第103話 キングオークの討伐 その3

 しばらくスズナにどういう攻撃の受け方がいいのか指導していると、突然キングオークが咆哮を上げてきた。どうやら正気に戻ったらしい。

 俺はいつでも補助ができるようにスズナの隣に立ちながら剣を構える。もしもの時は俺が棍棒を受けないといけないからな。


 して、その時はきた。キングオークが先程と同じ様に棍棒を上に振り上げ……力の限りに振り下ろしてきたのだ。

 スズナは俺に言われたとおり剣を右下に構え――同じく左上に振り抜く!


 俺は予想していた。いくら勇者とは言えまだ冒険者としてはひよっこ。そして、シエナから筋力増強の支援魔術を受けているとは言え、俺のようにユニークスキルを使っているわけではない。つまり、筋力を上げるのにも限度があるのだ。だから、おそらくスズナは棍棒を受け止めきれないだろうと。そして、俺が補助をすることになるだろうと。

 しかし、そうはならなかった。スズナは……


 バゴォオオオオンッ!


 棍棒と剣が交わった瞬間、棍棒が塵も残さず爆発四散し、キングオークの獲物が消えた。

 そう、スズナはキングオークの棍棒を消し飛ばしたのだ。

 目の前のモンスターは『プギィ!?』と言いながら前のめりになって倒れてくる。勢い余ってバランスを崩したのだろう。

 棍棒の消し飛びが衝撃的すぎて一瞬動きを止めていた俺だったが、すぐに今俺達が置かれている状況を把握し、スズナの手を引いてこの場を離脱する。

 このままここで立っていたら、前のめりで倒れてくるキングオークの下敷きになるからだ。


 しばらくすると、ズドドドドンッ! という地響きと共にキングオークは倒れた。俺とスズナは少し離れたところでその様子を見る。


「……は、はぇぇ……」


 スズナは呆けた声を出す。まさかこんなことになるとは思っていなかったのだろう。

 シエナとメリッサが俺たちの元へとくる。


「スズナさん! 凄いじゃないですか! 相手の武器だけを消し飛ばすなんて!」

「完全に予想外でしたわ! ……ただ、気になることが一つありますの。スズナさんが攻撃をしたときに、キングオークが一瞬消し飛んだのが見えましたの。でも……すぐに何事もなく元通りになって、棍棒だけが消えていましたの」


 シエナはスズナの手をとって喜び、メリッサも同じ様に喜んではいたが、不安材料になるようなことも教えてきてくれた。

 キングオークの方を見ると『ブ、ブヒィ……』と言いながら完全に伸びてしまったようだったので、メリッサの言ったことを精査する。

 一回消し飛んだのに元通りになる。ふむ、このキングオークは自己再生能力でも持っているのだろうか? 俺も一度だけそういう能力を持っていたモンスターを見たことがある。しかし……自己再生能力を持っているなら討伐難易度『死』になるし……このモンスターがそういうものを持っているとは思えない。そこまで強くなかったのだ。

 しばらくの間うーんと考えていたのだが、落ち着いたスズナがその現象について説明をしてくれた。


「おそらくはウチがモンスターにダメージを与えられん、ということが関係していると思うで」

「……どういうことだ?」

「女神様がちらっと言っとったんや。ウチはモンスターに攻撃は出来るし、一時的にダメージを入れることも出来るけど、それは正しい状態じゃないからすぐに全てがなかったことになるって」

「ほう」

「まあ詳しいことは分からんけど、こうなんちゃう? この世界の仕様、もしくはウチが勇者だということで、何かをするとどうしてもモンスターにダメージが入ってしまう。ただ、ウチは副作用でモンスターにダメージを与えられないことになっている。そこで、女神様か誰かがあるべき状態に戻している、みたいな」

「ふむ」

「ただ、モンスターにダメージを与えられないだけでそれ以外にはダメージを与えることが出来る。だから、棍棒だけが消し飛んだ。なんというか仕様だけど仕様じゃない。どうしても意図しないバグが発生するけどすぐにプログラムがお掃除するみたいな。そんなイメージやと思う」

「なるほど」


 スズナが頷き、俺、シエナ、メリッサが頷く。

 ……ふむ、なるほど分からん。まあ、分からんがキングオークが自己再生能力をもっているわけではなさそうだから、良しとしよう。そこが一番重要なことだったし。


 

 その後は、伸びたキングオークが再び立ち上がるまでスズナに剣術を教えたり、戦闘時の連携について皆に詳しく説明したりして、キングオークの意識が戻った後は再度スズナにタゲ取りをしてもらって……最後には討伐した。

 なんというか、途中からこのメスのキングオークのことが可愛そうになってきたのだが、見逃すと人々に甚大な被害を与える可能性があったので、『すまん! それとありがとう!』と思いながら最後は一思いに逝かせてあげた。

 ……今回に限っては、俺たち完全に悪者だな……。

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