第51話 俺、メリッサの防具と武器を買います!

 ニーニャのお店でメリッサの服を買った後、俺は次に防具屋へと二人を引き連れて向かう。

 メリッサが嬉しそうな顔をしているのを眺めながら歩いていると……あっという間に目的地に着いた。

 店内に入ると……ちょうどカイルがお店の清掃をしているところだったらしく、彼はほうきを持ちながら俺達を出迎えて来てくれる。


「やあ、エリックさん、シエナさん! それと……」

「……あっ……メリッサです。宜しくおねがいします」

「おお、礼儀正しい子だね。こちらこそ宜しく、メリッサさん」


 爽やかな笑顔でカイルがメリッサに対応する。

 ……イケメンだなぁ……

 そんな感想を抱きながらも早速要件を伝える。


「今日はメリッサの防具を見繕って欲しい。ジョブは魔術師。もちろんこの店で出せる一番いいものを頼む」

「エリックさんは相変わらずだね。了解。ちょっと待っててくれ」


 そう言い残して彼は颯爽と店の奥へと消えていった。

 カイルはニーニャと違って物分りがいいから本当に助かる。

 彼が防具を選び終わるまで、俺はシエナたちと一緒に店内の防具を見て回ることにした。



「エリック様は、装備の更新などはしないのですか?」


 騎士が使うような防具を凄いな……と思いながら見ていると、シエナがそんな事を聞いてきた。

 装備の更新か……


「特にその予定はないな。まあ、更新するとしたら……武器くらいか。今の剣じゃちょっと心もとないというのはあるし」

「そうなのですね……」


 まあ、後は予算的な問題もある。

 いくら俺が金を持っているからといっても、結構目減りしていっているからな。

 俺までシエナ達と同じレベルの装備を買っていたら貯金がいつか底をつく。


 緊急クエストが終わったら、ちょっと高難易度のクエストを受けるかぁ……と思っていると、カイルが『試着室まで来てくれ!』と俺達を呼んできたので、二人を連れて部屋に向かう。


 試着室の中に入ると、シエナのときとは違う防具が並べられていた。


「今回もエリックさんの注文通り、この店で出せる一番良い魔術師専用の防具を選んだよ! 目玉はこの黒いマント! これは着用者の俊敏さと防御力を底上げしてくれる魔術が付与されているものさ! 魔術師は状況によって前衛、後衛を使い分けるからね。俊敏だけ、防御力だけ、というのは少し怖いと思うんだ」


 確かにそのとおりだ。

 後衛として動いている時は、俊敏さでモンスターの攻撃を回避し、前衛の時は防御力を上げてモンスターの攻撃を受け止める。

 カイルが用意してくれた防具は、まさに魔術師の求める防具と言っていいだろう。

 彼は用意した防具の説明を続ける。


「そしてこのトンガリ帽子! これはおしゃれアイテムさ!」


 ……防具じゃないのかよ。


「……それはいらん」

「なんでさ!? メリッサさんに絶対に似合うって! ちょっと被ってみてくれないか?」


 カイルが彼女にトンガリ帽子を手渡し、メリッサが試しにそれを被る。


「……エリックさん、どうだい?」

「なるほど。似合っているじゃないか。よし、購入しよう」


 めちゃくちゃいい感じだった。てか、なんで防具屋に防具とは関係ないやつが置いてあるんだよ。まあいいけどさ。

 カイルが満足そうな顔をしながら他の防具の説明を再開する。


「で、最後に……この靴! これは、メリッサさんが自分で好きに一つ魔術を付与することが出来るものだね。例えば……跳躍力強化の魔術をこの靴に付与してモンスターの攻撃を華麗にかわしたり、攻撃力強化の魔術を付与して、モンスターに蹴りを入れたりと、色々な運用方法が出来る。魔術師にはぴったりの靴だね」


 便利な靴だなぁ……というか、自分で魔術を一つだけとは言え自由に付与できるのは凄いな。

 普通、防具や武器に魔術を付与するとなると、それ専門の職人さんに頼まないとできないことなのに…… 


「それも新技術かなんかで作ったのか?」

「その通り! でも。しっかりと街の有力な魔術師に使ってもらって安全性とかそういうのも確認しているから、安心して使ってくれていいよ」


 カイルは自信満々な顔をする。

 しっかりとしてんなー。



 その後は、メリッサに防具を試着してもらって、違和感がないかどうかを確かめてもらった。

 特に違和感はないという意見を貰ったので、俺はこの防具一式を買うことにする。


「で、今回はいくらになった?」


 俺達は勘定場に行き、カイルにお値段を聞く。


「合計で金貨四百枚だね」


 おぉ……結構安……いや、安くはないか。

 でも、予想よりも大分価格が低かったのはラッキーだな。

 少し安堵しながらカイルに金貨の袋を渡して、お金の精算をする。



「今度とも宜しく〜!」


 店の外で手を振るカイルに『おう』と短く返事をしてから、俺達は次なる目的地へと向かった。



 道中、メリッサが嬉しそうにトンガリ帽子を手で触ったり、全体的なコーディネートに対する感想を求めてきたので恥ずかしさをこらえながら褒めてあげたりしていると……これまたすぐに目的地である武器屋の店の前についてしまった。

 ふぅ……よし! 気合を入れて……いざ突入!

 ガチャリという音とともに店の中へと入ると……店の奥からシュバッとキャロラインが俺達のところへとやってきた。


「らっしゃいませーってエリックの旦那とシエナさん、それと……新しい女!? そんな……私というスンバラシイ女が近くにいるというのに……旦那は浮気者っすか!?」

「……エリック!? この方とはどういう関係ですの!? もしかして……男と女の関係ですの!?」

「ああもう! キャロライン! お前のせいで前回シエナがとんでもない誤解をしたのをもう忘れたのか!? メリッサ、こいつは重いジョークが好きなんだ。真に受けるんじゃない」


 俺とシエナが訂正をすることによってなんとかこの場を収める。

 はぁ……ニーニャといいキャロラインといい……もう少し考えて言葉を発して欲しいところだな。


 皆が落ち着いたところで、キャロラインに要件を伝える。


「今日はメリッサの武器を新調しに来た。ジョブは魔術師。一番いいのを頼む」

「それならいいものがあるっすよ! 付いてきてくださいっす!」


 ほうほう、いいものとな? これは期待できそうだ。


 自信ありげな彼女の後を付いて行くと……このお店の工房へと案内される。


「ほー……初めて入ったが……なんか凄いな……」


 中にはそこかしこに武器の設計図が壁に貼り付けられており、何に使うのか良くわからない道具などが大量に床に散乱していた。

 ……整理整頓をしたほうが良いと思うが……まあ、彼女にとってはこれが一番いいんだろう。


「散らかっているっすけど気にしないでくださいっす! えーっと……あ、あったあった! これっすこれっす! これが、シエナさんが使っているキャロ並に画期的な魔術師専用の武器っす!」


 大量の武器が収納されている箱から、彼女は手袋を二枚取り出して、俺達に見せてきた。

 ……?


「おい、魔術師ってヒーラーと同じく杖を使って魔術を放つものだろ? 手袋って……」


 しかし、キャロラインはふふーん、という顔をしたままだ。

 ……なんかむかつく。

 ジト目で彼女を見ていると……キャロラインがしっかりとした説明をしてきてくれた。


「ウチが開発したこの手袋は、杖の代わりをしてくれるっす! これにより、杖を持たなくても良くなったっすから、戦闘中でも両手を使うことが出来るようになって、戦闘の幅が広がると思うっす!」


 ……杖の代わりをこの何の変哲もない白い手袋が担ってくれるのか……そりゃ凄いな……

 キャロラインの言う通り両手が使えるようになれば、特に前衛として戦っているときであれば、今までにない働きが出来るようになりそうだ。これは戦力的にかなり大きい。

 ちなみに、杖が無くても魔術は起動できるのだが……威力はめちゃくちゃ弱くなる。


「それ以外に特徴はあるのか? 杖無しで魔術を放てるだけでも十分凄いが……」

「残念っすが、それ以外は特にないっす。シエナさんのキャロみたいに、魔力の使用量を半分にしながら威力増大とかしたかったんすが、技術的な問題が出てきてしまって……」


 すみませんっす、とキャロラインが謝ってくる。

 流石の彼女でも難しい問題が出てきたのか。これは仕方ないな。

 というか、さっきも言ったが杖の代わりになるというだけでも凄いからな。

 『それだけでも凄いことじゃないか。というか、変に先走ってすまん』と言って彼女にフォローを入れた後、実際にメリッサに手袋をつけてもらって、感触を確かめてもらうことにする。


「どうだ?」

「……よく分かりませんわ。付け心地は良いのですが……どうやって魔術を放ったら良いんですの?」


 困惑しているメリッサに、キャロラインが説明を加える。


「基本的に杖と同じっす! 目標に対して右手でも左手でもいいっすから手のひらを向けて……詠唱しながら魔力を流し込んだら大丈夫っす! 実際やってみるのが良いっすよね。じゃあトレーニング室に今から向かうっす!」

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