第72話 大きな果物がそこにはありました

 足音を殺し、ドラゴンの目が覚めないように細心の注意を払いながら、俺はなぜか全裸になっている女性の元まで駆け付ける。

 必死にもがいていた彼女は、俺が目の前に来てからようやくこちらの存在に気がついたようで、それまでの泣きそうな顔から一転。満面の笑みを浮かべ、口を大きく開いて喜びの声をあげようと……したのだが、俺が急いで口を塞いでなんとか難を逃れた。

 しー、と謎の女性にジェスチャーを送ってから、俺はこの状況を急いで分析する。

 まず、彼女は全裸である。健康的な日焼け跡が体にくっきりと刻まれており、並大抵の男であれば大興奮間違いなしで……あっ。アブねぇ……思考が暴走するところだったわ。色々な意味で危険なので、この情報は頭からのけておこう。いざという時に正常な判断が出来なくなる。

 で、彼女の今置かれている状況はと言うと……えー、ドラゴンのお手々にガッチリと体が掴まれていて、今にも半分に折られそうだ。というか、なんでこのモンスターは彼女を掴んでいるんだ? ……まあ、今はいいか。

 状分析をし終えた俺は、救助方法を考える。

 ……うーん……ドラゴンに攻撃魔術を撃って、びっくりした隙に彼女を救い出す? いや、この方法だと、激昂させて彼女が握りつぶされるかもしれない。というか、目を覚まさせる方法は無しだ。

 じゃあ、無理やりドラゴンの手をこじ開けて、彼女を引っこ抜いて助け出す? ……ふむ。これだったらドラゴンを起こさずに上手いこと行きそうだな。よし、この案で行こう。

 というわけで、それを早速実行しようとしたのだが……まずは、このドラゴンに追跡の魔術をかけておく。目を覚まさせないように注意するが……起こしちゃったら俺達を襲ってくるだろう。で、そこから上手く逃げのびたとしても、ドラゴンは洞窟を出て何処かへと行ってしまうかもしれない。まあそれに、起こさなかったとしてもずっとこの洞窟に居続けるとは限らないわけで。そういうような可能性がある中、追跡魔術をかけておけば、俺であればこのドラゴンが何処にいるのか分かるようになるから、色々と安心というわけだ。

 未だに寝ているドラゴンに魔術をかけ終わった俺は、いよいよこの謎の全裸女性の救助を開始した。

 まずは筋力をアップさせる魔術である『パワー』を小声で唱えながら、出来るだけ体に重ねがけをし……筋肉もりもりマッチョマンのようなパワーを出せるようになった俺は、その勢いのまま力の限りにドラゴンの手を外側に広げていく。


 グ……グググ……


 俺のパワーに負けて、ドラゴンの手が少しずつ開いてくる。

 いいぞ……いいぞ……そのまま……そのまま……!


 グググ……ググググググ……!


 自力で抜け出せるくらいの隙間を空けた俺は、謎の女性に小声で声を掛ける。

(自分で……ここから出られるか……? ちょっと……ドラゴンの手を広げるだけで精一杯なんだが……)

(ここから抜け出すことはできるんやけど……変な体勢で掴まれていたから足を痛めてしまって……歩けそうにはないんや。だから……抱っこか何かしてくれるとありがたいわ)


 そういいながら全裸の女性は腕の力だけで体を上に押し上げて……スポンとドラゴンの手から脱出する。


 ブルンッ……ブルンッ……!


 その瞬間。抜け出す動作をした反動かどうかは分からないが、俺の目の前でたわわに実った二つの果実が……この世のものとは思えない挙動をしながらお揺れになった。

 ……ち……ちち……乳でっっっっっっかっ! エッッッッッッロ! 

 シエナとメリッサの貧乳具合にすっかり慣れてしまっていた俺は、彼女のはちきれんばかりの巨乳を見て……驚きと興奮で思わずパッと手を離してしまう。

 刹那。バチンッ! という大きな音とともにドラゴンの手が勢いよく元に戻り……ゆっくりとドラゴンの目が見開かれる。

 ……やっべ……ドラゴンさん、お目覚めになっちゃった……。てか、どんだけ力強く握りしめてたんだよ。あれか? おっぱいの感触を無意識下で楽しんでいたんですか? 厳つそうな雰囲気を出しながら案外スケベなんですね。ドラゴンさん。

 あと、よくお前もお前で握りつぶされれずに生きていたな。頑丈ってレベルじゃねえぞ。

 おっといかんいかん。ここは冷静に対処しよう。さっき言っていたが、どうやらこの変な訛り方をしている女性は足をくじいて歩けないらしい。

 スケベ? なドラゴンさんにジロリと見られながらもよっこいしょ、というような感じで彼女をお姫様抱っこする。おんぶしても良かったんだが、胸にアレが当たると興奮して逃げるのに集中できないかもしれなかったからな。

 で、人間であればこめかみに血管が受け出ていそうな感じで怒っている雰囲気を漂わせているドラゴンさんにペコリと一礼してから……


「さよならーーーーー!」


 と叫びつつ急いで洞窟の出口へと向かった。

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