第53話 ドラゴンの捜索へいざ出発!

 それから四日後。

 俺達は約束通り、緊急クエスト受諾から一週間以内に諸々の準備を整えてドラゴンの捜索へと出発する。

 見送りにはミラさんとソフィアが来てくれて、俺達に激励を送ってくれた。

 まずは無事に帰ってくること、それと出来ればドラゴンに関する情報もゲットできれば万々歳だな。



「……エリック様。先程、とりあえずは適当な山を目指す予定だとおっしゃっていましたが……馬車で山道を登れるのでしょうか?」


 シエナが質問をしてくる。

 俺達は現在、馬車に乗って移動しているのだ。まあ、この馬車はミラさんから貸してもらったものだが。

 シエナの疑問はもっともなものだろう。緩やかで整備された山道なら馬車でも登れるだろうが、おそらくドラゴンがいるところはそんな生易しいところではないはずだ。


「心配するな。確かにこの馬車を引いている二匹の馬の力だけでは厳しいだろうが……俺が魔術でサポートしてやれば問題ない。というわけで、まずは馬車のスピードを上げる。放り出されるかもしれないからちゃんと椅子に座って、馬車に備え付けてあるベルトを体に巻きつけて固定しておくように!」


 シエナとメリッサが俺の指示通りに動いて……しっかりと体を固定する。


「ね、ねえエリック。わたしくしの知っている馬車の最高速度だとここまでしなくてもいいような感じだったのですけれど……」


 メリッサが何をする気だ? と思っているような顔で話しかけてくる。

 俺もしっかりと馬車に体を固定しながら馬の手綱を引き、メリッサに言葉を返す。


「……すぐにここまでする理由が分かるさ。というか、普通の馬車の速度だとドラゴンを見つけるのに時間がかかりすぎるからな」


 彼女は『そ、そうなんですの……』と言ったきり黙りこくる。

 ……いや、そこまで緊張するようなことはしないけどな?


 諸々の準備が終わったので、俺は早速魔術を起動する。


「まずは……《レインフォースメント》!」


 これはあらゆる物を強化する魔術で、今は馬車の車体の強化をした。

 どれくらい強度が増したのか分からんが……まあ、大丈夫だろう。ローラを使っての強化だし。

 ちなみに、キャロラインが魔力消費量が激しくなると言っていたが……対して魔力量は減っていないような気がする。

 そりゃたしかに、いつもよりは激しいが……これなら別に魔術を遠慮なくぶっ放しても大丈夫そうだな。


 ローラの性能も分かったところで、俺は次々と魔術を起動していく。


「強化は終わったから……次は……《シールド》! で、《スピード》! 《スピード》! 《スピード》! 《スピード》!  《スピード》! 《スピード》! 《スピード》! 《スピード》!」


 『シールド』で、馬と馬車の周りに障壁を展開する。この障壁は、進行方向に例えば木があったとしてもなぎ倒すことが出来る。ある程度のモンスターだったら跳ね飛ばせるだろう。それくらい頑丈なものなのだ。

 で、『スピード』で馬車の速度をどんどんと上げていく。


 ちらりと後ろの彼女たちを見ていると……目を見開いて口をワナワナとさせていた。

 ……まだこのスピードだと序の口なんだけどな。


「メリッサは知っているかもしれないが、シエナは知らないだろうからここで一つ教えておこう。魔術は重ねがけが出来る。ヒーラーの魔術も例外はない。重がけをすると倍々で効果が増していくんだ。だから、簡単で威力の低い魔術でも魔力のある限り何度も唱え続けたら……超強力な魔術になる。これは結構使えるから覚えておいてくれ」

「……ひゃ……ひゃい……」


 シエナが馬車の速度にビビりながらもなんとか返事を返してくる。健気で良い子だ。

 俺はニッコリと微笑み


「じゃあ、あと今の三倍くらいのスピードにするから、頑張って耐えくれよ」


 容赦なく魔術の重ねがけをした。



 パカラッ……パカラッ…………ヒヒーン!


 三時間後。

 普通に行くと二日はかかる距離を走破した俺達は、一度馬車から降りて周辺を捜索することにした。

 現在地は、古い文献で『ドラゴンが住んでいたことがある』と書かれていた場所だ。

 周りには木が生い茂っていて、なんとも不気味な森である。

 気を引き締めていると、フラフラとした足取りでシエナとメリッサが俺の元へと集まってきた。


「……おいどうした? 足取りが怪しいし、顔色も悪いじゃないか。体調でも崩したか?」

「……体調を崩したと言うよりかはさっきまでの馬車移動で崩さざるを得なかったと言いますか……というかエリック……あなた……スピードを出しすぎ。あと、運転が荒すぎですわ! 後ろを見てくださいまし! 馬車が通ってきたところの木が全てなぎ倒されて、とんでもないことになってますわよ!」


 彼女に言われたとおり後ろを振り返ってみると……確かに木々が生い茂っている中、俺達が通ってきた道だけは更地になっていた。

 なるほど。とんでもないことになっているな。


「これは不可抗力だ。わざとやったわけではない。最短ルートを通っているとどうしても木とかが邪魔でな。シールドを展開して、それらをなぎ倒しながら進んでいたというわけだ。あと、あのスピードはあれでも抑えたつもりだ。じきに慣れるから安心しろ」

「慣れるって……まあ、そうなのかもしれませんが……。それと、やっていることが野蛮すぎますわ……。意気地なしのどうしようもない男じゃなかったんですの……」


 ……こいつ……言いたい放題言いやがって。


「俺が意気地なしなのは恋愛だけ! 冒険やクエストに関しては思い切りがいいの! ほら、そんなことはいいからさっさと準備を整えて周辺の探索をするぞ」


 急げ急げと言って気持ちを切り替えさせる。

 しかし……木をなぎ倒すのは野蛮なんだろうか……? どうせすぐに生えてきて、一ヶ月位で元通りになるんだがな……

 俺の方は、気持ちを切り替えるのにもう少し時間がかかりそうだった。

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