第59話 準備

 翌日。体力が回復した俺達は、次なる目的地へと馬車を走らせる。

 今日向かうのは、大昔に傷ついたドラゴンが羽を休めたと言われているところで、その近辺ではよく強力なモンスターが出現するらしい。危険なところではあるが、モンスターがいる確率も高そうなので行くことに決めたのだ。



 街を出てから三時間後。俺達は目的地に到着した。

 馬車から降りて、周辺を見渡してみる。


「……なんというか……今までのどの場所よりも不気味な感じがしますね。鳥肌が立ってしまいました」

「ですわね……。それに……嫌な予感もしますわ」


 二人が、森から出ているなんとも言えないオーラを感じで怯えてしまう。

 確かに、この森からは踏み入れてはいけないオーラを感じる。普段の俺ならこんなところに足を踏み入れたりしないのだが……


「俺達はドラゴンの捜索という緊急クエストを請け負っている。とんでもないオーラが出ているということは、ドラゴンがいる可能性も高いということだ。まあ、怖がる必要はない。俺が付いているんだ。どしっと構えて周りに注意を払っていたら大丈夫だ」


 S級ランクでもペーペーな俺が言うことに安心感なんてあるのかとも思ったが……シエナとメリッサは不安が消えたようで、明るい顔で『はい!』と言ってきた。


 装備を確認した後、いよいよ探索に出発しようと思ったのだが……

(……あ。あれを忘れていたな……危ない危ない)


 俺はポケットからいつもの異常回復ポーションと少し違うものをシエナに渡す。


「この前はそこまで危険そうじゃなかったから使っていなかったんだが……この森では常にユニークスキルを使って警戒をする必要がありそうだ。というわけで、この異常回復ポーション改を飲んでくれ。こいつは異常を回復する効果が三時間も続くすぐれものでな。値段は高かったが……まあ気にせず飲んでくれ」


 いつもの異常回復ポーションが銀貨一枚、この異常回復ポーション改は金貨五枚もするのだが……効果が凄いし、命には変えられないからな。

 シエナは早速ごくごくと飲み……全てを飲み干す。よし、これで大丈夫だな。

 彼女の準備が整ったところで、俺達は全員同時にユニークスキルを……って危なっ! 


「――ちょっとユニークスキルを使うのを待ってくれ! メリッサ、お前のユニークスキルってなんだ? 聞くのを忘れていたんだが」


 彼女をパーティーに迎え入れて結構な時間が経っていたが、重要なことを聞いていなかったことにいまさら気がついたのだ。昔、一度だけ彼女とクエストを受けたが……あのときは発情させてしまったがために彼女のユニークスキルを見聞きできなかったし……


「そういえば言ってませんでしたわね。わたくしのスキルは『近くにある草木を自分の意のままに操れる』というものですわ! 主な用途としては、動かないはずの木の枝をムチのようにしなやかに動かして、モンスターの足止めとかをしたりする感じですの!」


 メリッサが自分の腕をうねうねとさせてイメージを教えてきてくれた。

 ……これまた凄い……ユニークスキルだな……

 エルフは昔は森に住んでいて、森の守り人の役割をしていたとされる種族だから、そういう超能力みたいなことを出来るのだろう。分からんけど。

 しかし、そんな凄いことが出来るなら……


「ユニークスキルの副作用な何なんだ? 結構凄そうだが……」

「いえ、大したことではありませんわ。一定の確率で自分の思い通りにならない木が出てきて、わたしくの体を拘束してきたり色々ちょっかいをかけてくるとか、そんな感じですし。それに、シエナさんのユニークスキルがあれば副作用を帳消しにできますから問題ないですわ!」


 しれっとシエナのユニークスキルを知っていることを教えてきた。

 ……まあ、二人きりの時にそういう話もしたんだろう。説明が省けてラッキーだな。

 今聞いた限りの話だと、特に使わない理由もないし、彼女にもスキルを使ってもらうことにした。


「分かった。じゃあ、もう一度三人同時でユニークスキルを使うぞ。さん、にい、いち、はい!」


 俺は聴力強化に身体機能強化、視力強化に魔術威力強化を施した。これくらいやっておけば問題ないだろう。頑張ればもう少し強化項目を増やせるが……それをすると体力がものすごい速さで削られていくからな。ドラゴンが出てくるまではここくらいで収めておくのがいいだろう。

 え? 同時にユニークスキルを使う意味があるかって? んなもん無い。気分である。

 シエナとメリッサもしっかりとスキルを発動したらしいので、俺達は気を引き締めてこの不気味な森の中へと入っていった。

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