡単な葬儀を行っているようです。
神職らしき格好の男性も居るところを見ると、すでに葬儀は進められていて、これからカミラが弔辞を述べるみたいです。
「ベルンスト兄、クリストフ兄は、オークの極大発生に際し、勇敢に騎士達の先頭に立って奮戦し、ラストックの住民を守りぬき、そして命を落とされた。その業績に敬意を表し、英霊の御霊が安らかな眠りにつくよう心からの祈りを捧げる!」
言い方は立派ですが、要するに極大発生の最中に死んだことにして、証拠は隠滅しちゃいます……って事だよね。
『ケント様、王族の遺体はアンデッドとならないように、火葬した上で、骨も砕いて埋葬いたします』
「それじゃあ、全く誅殺の証拠は残らないね」
『いかにも、手元の残されるのは遺髪だけですな』
「名誉の戦死と乱行の末の誅殺、馬鹿王子達にとっては前者の方が良いだろうけど、カミラにとってはどちらの方が良いのかな?」
『第二王子派の勢力を引き継ぐならば前者、第一王子の下に付くならば後者の方が良いでしょうな』
「つまり、カミラは第二王子派の勢力を引き継いで、第一王子派と敵対する決意を固めたって事なのかな?」
『その辺りの真意は、直接問われた方が宜しいでしょうな』
第一王子のアルフォンスと敵対するかどうかは別にして、第二王子派の勢力をそのままそっくり引き継ぐ事が出来るならば、カミラにとっては喉から手が出るほど欲しかった戦力が手に入ります。
リーゼンブルグ西部は第一王子派の支配地域なので、直接砂漠化を止める対策を行うの難しいとしても、魔の森の開拓を進めて新たな農地を得る事は出来るでしょう。
砂漠化によって難民と化した国民を救う受け皿を用意出来れば、カミラの人気は更に高まるはずです。
問題は、第二王子派の貴族達がどう動くかですね。
「ラインハルト、第二王子派の貴族達は、カミラに付くと思う?」
『通常、貴族達は男性王族の後ろ盾を得ようとします。現状残る男性王族は第一王子のアルフォンスと第四王子のディートヘルムですが、ディートヘルムはカミラ嬢の弟ですし成人前です。なので、姉のカミラ嬢に付き、行く行くはディートヘルムの下に……もしくは、カミラ嬢を王にして、己の子供を婿入りさせようなどと考える輩も居るかもしれませんな』
「そう言えば、第一王子は第二王子達を殺そうと考えていたよね。あの計画はどうなっちゃうんだろう?」
『殺そうとする相手が居なくなったのですから、当然中止になるでしょう。ですが……腰巾着が良からぬ事を考えなければ良いのですが……』
僕の頭に浮かんだのは、第一王子の参謀役トービルでした。
第一王子のアルフォンスは、トービルの言いなりになっている印象があります。
トービルが、これでアルフォンスの王位継承は間違い無しと見極めを付けるなら、余計な騒動は起こらないでしょうが、カミラの存在が邪魔だと考えた場合には、何か企てそうな気がします。
「ねぇ、今ちょっと思ったんだけど、ディートヘルムに毒を盛っていたのって、あのトービルとか言う参謀役なんじゃない?」
『可能性は否定出来ませんが、確たる証拠がありませんので、なんとも言い難いですな』
「ちょっと考えが飛躍しすぎか……」
『ケント様、いずれにしてもカミラ嬢が第一王子に使者を立てるはずです。第二王子達の死を知って、どういう行動に出るのか見極めましょう』
「そうだね、闇雲に動いても仕方無いよね」
第二王子達の葬儀を見守っていると、バマタを見に行っていたバステンが戻ってきました。
『ケント様、バマタに向かったオークも一応撃退出来ました』
「一応って言う事は、結構被害が出たの?」
『我々が援護しましたし、第二王子派の兵が集まって来ていましたから、かなりの戦力もありましたので、大きな被害にはなっていません。ただ、統率を失ったオークがバラバラに逃亡しましたので、そいつらが今後どう動くか少々心配です』
「上位種っぽい個体は?」
『目に付いた奴は、倒して魔石も回収しておきました』
「じゃあ、取りあえず危機は脱したんだね?」
『いえ、小さな集落が襲われる危険度は、ぐっと高まっていますね』
ラストックとバマタの間には、数戸の家が集まったような小さな集落が点在しているそうなのですが、普段は騎士や兵などは駐在していないそうです。
既にグライスナー侯爵が騎士を派遣したそうですが、間に合ったかどうかは微妙な状況なようです。
大きな群れは街道沿いに進んで、真っ直ぐバマタへと向かったのですが、群れから離れた個体も居るでしょうし、オークの生息密度は一気に高まっているはずです。
魔の森が溢れて侵食してきている状態と言って良いでしょう。
バステンの報告では、ゼファロス・グライスナー侯爵は、なかなか戦上手だそうです。
他の貴族の兵も合わせた、いわゆる寄せ集めの集団を上手く動かして、損耗を最小限で食い止めたようです。
第二王子派で一番大きな被害を被ったのはカルヴァイン辺境伯爵の手勢で、兵をまとめる役割のライザス達が不在で統率が取れず、スムーズな進退が出来なかったようです。
「第一王子の動きも気になるけど、カルヴァイン辺境伯爵の動向も気になるよね」
『そうですな。これまでの経緯を見ると、第一王子派に寝返るぐらいの事をやらかしも不思議ではありませんな』
「暴発して内戦を起こすなんて事は?」
『現状では考え難いですな。今回のオークの一件で、極大発生の危機が現実であると多くの貴族が知り、かつグライスナー侯爵が軍勢をまとめたのであれば、彼の者の下へと集う流れができるでしょう。そんな状況下で内戦を始めようとすれば、袋叩きに遭うのがオチですな』
「でも、今回の一件でカルヴァイン辺境伯爵は、派閥の中での発言力を失う事になるよね? どう挽回するつもりかな?」
『そちらも、カミラ嬢からの使者を迎えて、どう反応するか見る必要がありそうですな』
第一王子のアルフォンスや参謀役のトービル、そしてカルヴァイン辺境伯爵、誰しもが残りの人生を賭けた博打の真っ最中ですから、簡単に投げ出したりはしないでしょう。
勿論、第二王子派だった他の貴族達も、それは同じですし、グライスナー侯爵やカミラも当事者の一員です。
『ケント様、カミラ嬢とゼファロス・グライスナーの二人に会談を行わせて、意思疎通を図っておかれた方がよろしいかと……』
「そうだね、この先の鍵を握る二人だもんね」
『何より、使者に持たせる文面の調整もさせておいた方が宜しいでしょうな』
「バステン、バマタの街には被害は出て無いんだよね?」
『はい、街の外で迎撃戦を行ったので、住民には被害はありません』
「じゃあ、ちょっとバマタに行って、ゼファロスと会ってこよう」
屋敷に戻ったゼファロスに、第二王子誅殺の経緯を話し、カミラとの会談を奨めると、二つ返事で翌朝バマタを出発し、ラストックに向かう約束を取り付けました。
ラストックに戻り、カミラに事の次第を伝えると、こちらも二つ返事で了承し、翌日の会談が決まりました。
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