第102話 キングオークの討伐 その2

 キングオークから数十メートル付近にある草陰にて。


(いいか? まず俺がキングオークの気を引く。で、スズナに剣を使った防御のお手本を見せる。その後に皆一斉に草陰から出て戦闘開始だ)

(はい!)

(よしよし。キングオークは討伐難易度『中』のモンスターだ。そこまで強くはないが油断すると死ぬからな。気を引き締めるように)

(はい!)

(まあ、大丈夫だ。俺がついているからな)

(はい!)

(それと……今回は人道的というかあまり良い討伐の仕方ではない。わざと手を抜いて殺さないようにしてスズナに戦闘の練習をしてもらうから。だから、キングオークには感謝の念を持って、そして、他のモンスターの時は出来る限り苦しませずに討伐するんだ。まあ、俺も肝に銘じておかなければいけないんだが)

(分かりました!)


 皆の思いがこもった返事を聞いた俺は『じゃあ行ってくるよ』と言い残して草陰から身を出し、気配を消しながらキングオークの背後まで忍び寄る。

 キングオークは地面に座って『ブヒブヒ』と言いながらケツをかいて休憩している様子だった。警戒心があまりないキングオークのようだ。

 俺はそんなキングオークを横目に剣を腰から抜いて大きく上に振りかざす。そして……


「おりゃぁあああああああああああ!」


 大声を出しながら剣を振り下ろしてキングオークの背中を――思いっきり斬りつけた。


「ぶぎゃあああああああ!」


 痛みが走ったのだろう。キングオークは大声を出して飛び上がる。

 背中ってめちゃくちゃ痛いよな。俺もドラゴンブレスで背中に攻撃を受けたから気持ちは分かる。だがしかし! 俺は容赦せんぞ!


 俺は手首を驚きのしなやかさで動かして剣を振るう振るう振るう!

 上から下へ斬りつけたらその勢いを上手いこと保持したまま今度は左から右へと斬りつけ、また上から下へ斬りつける。そのループを延々と繰り返しながら、たまに剣をキングオークの背中に突き刺す。

 攻撃としては大したこと無いものである。モンスターの皮膚を傷つけて俺に意識を向かせるのが目的なのだから。


 キングオークは俺の執拗な攻撃を受けて悲鳴を上げながら立ち上がり、地面に置いていた棍棒を手に持って――背後を振り返った。

 俺とキングオークの目が合う。キングオークは顔を真っ赤にして激おこの様子だった。作戦成功である。

 いつもであれば、こういう状況になったら一時撤退かチョロチョロと動き回って背後を取るのだが、今回はスズナに剣を使った防御方法のお手本を見せる必要がある。なので、俺は剣を体の中心で構え、切先を相手に向けるだけで動かない。

 そんな俺を見てメスのキングオークが棍棒を上に振り上げる。どうやら攻撃をしてくれるらしい。


「ブギッ! ブギブギブギィイイイイイイイイッ!」


 キングオークが喉がはちきれんばかりの声を上げた瞬間、彼女は棍棒を怒りに任せて振り下ろしてきた。

 俺は剣を体の中心から右下に構え直し、上から迫ってくる棍棒に合わせて――左上に振り抜く!


 ガギギギギギインンンンッ!


 キングークの棍棒と俺の剣がぶつかりあった瞬間。鼓膜が震える音と猛烈な衝撃が俺を襲ってきた。

 巨大なモンスターが繰り出した攻撃など人間が受けきれるわけがないのだが、俺はユニークスキルで筋力を強化している。

 一瞬の均衡の後、俺の方がどんどんと棍棒を押しのけていき……ついにはキングオークの振るった棍棒を弾き飛ばした。

 キングオークは驚いた顔をしながらも、棍棒が弾き飛ばされたことによってひっくり返る。

 ズドドドッ! という轟音と振動が起きるが、俺はそれを無視して一旦後ろに下がった。シエナ達が草陰から出てきていたのだ。ここからはチームプレイである。


 シエナとメリッサは少し離れたところで様子見、そして俺の隣にスズナが来た。


「エリック! ほんま凄いな! あんなデカイ棍棒、位置エネルギーだけでも相当なものになるのに、そこにキングオークの力も加算されてえげつない攻撃力やろ!? それを弾き飛ばすなんて!」

「俺が凄いというかはユニークスキルの強化のおかげだけどな。もっとすごい人だったらキングオークをひっくり返すんじゃなくて吹っ飛ばすから。S級冒険者としては全然だ」

「いや! でも凄いって! もっと胸張りいな! 十分凄いって!」

「そ、そうか……」


 そんなに誇れることでもなんでも無いのだが……まあ、スズナがそう言ってくれるのは嬉しい。

 

 そんな感じでスズナは俺のことをべた褒めしてていたのだが、ひっくり返ったキングオークが再び立ち上がったのを見た瞬間、急に黙り込んでしまった。

 彼女の顔を見てみると、どうやら緊張しているようだ。まあ、初めてのクエストでキングオークというのはちょっとハードかも知れないな。

 俺はキングオークに注意しながらもスズナを勇気づける。


「シエナが現在進行系で俺たちに筋力増強の支援魔術を掛けてくれている。メリッサは周囲を警戒してくれているし俺も隣にいる。怪我はさせない」

「……そうやな! エリックが隣にいてくれるんやもん! 心配することなんてないわな! よっしゃ! ウチも見様見真似でやったるで!」


 スズナは緊張がほぐれたようだ。

 彼女は二回ほどジャンプして体の力を抜いた後、腰に下げていた剣を手にとって俺と同じ様に体の中心で構えた。

 キングオークは若干目を回しているようでまだ攻撃はしてこない。


「構え方はいい調子だ。というか、初めてとは思えないくらい綺麗な構えだな」


 俺は感心する。下手したら俺よりも綺麗かもしれない。

 スズナは照れる。


「いやー、ウチ、日本刀が擬人化したアニメとかゲームが好きで、そこから剣術を学ぶようになったんや。だから、構えならバッチシやねん!」


 なるほどな。ニホントウというのが良く分からないが、剣の種類のことなのだろう。

 しかし、剣術を習っていたのなら色々と習得が早そうだ。良きかな良きかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る