第31話 クエストから帰還して…… その3

 三人で酒を飲みながらワイワイとしていると……家のインターホンが鳴る。

 ……どうやらミラさんが来たようだ。

 俺は二人に『玄関に行ってくる』と言ってダイニングから出る。

 結構時間がかかったらしい。開口一番、労をねぎらって機嫌をとっておこう。


 ガチャリと玄関を開けると……予想通りミラさんが玄関前に立っていた。

 俺は『どうぞどうぞ』と家の中に招き入れて、二人でダイニングに向かう。


「ミラさん、お仕事お疲れ様です!」

「ええ、ありがとう。意外と書類を処理するのに時間がかかって遅くなったわ」


 機嫌を取るように相槌を打ちながらダイニングに入ると……ソフィアとシエナが隣並んでお酒を飲んでいた。

 どうやらソフィアのほうがシエナの隣に移動したらしい。


「あ! ミラさん! お疲れさまです!」

「宣言通りお酒を飲んでいるのね。まあ、別にいいけど。シエナさんもこんばんは」

「こんばんはですね。ウサッギの下処理をしておきましたので、すぐに料理できるかと」

「気が利くじゃない。ありがとう。じゃあ、早速料理するから適当に過ごしていて頂戴」


 そう言って荷物を壁際においた後、ミラさんはキッチンへと向かった。

 彼女もソフィアと同じで何度も俺の家に来てご飯を作っているので、調理器具や調味料の場所もばっちり覚えている。


 俺はソフィアとシエナの対面に座って……酒を胃に流し込む。

 ふぅ……美女二人を酒のつまみに飲めるだなんてまじで最高だわ。


 グビグビと二人を見ながら酒を飲んでいると、ソフィアが俺に話を振ってきた。


「エリックさん。これからのクエストはどうするんですか? シエナさんがいるということで、今まで通りの難易度のものはしばらく受けられないと思うのですが」

「……そうだな。少なくとも向こう一ヶ月位は討伐難易度が『簡単』のクエストを受けて、シエナに経験を積ませようと考えている。ただ、なにか俺に任せたいクエストとかあるんだったら一人で行ってくるが……何かあるか?」


 S級冒険者の俺は、たまにギルドから『緊急クエスト』というものを依頼されることがある。

 普通の冒険者では危険なモンスターが出現したときなどにそのクエストは発生するのだが、年に一度あるかないかくらいの頻度で、ほんとうに極稀に依頼されるものだった。

 ソフィアがそんなことを聞いてきたので、もしやと思って聞いて見たのだが……


「いえ。エリックさんの手間を省くためにこちらで色々と事前に簡単なクエストを見繕うかな、と思いまして。あの掲示板の洗礼をシエナさんに受けてもらうのもいいですが、女性ですし怪我をされたら大変ですから」

「確かに。じゃあ、そうだな……『簡単』から『低難易度』くらいまでのものを頼む」

「承知しました! 明日は厳しいですが、明後日にはリストアップしてお渡ししますね」

「助かる」


 これで、スムーズにシエナと一緒にクエストに行けそうだ。ソフィアの気遣いに感謝だな。


 

 それから三十分後。ルミさんが料理を机に運んできた。

 ウサッギの肉を切って焼いたものからウサッギの肉を煮たもの、ウサッギシチューなどてんこ盛りだった。

 料理を運び終えたルミさんは俺の隣に座って……皆一斉に食べ始める。


『いただきます!』


 俺はまずシチューから頂くことにした。

 スープものを最初に食べる派なのだ。

 大きな鍋に入れられたシチューをお玉でお椀に移して……スプーンですくってからを口の中に入れる。


「アッツ!」


 シチューは俺の想像以上に熱く、とてもじゃないが少し冷まさないと食べられない。

 息をシチューをすくったスプーンに吹きかけて……再度口の中に運ぶ。

 ……うん、ウサッギの肉の出汁がいい感じにシチューの味とマッチしていて、絶妙に美味い!

 味付けもミラさん独自のもので、なんというか優しさが溢れてくるような味だった。馬鹿舌だから表現できないけど、そんな味がするのだ。


「ミラさんの作ったシチュー、美味しいです! いつもいつも肉なしシチューばっかり食べているんですけど、これは格別に美味いですね」

「そう? まあ、私が作ったんだから当たり前よね。もっと褒めてもいいのよ?」


 ミラさんが得意顔で無い胸を張る。

 

ソフィアの方を見ると、彼女はウサッギの肉を切って焼いたものを食べていた。

ステーキとは言わないが、そんな感じの見た目だ。


「いやー、酒と合いますよこれ! もう、止まらないです! ほら、見て下さい! 肉を食べて……んぐんぐんぐ……酒を飲む! 美味すぎです!」


 見てくださいと彼女は言っていたが、俺以外誰一人も見ていなった。

 酒の入ったソフィアには、みんな冷たいな……まあ、シエナはウサッギ肉を煮込んだものをものすごい速さでパクパクと食べていて熱中していたからソフィアの声に気が付かなかったのだろうが……

 あまりにも可愛そうだったので、俺が反応を返す。


「ソフィア、美味しいのは分かるが一升瓶を片手にずっと持っているのは止めようか。あとラッパ飲みも止めような」

「うるさいですよ、エリックさん。というかエリックさんはさっき無理やり私の口の中にある程度長くて大きいものを突っ込んできたじゃないですか!」

「――ちょっとエリック! な、なにを入れたの! ま、まさか……あんたのお、お……おちんちんを入れたんじゃないでしょうね!?」

「あぁーもう! ソフィア! 誤解されるような言い方は止めろ! ミラさんこれは違うんです。ペラペラと変なことをシエナに吹き込んでいたので口を塞ぐために近くにあった一升瓶を突っ込んだだけなんです。ミラさんが想像しているようなことは一切していないので。信じて下さい。シエナ、お前も見ていたよな!? 俺はただ一升瓶を突っ込んでいただけだよな!?」


 隣で顔を真っ赤にしてプルプルと震えているミラさんをなだめながらシエナに助けを求める。

 彼女はモグモグとソフィアと同じものを食べながら……首を縦に振る。

 ……いや、めっちゃ可愛いだけど。ほっぺをリスみたいに膨らませて頬張っている姿。普段はお上品に食べているのに、あまりの美味しさに手が止まらなくなっているような感じで、すっげえかわいい。


「シエナもそう言っていますし、信じて下さい!」

「……そう……ね。ごめんなさい。私が早とちりをしてしまったみたい。エリックがむりやりそんなことはしないものね。あなた、そういう度胸ないもの」


 安心したような顔で謝りながら俺の心をグサグサと刺してくる。

 ……ミラさんといいソフィアといい……度胸無くて悪かったな!

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