第109話 会敵!

 俺とスズナを先頭に、ミラさん、メリッサ、シエナの順で警戒陣を組んで前に進んでいく。

 縦一列の単縦陣でも良かったのだが……まあ、先頭に二人いるしね。

 俺たちが今歩いている場所は木が全く無く、背の低い草しか生えていない平原だった。これならドラゴンもすぐに見つかるだろう。と、まあしばらくはそんな感じでドラゴン捜索をしていたわけなのだが……


「グルァアア!」

「スズナ! 右前方にいるモンスターを押さえ込んでくれ! シエナ! ドレインを使ってスズナと対峙しているモンスターの処理を頼む!」

『了解!』


 俺が五匹ぐらいのモンスターと戦闘しながらスズナとシエナに指示を飛ばし、指示を受け取った二人がそのとおりに動く。

 俺達が今戦っているモンスターは討伐難易度で言えば「簡単」に該当する強さだ。端的に言ってしまえば雑魚ということである。しかしながら、数が多い。

 俺達の周りにはざっと見ただけでも百匹は超えていると思われる数のモンスターがいるのだ。何がどうしてこうなったのかよくわからないのだが、知らないうちにこうなっていた。謎だ。

 まあ、数が多くても所詮は弱いモンスターである。倒すのに苦労はしない。が、疲労は溜まっていくわけで。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 俺達を囲んでいたモンスターを全て討伐し終えた頃には俺とシエナ、スズナは完全にバテていた。

 メリッサとミラさんは魔力温存のために戦闘には不参加である。ただ、このままの勢いで来られるとそうも言っていられないと思うが。


「シエナ、スズナ、怪我は無いか?」

「はい、大丈夫です。ただ……少し休憩を……」

「うちも、ちょっと休みたいかな……」


 俺も息を整える時間が欲しかったので、その場で五分ほど地面に座って休憩をすることにした。

 

「はい、エリック。お水飲みなさい」


 「ふぅ」と額の汗を拭っていると、ミラさんが俺に水が入った革袋を渡してきた。メリッサはシエナとスズナの二人に同じものを渡している。

 俺はそれをありがたく受け取り、一気に飲んだ。

 

「んぐんぐんぐ……ぷはぁ! 美味い!」


 水分が疲れた体に染み渡っていって……きくぅううううう!

 そんな俺を見ていたミラさんが、笑顔を見せながら「お疲れ様ね」と言って労いの言葉を掛けてきてくれた。いやー、序盤からまじでお疲れですよ。ええ。


「しかし……想定よりもモンスターの数が多いですね。今は弱いモンスターばかりなので問題はないですが……これが強くなっていくと、厳しい戦いになりそうです」

「そうね。この先どうするの? 私達も戦闘に参加したほうが良さそうかしら?」

「今はまだいいです。ただ、討伐難易度『中』レベルのモンスターが出た時はお願いします」

「分かったわ」


 温存しすぎて殺られる、なんてことになれば本末転倒だしな。もしもの時は出てきてもらおう。

 

 休憩を終えた俺達は、ドラゴン捜索を再開した。



 ◆◆◆



「エリック! うちを援護してくれんか!? ちょっと支えきれんくなってきた!」

「おう、任せとけ!」


 俺は目の前にいたモンスターを一瞬で処理してスズナの元へ行き、彼女が頑張って押さえ込んでいたモンスターを討伐する。


「エリック様! ドレインが間に合いません! 戦線が崩壊しそうです!」

「分かった!」


 ある程度の数減らしをした俺はスズナの元を離れてシエナの所へ行き、いまにも崩れそうな戦線を押し戻す。


「おりゃぁあああああ!」


 俺は目にも止まらす速度で剣を振り抜き、モンスターの首を跳ね飛ばしていく。首を失ったモンスターは即座に生命活動を停止し、その場で動かなくなる。討伐完了だ。

 で、戦線が元に戻ったところで自分の立ち位置に戻り、再度バカみたいな数のモンスターをなんとかさばいていく。

 さっきからこれの繰り返しだ。シエナとスズナは基本的にモンスターを倒せないので、俺一人が動き回って討伐しているのだが……いかんせん数が多すぎて流石にキツイ。

 で、「これ、もうそろそろあかんくなるやつや」と思っていた矢先、討伐難易度「中」のモンスターが前方から多数出現し、俺とシエナ、スズナの三人体勢では手に負えない状況に陥った。

 「こりゃ無理だ」と判断した俺は即座に剣を腰に下げ、服の内ポケットに収納していた黒色の手袋ローラを取り出して装着。剣士から魔術師になる。

 また、ミラさんとメリッサが戦闘に参加。それに従ってシエナが後方に下がり、通常の戦闘配置に変わった。

 うんうん、みんなしっかりとした状況判断が出来ているし良いパーティだ。


「よし! 力はある程度温存! ただし、手抜きはせずに討伐していくぞ!」

『はい!』


 して、五人でのモンスター討伐が始まった。


 最初に動いたのはミラさんだ。

 彼女は、まず辺り一帯にいた雑魚モンスターに対して広範囲魔術をぶちかまし、それらを一掃した。

 (……えげつねぇ。流石は俺の家のトイレにアイギスを張ったミラさんだ。)

 それを受けて、スズナがこれはチャンスと言わんばかりに討伐難易度「中」のモンスター達に向けて走り出し、見事タゲ取りに成功。スズナがちょっかいを出すことにより、モンスターたちの意識が俺達からスズナに完全に移った。

 状況が良くなったところで俺はミラさんとメリッサにアイコンタクト。一瞬で誰がどのモンスターを討伐するかを目線だけで決め、攻撃魔術を起動。

 結果、ものの一分で数十体はいたある程度強いモンスターが息絶える。


「……やっぱり魔術って強いな……。俺が剣であんな必死に倒していたモンスターが一瞬で居なくなったぞ」

「ですわね。驚きの速さで消し飛びましたの」

「まあ、ある程度強い魔術を放ったらこうなるのは当然よ。というか、正直言って剣の腕に関しては、エリックの場合C級冒険者くらいしかないし。だから、苦戦していたのよ」

「……え?」


 驚きの事実がさらっと述べられたような気がするが、ここは戦場。そして、また俺達の前方からモンスターが出現し始めたので気持ちを一旦切り替える。あとから、詳しくその辺りの話をミラさんとしよう。


「じゃあ、この調子で頑張ろう!」

『はい!』



 ◆◆◆


 あれから一時間。俺達は数え切れないほどのモンスターを討伐した。

 討伐難易度「簡単」および「低」のモンスターはミラさんがパパっと討伐。それ以上の難易度のモンスターはスズナがタゲ取りをしてヘイト管理してから魔術師三人で殲滅。シエナはスズナが怪我しないように常に支援魔術を起動していた。

 順調だ。ギリギリまで連携を高めるためにクエストを受けていたのが功を奏したな。

 ただ、問題が一つ。それは……もう何度も言ったかもしれないがモンスターの数がえげつないことだ。

 数える余裕がないのでまともに把握していないが、討伐した数であれば千匹はとっくの昔に超えている気がする。まあ、今のところは強いモンスターの数は少ないし大抵は弱いモンスターばかりだから、まだ大丈夫ではある。魔力の消費量もそこまでいっていないし。これ以上はキツイが。


「B級冒険者たちを育てるためにはいい狩場だとは思うけど……私達の場合はうざい以外の何物でもないわね。これじゃドラゴンが見つけられないわ」


 ミラさんが魔術をモンスターに向けて放ちながら愚痴を言う。

 

「確かにそうですね……。このままだといずれは――ッ!?」


 俺がミラさんの言葉に同調しようとした瞬間、空を見覚えのあるモンスターが飛んでいるのを見つけた。

 大きな翼で羽ばたきながら、圧倒的なオーラを纏っているモンスター。一度出くわしたらもう二度と無事には帰ってこられないと思わせるような見た目。

 あれは……あいつは……ド――


「ドラゴンや! ドラゴンがなんか空飛んどるで! というか、ウチらをガン見してる気がする! てか、こっちに来るで!」


 俺が「ドラゴン」と心の中で言う前にスズナに言われてしまったが、まあ、やつはドラゴンで間違いないだろうな。

 かのモンスターを初めて見るミラさん、シエナ、メリッサは「はえー」という声を出している。初見だと「はえー」だよな。二度目の俺も「はえー」だわ。

 ――っていかん! 今この状況でドラゴンと対峙するのは非常に不味い! 何も準備できてない!

 俺はすぐさまみんなに指示を出す。


「――ミラさんとメリッサは今すぐ魔力回復のポーションを飲んで魔力回復! シエナはあのドラゴンに向けて『アジリティー』を付与! 動きを遅くしてくれ! スズナは俺達の後ろで待機! いつでもタゲ取りが出来るように準備しておいてくれ!」


 俺の声を聞いて正気に戻ったシエナ達はすぐさま行動を開始。俺も魔力回復のポーションを飲んで魔力をほぼ満タンまで回復させ、俺達を襲ってくるモンスターたちを剣で処理する。


「ミラさん、メリッサ! 連携魔術の準備を! 俺もなんとかします!」

「分かったわ!」

「分かりましたですの!」


 二人は俺に言われたとおり詠唱を開始。俺の方も剣を捌きながら詠唱をするという器用なことをなんとか実行する。

 ドラゴンはドンドン俺達に近づいてきて、あと十秒もあればドラゴンブレスの射程圏内に俺達を入れることが出来るという距離まで来ていた。

 しかし、俺達の連携魔術は五秒もあれば完成するのだ! はははは! 馬鹿めドラゴン! 貴様など恐るるに足らず! 今すぐ空から地面に叩き落としてくれるわ! 人間の力を見るがいい!

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